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329話 がんばればなんとかなる?

 洞窟は広い。

 全てが村になっているわけじゃなくて、アルサムさんが暮らす場所もある。


 だから、共存してみてはどうか?


 そんな提案をしたところ……


「ふむ、悪くないな」


 自分達で考えておいてなんだけど、意外にも好感触だった。


 人間などと一緒に暮らせるわけがないだろう!

 なんていう反応を予想していたのだけど、そんなことはなくて……

 わりと真面目に、前向きに考えてくれているみたいだ。


「えっと……いいんですか?」

「なにがだ?」

「人間と共存することになるんですけど、問題はないのかなー、って」

「ないぞ?」


 さらりと答えられた。

 そんなアルサムさんに、サナがジト目を向ける。


「今日からこの村の支配者は俺だー! 言うことを聞かないヤツは処分だー! とかいうのは、ダメっすよ?」

「そんなことはしない。共存というからには、対等の関係だろう」

「非常識なことをやらかしてきたヤツに、まともなことを言われたっす……」


 なぜか、サナがものすごいショックを受けていた。


 いや、まあ。

 気持ちはわからないでもないけど、非常識という点では、サナも一緒だからね?

 わりとやらかすことが多いからね?


「でも、住処を奪い返すから共存してもいい、っていう考えに至った簡単な経緯を教えてくれませんか? サナじゃないけど、さすがに、すぐに信じることはできないので」

「なに、簡単な話だ。話を聞く限り、俺にも非があったみたいだからな。ならば無理に意見を押し通すよりは、互いに妥協した方が禍根を残さないだろう。ああ見えて、人間は凶暴だからな。そこらの人間に負けるつもりはないが、たまにとんでもないヤツが現れる。そんな者と敵対するのはごめんだ」


 とんでもないヤツと聞いて、みんなの視線が俺とレティシアに集中した。


 魔王と勇者。

 うん。

 確かにとんでもないかもしれない、と自覚してしまうのだった。


「嘘はついていないみたいね」


 アリスはそう言って、アルサムさんに対する警戒を解いた。

 独特な雰囲気を持ち、どこかサナに似ているアルサムさんに親近感を抱いたのかもしれない。


「じゃあ、アルサムは良いとして、あとはソフラさん達ね」

「納得してくれるでしょうか……?」

「問題ありませんわ」


 クラウディアは、やけに自信たっぷりに言う。


「なにか根拠が?」

「アルサムさんはドラゴンですわ。そんな方が一緒に暮らすとなると、色々と大変なことはありますが、それ以上にメリットがあります」

「メリット? ……あ、そういう」


 クラウディアの言いたいことを理解して、俺はぽんと手の平を打つ。

 ただ、アンジュ達はよくわかっていない様子で、小首を傾げていた。


「アルサムさんは護衛になりますわ」

「護衛ですか? ……あっ」


 アンジュも理解したみたいだ。


 街から離れた村となると危険が多い。

 魔物の被害はもちろん、盗賊に襲われる危険もある。


 でも、ドラゴンが一緒にいるのなら?


 そんな村を襲うバカな盗賊はいない。

 魔物もドラゴンの気配を感じて、近づこうとしないだろう。


 そこにいるだけで村の守り神となってくれる。

 そのことを考えれば、ソフラさん達にとって大きなメリットになるだろう。

 アルサムさんを受け入れてくれる可能性は上がるはず。


「……とはいえ」


 前提として、アルサムさんが危険な存在ではないと理解してもらわないといけない。

 それがなかなか難しい。


 ドラゴン=最強の生物。

 最強=危険。

 っていう認識が簡単に成立するから、普通は警戒する。

 思い切り警戒する。

 それが当たり前のこと。


 その当たり前を回避するにはどうすればいいか?


「悩ましいなあ」

「師匠」


 ふと、サナが険しい顔に。


「どうしたの?」

「なんか、村の方がやばい感じっす」

「え?」

「けっこう離れてるから、自分でもはっきりと聞こえないっすけど……村の方から悲鳴とかが聞こえるっす」

「っ!?」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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