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325話 隠されていた事情

「……ん?」


 先頭で戦うサナが、ふと、怪訝そうな顔になった。

 ドラゴンと苛烈な戦闘を繰り広げながらも、なにかを考える仕草を取る。


「もしかして、お前……?」

「ガァッ!」

「くっ!?」

「サナ、危ない!」


 思考を巡らせているせいで、動きが遅れたのかもしれない。

 サナの動きが鈍くなったところに、ドラゴンの牙が迫る。


 反射的にサナの前に出た。


「シールド!」


 魔法の盾でドラゴンの突撃を止め……られない!?


 魔法の盾? そんなものは関係ない。

 そんな感じでドラゴンはさらに加速して、盾ごと俺を吹き飛ばす。


「師匠!?」

「俺は大丈夫だから……!」


 吹き飛ばされつつ、必死に叫んだ。


 今サナが気にするべきことは、俺じゃなくて目の前のドラゴンだ。

 なにか感じているのかもしれないけど、でも、今は戦闘に集中してほしい。

 でないと足元をすくわれる可能性がある。


「このっ!」


 サナの瞳が怒りに燃えた。


 ああ……

 集中力を乱さない方がいいのに。


「よくも師匠を! 仇をとるっす!」


 うん。

 その言い方だと、俺、死んだみたいだからね?


 他のみんなもいい感じに援護をしてくれているのだけど、一人、サナが突出してしまっている。

 そのせいで連携が乱れてきた。


 賢いドラゴンはそれを見逃さない。

 サナに狙いを定めて、ひたすらに攻撃を繰り返した。


「くっ、この……!」


 サナの体が傷ついていく。

 大きな傷はないものの、それも時間の問題かもしれない。


 ……なんて。


 俺は、サナのことを侮っていた。


「いい加減に……」


 サナが目を逆三角形に吊り上げて、


「するっす!!!」


 右手だけをドラゴン形態に戻して、それで殴りつけた。


 ゴォッ! と風を切る音。

 ゴンッ! と全てを砕く破砕音。


「ギュオオオオオッ!?」


 ドラゴンは悲鳴を響かせつつ、吹き飛ぶ。


 さすがに今の攻撃は予想外だったのだろう。

 まあ、予想していたとしても、あんな必殺技、防ぎようはないと思うけど。


 サナ、いつの間にあんなことができるようになったんだろう?


「師匠、大丈夫っすか!?」

「サナこそ……あーもう、こんなに傷だらけになって。ヒール!」


 サナの怪我を魔法で治療した。


 それから、みんなの無事を確認して……

 吹き飛んだドラゴンのところへ。


「……」


 ドラゴンは生きているが、完全に目を回して気絶しているみたいだ。

 さすがに、あの一撃は堪えたらしい。


「ハル、そんなに近づいて大丈夫?」

「うん。完全に気絶しているみたい」

「このドラゴンが村を襲っていたんですよね?」

「対話をするつもりでしたのに、こうも暴れられたら仕方ないですわね。ひとまず拘束魔法をかけておきましょう。それから、起きた後に話を聞きましょう」

「うん、そうだね」

「ハルさま、協力してもらえますか?」

「もちろん。あ、でも、俺拘束魔法は覚えていないから……」

「それは困りましたわね……」

「教えてくれる? すぐに覚えるから」

「そんな簡単に覚えられるものでは……いえ、ハルさまならありえますね」


 クラウディアがとても微妙な顔をして……

 他のみんなが、うんうんと頷いていた。


 俺、どういう認識?


「バインド!」


 とにかくも魔法を教えてもらい、ドラゴンを拘束。

 そして少ししたところで目が覚めて、対話を試みるのだけど……


「あーっ!!!」


 いざ対話、というところでサナが大きな声をあげた。


「思い出したっす!」

「え? なにを?」

「このドラゴン……ストーカーっす!!!」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 同族対決という「ここでドラゴンに戻らなきゃいつ戻るのか」という状況でありながら 前回はそれが見られないまま終わってしまってモヤモヤしていたので 右手だけとはいえ、今回ようやくサナがドラゴン…
2022/03/16 13:32 退会済み
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