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324話 いきなりの戦闘

「うわっ!?」


 嵐が弱まる範囲に来たところで、いきなりドラゴンと遭遇した。


 偶然じゃないだろう。

 向こうも嵐の結界をなんとか攻略しようと考えていて……

 村人達が油断することに期待して、ここで待ち伏せをしていたのだろう。


「シールド!」


 ドラゴンの突撃を魔法で防いだ。


 ただ、圧がすごく、勢いに負けて吹き飛ばされてしまいそうになる。


「ハル!」

「ハルさん!」


 アリスとアンジュに支えてもらい、なんとか耐える。


「ありがとう、二人共」

「どういたしまして」

「安心するのはまだ早いわ!」


 ドラゴンはすぐに体勢を立て直して、再び突撃の構えを取る。


「待って! 俺達は争いに来たわけじゃないんだ! 話し合いを……」

「グルァッ!!!」

「わわわっ!? し、シールド!!!」


 慌てて魔法を唱えて、第二撃を防いだ。

 アリスとアンジュに支えてもらっているおかげで、今度は吹き飛ばされそうになることはない。


 ないのだけど……


「グウウウウウッ!!!」


 ガンガンガン! と何度も小さな突撃を繰り返してきた。

 まるで闘牛だ。

 俺達以外は目に入らないという感じで、ひたすらに攻撃を続ける。


 ドラゴンは闘争心が高い生き物だけど……

 ただ、意味のない戦闘は好まないはず。

 それなのに、これはいったい……?


「師匠に……」


 ヒュンッ、と小さな影が飛び出した。


「なにしてるっすかーっ!!!」


 サナだ。


 姿が見えなくなるほど高く跳躍。

 その後、くるくると回転しつつ、隕石のごとく落下。


 その勢いを全て叩きつけるような感じで、殴りつけた。


「ギャウッ!?」


 たまらずにドラゴンは悲鳴を上げて後ずさる。


 そんなドラゴンを睨みつけて、サナは鋭く叫ぶ。


「お前、どこのどいつっすか!? こんな勝手をして、ドラゴンとしての誇りがないっすか!?」


 サナも、最初は好き勝手していたような気がするんだけど……

 うん。

 その点についてはなにも言わないことにした。


「ちょっと話を聞かせるっす。なんでこんなことをしているのか、詳細を……」

「ガァッ!」

「ちょ!?」


 サナの言葉を無視して、ドラゴンは口を大きく開いて、ブレスを放つ。


 言葉が通じていない?

 いや。

 それよりは、怒りのあまりサナを無視しているように見えた。


「エレメンタルシールド!」

「風断っ!」


 クラウディアが魔法の盾を展開した。

 それで防ぎきれないものは、シルファの拳圧で吹き飛ばす。


「まったく、面倒ね……サザンクロスッ!」


 ブレスを防いだことで生まれた隙に、レティシアが突撃する。


 細身の剣を前に突き出すようにして構えて……

 そして、目にも留まらぬ五連撃。


 強靭なドラゴンの鱗を突破して、ダメージを与える。

 さすが剣の勇者。

 性格はともかく、攻撃力は抜群だ。


「ハル……あんた、失礼なこと考えなかった?」

「と、とんでもない」


 幼馴染の勘なのか、レティシアはとても鋭い。


「あーもうっ、話を聞くっす!」

「ガアアアアアッ!!!」


 サナがさらに前へ出て、ドラゴンと殴り合いを繰り広げた。

 その際、何度も言葉を投げかけるものの、ドラゴンは聞く耳を持たない。


 攻撃、攻撃、攻撃。

 ひたすらに攻撃。

 止まることはない。

 格上で、同族のサナに対しても、迷うことなく攻撃を繰り返している。


 それを見て違和感を覚えた。

 あのドラゴン、なにか事情があるのだろうか……?

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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