323話 同族
「そんな事情だから、ドラゴンは同族意識がすごく強いっす。一人ぼっちだからこそ、仲間には優しくしようと……そんな感じっす」
なるほど。
だからこそ、悪さをしていたとしても、ドラゴンの討伐には反対なのか。
うん。
サナの考えていることがよくわかった。
彼女の意見を聞かず、強引に討伐を行わなくてよかったと思う。
そんなことをしていたら、サナの信頼を失っていただろう。
表面上は笑い、一緒にいてくれるかもしれないけど……
でも、心からの笑顔はもう見せてくれなかったと思う。
「そういうことなら、対話を試みようか」
「え?」
「通訳はサナにお願いしたいんだけど……あ、大丈夫か。ドラゴンは俺達人間よりも遥かに賢いから、言葉は通じるか」
「対話はいいけど、準備もしっかりしないとダメよ? この嵐の中を突き進むんだもの」
「いきなり襲いかかってくるかもしれませんわ。それに耐えるため、防御をしっかりと構築した方がいいと思いますの」
「それなら任せてください。私、聖女見習いなので、そういうのは得意です」
「では、嵐の対策は私が」
「シルファもがんばるよ」
ツーカーの関係というか……
みんな、生き生きとした様子で話し合う。
サナが反対していた理由を知り、理解して、納得したのだろう。
その上で、彼女の望む通りにしてあげたい。
そう思い、行動することを選択したのだ。
「みんな、どうして……」
「当たり前でしょ」
アリスが優しい顔をして、サナの頭をぽんぽんと撫でた。
「あたし達は仲間なんだから」
「っ……!!!」
サナは、ぐぐっと唇を横に結んで、
「ぶぇえええええんっ!!!」
泣きながらアリスに抱きついた。
「すごい、すごい感謝っす! うううっ、こんな風にしてもらえるなんて、ホント、自分は幸せ者っす! うえええええっ!!!」
「あー、もう。そんなに泣かないの。ほら、泣き止んで……って、鼻水が!?」
「びえええええ!」
「もう……」
アリスは苦笑しつつ、サナの頭をよしよしする。
そんな微笑ましい光景に、自然と俺達も笑顔になる。
……ただ一人、レティシアはつまらなそうな顔をしていた。
「レティシアは、なにか言いたいこととか?」
「……別に」
「うそ」
「なんで断言するのよ?」
「俺はレティシアの幼馴染だからね。だから、なんとなくわかるんだ」
「ふんっ、生意気になって」
レティシアは一人、ぽつんと離れたところにいる。
いつでも、どこでも。
みんなの輪から意図的に外れているように見えた。
見張らないといけない、というのもあるんだけど……
でも、それだけじゃなくて、レティシアにはみんなと一緒にいてほしい。
仲良くしてほしい。
そうすることで、少しでも昔の彼女に戻るような気がした。
「なによ?」
「レティシアも協力してくれる?」
「協力せざるをえないでしょ、ハルの魔法で縛られているんだから」
「うん、そうだね。でも……」
いつか、元の関係に戻れるように。
そう、心の中で付け足しておいた。
――――――――――
馬にがんばってもらい、馬車で洞窟の中へ移動した。
ほどなくして村に辿り着いて、馬を休ませることができた。
ここなら雨風にさらされることはないから、ゆっくり休んでほしい。
その後、ソフラさんに軽く挨拶をして……
他の村人達にも挨拶をして……
ドラゴンがいるという、洞窟の奥へ向かう。
この洞窟を抜けると、草原に繋がっているらしい。
そこをさらに超えたところに、ドラゴンが住む山があるとか。
ドラゴンはいつも山からやってきて、洞窟の中に住むソフラさん達を襲おうとしていた。
今は嵐の結界で守られているものの、それもいつまで続くか。
仮にドラゴンが手出しできなくても、嵐があるため、外との行き来が非常に困難だ。
物資や食料の調達が難しく、どちらにしろ厳しい生活を強いられてしまう。
なるべく早く解決しないと。
そう意気込み、草原に出るのだけど……
「グルァアアアアアッ!!!」
いきなりドラゴンと遭遇した。




