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321話 サナの反抗期

 しばらく待ったところでソフラさんが戻ってきて、ドラゴンの対処を俺達に任せたいと伝えてくれた。

 うまい具合に村人達を説得できたのだろう。


 できるなら、他の村人に挨拶や説明をしたいのだけど……

 ソフラさんが例外なだけで、ここは排他的な村らしい。


 やるなら好きにすればいい。

 ただし、協力はしないし、巻き込まないでほしい……とのこと。


 その反応は寂しく思うものの、自己満足でやるようなものだ。

 感謝はされなくても別にいい。


 というわけで、一度みんなのところへ戻り、村と結界。

 そして、ドラゴンについて説明をした。


「……なるほど、そのようなことがありましたのね」


 待機組は、それぞれ納得顔を見せていた。

 突然の嵐をやはり不審に思っていたのだろう。

 人為的に引き起こされたものだとしたら、納得だ。


「それで、こらからのことなんだけど……」

「ハルさんは、そのドラゴンを退治するんですね?」

「ドラゴンが相手になると、厳しい戦いになりそうですね。私にできることは、なんでも申し付けください」

「シルファは囮をした方がいいかな?」

「え? いや……みんな?」


 ドラゴンを倒そうと思っている。

 そのことを話していないのに、みんなはもうやる気たっぷりだ。


 ……好戦的?


「ハル、失礼なことを考えている?」

「えっ。い、いや……ごめん、シルファ」

「正解だった」


 シルファはどことなく得意そうだ。


「ハルさまの考えることなんて、とても簡単ですわ」


 クラウディアも得意そうに言う。


「困っている人がいる。自分ならなんとかできるかもしれない。なら、なんとかしてみたい……そう思われたのでしょう?」

「な、なんで……?」

「心を覗かれた、みたいな顔をしないでくださいませ。わたくしにそのような能力はありませんわ」

「失礼ながら、ハルさまの考えはわかりやすいので」

「えっと……で、でも、そこがハルさんの魅力だと思います!」


 アンジュはフォローしてくれている、のかな?

 微妙にトドメを刺しているような気がするけど……


「でも、いいの?」


 相手はドラゴンだ。


 このメンバーなら、負ける気はしないけど……

 でも、戦うとなるとかなりの苦戦を強いられるだろう。


 それなのに、縁のない村人のために戦うなんて……


「ハルさん」


 アンジュがにっこりと笑う。


「私達は反対なんてしませんよ。ハルさんがしたいことを手伝いたいというか……いえ、それだけじゃないですね。その気持ちは、私達も同じですから」

「……アンジュ……」

「だから、その……がんばります!」


 ぎゅっと拳を握り、やる気をアピールするアンジュ。

 そんな姿を見せられたら、俺の言葉は一つしかない。


「うん、頼りにしているよ」

「はい!」


 これなら、きっとなんとかなる。

 ドラゴンだろうが悪魔だろうが、絶対に勝てる。


 ……悪魔はちょっと言いすぎたかもしれない。


「……」

「サナ?」


 ふと、アリスがサナの方を見た。


 そういえば、ずっとサナが黙っているけど……

 こういう時は、真っ先になにかしゃべりそうなものだけど。


「サナ、どうしたの?」

「……」

「拾い食いでもしたの? ダメよ、落ちているものに三秒ルールなんてないんだから」

「違うっすよ! っていうか、アリスは自分のことをどんな目で見ているっすか!?」

「食い意地の張ったドラゴン?」

「容赦のない感想!?」


 サナはショックを受けた様子だった。


 でも……うん。

 そう思われても仕方のない行動を普段からとっているから、擁護することができない。


 ごめん、サナ。


「それで、どうしたの? なにか言いたそうな顔をしているけど」

「……」

「なにか考えていることがあるのなら、ちゃんと言ってみて。言葉にしてくれないとわからないことが多いんだから」

「なら……」


 サナは、ややためらいがちに口を開く。


「自分は……反対っす」

「え?」

「ドラゴンの討伐は反対っす」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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