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307話 二度目の決闘・その7

「ぐっ!!!」


 体の奥底から熱い『ナニカ』がこみ上げてきた。

 主導権を引き渡すことを拒んだことで、俺の中にいる『ナニカ』が怒っているみたいだ。


 でも、怒らせておけばいい。

 俺は俺。

 好きになんてさせてやらない。

 逆に利用してやる。


「おとなしく……しろっ!!!」


 自分自身に魔力を叩きつけるような感じ。

 そうやって、『ナニカ』をおとなしくさせた。


(……好きにしろ)


 声が消えていく。

 同時に体の自由が戻る。


 解毒してくれたのだろうか?

 意外と良い存在なのかもしれない。


「よし!」


 なにはともあれ、これで問題ない。

 結果的に、『ナニカ』の力を借りたことになるけど……

 体を明け渡したりしていないから、問題なし。


「シルファ、下がっていて。まだダメージが残っているよね」

「え? でも、ハルは……」

「俺なら大丈夫。なんかこう……動けるようになった」

「……まあ、ハルならアリかな」


 なんか、微妙に呆れられているような気がした。


「ねえ、どういうこと? 毒を使えば、最低、半日は動けないって話だったわよね? それなのに、どうしてハルは動けているのかしら?」

「そ、それは……いや、そんなことは……」


 レティシアに睨みつけられて、男はタジタジになっていた。


 二人の様子を見ていると、それが演技でないことがわかる。

 つまり、さきほどの不意打ちと毒が切り札。

 これ以上の隠し玉はない……そう判断しても大丈夫だろう。


 セット、エクスプロージョン。

 コンバート。


 再び魔法を充填。

 そして、拳を構える。


「今度こそ、終わらせるよ」

「くっ、ハルのくせに……!」

「いくよ!」


 リングを蹴り、加速。


 まずは男の懐に潜り込み、そのままの勢いで体当たり。

 短い悲鳴をあげて、男はリングアウト。


 手応えは十分。

 気絶、もしくは動けない程度のダメージを与えたと確信する。


 男はもう罠を用意していないと思うけど……

 でも、念の為、先に排除させてもらった。

 これでレティシア一人だ。


「調子に乗らないで!」


 苛立たしそうにしつつ、レティシアが拳を叩きつけてきた。

 でも……遅い!


 彼女の攻撃を避けると同時に、カウンターを叩き込む。


「うぁ!?」


 くるっと独楽のように回転して、回し蹴りをレティシアの脇腹にぶつけた。

 吹き飛ばされて、リングの上を転がる。


 しかし、レティシアもなかなかやる。


 これで終わりということはなくて、リングをひっかくようにして転がる体を強引に止めた。

 いくつか爪が剥がれ、血が流れる。

 骨も数本折れたらしく、顔をしかめている。


 血と埃にまみれ、とても痛々しい姿だ。

 見ていられない。


 でも、彼女は諦めない。


「ハルのくせに生意気なのよっ! 私が勝つべきなんだから! 私が……私が私が私がぁっ!!!!!」


 獣のような叫びと同時に、黒いモヤが湧き出した。

 レティシアを中心にゆらゆらと揺れる。


 あれが彼女の中にある悪魔の魂だろう。


 どうにかして、それを取り除きたい。

 でも、その方法は今はわからない。

 できることといえば、俺が彼女よりも上位の存在になり、行動を縛ることだけ。


「だから今は……」


 思い切りリングを蹴り……

 ありったけの力を右手に乗せて……

 限界を超えた速度で駆けて……


「今は眠れっ!!!」


 全力の一撃を叩き込む。


 俺の拳は……彼女に届いた。

 ありったけの力を込めた一撃は、レティシアの腹部を叩く。


 魔人の結界?

 そんなものは無意味だ。

 全力の一撃を止めることなんてできない。


「……ハ……ルぅ……」


 すがるような感じで、レティシアはこちらに手を伸ばして……

 しかし、その手が届くことはなく、倒れ、気絶した。


「勝者、ハル・トレイター、シルファ・クロウブラスト!!!!!」


 審判の声が高らかに響いて……

 長い長い戦いがようやく終わりを告げた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] これであのヤンデレ娘との因縁にも結局が着けば良いんだが(ʘᗩʘ’) 後回しにされる度に悪化してるし(◡ ω ◡)
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