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293話 二日目、最終戦その5

年末年始の更新についてのお知らせ:詳細は活動報告にて

 信念がある?

 大義がある?

 積み上げてきたものがある?


 確かに、それらは大事だ。

 大事だけど……

 でも、それ以上に必要なことがあるはずだ。


 なにもかも一人で解決しようとしないこと。


 どれほどの力を持っていても。

 とても強靭な心を持っていたとしても。

 一人でできることなんて、たかがしれている。


 個人で物事を達成しようとしても、大体は失敗する。

 普通、誰かの協力を得るものなのだから。


 失敗しなかったとしても、すごく時間がかかるか……

 あるいは、最初に思い描いた理想とは程遠い結末に着地してしまう。


 なぜ、そう言い切れるのか?

 俺も彼女も失敗したからだ。


 レティシアと一緒にいた時……

 俺は、彼女の様子がおかしいことを誰にも相談することなく、一人で抱え込んでいた。

 勇者になったことで増長して、性格が変わってしまったのだろうと、そう決めつけて……

 仲間に相談しても、聞いてくれないだろうと決めつけて……


 結果、ずっと虐げられることになった。


 もしも誰かに相談していたら?

 あるいは、今と違う結果になっていたかもしれない。


 レティシアも失敗した。

 悪魔のこと、魔王のこと。

 どうして俺に相談してくれなかったのか?

 仲間に相談しなかったのか?


 一人で抱え込んだせいで、魔人になってしまうという状態に。


「一人でできることなんて……たかがしれているんだ!」

「ぐっ!?」


 連続でホランを殴りつけていく。

 彼は必死で防御をしようとするが、その防御を撃ち抜いてやる。


「なんで、誰かを頼ろうとしないんだ! 相談をしないんだ! それくらい、簡単にできることだろう!!!」

「これは、私の使命だ……! 誰かを巻き込むなんて……」

「そうやって抱え込んでいるから、視野が狭くなって、やれることが限られてくるんだよ!」


 ホランを見ていると、昔の自分を見ているような気分になる。

 かつてのレティシアを見ているような気分になる。


 彼の信念とか思想とか、そういうのはどうでもよくなってきた。


 ただ単に、間違ったことをしようとしているホランを放置することはできない。

 一人でなんでもかんでも抱え込もうとするホランを見過ごせない。


 だから……強引にでも止めてみせる!


「おおおおおっ!!!」


 前へ。

 前へ。

 前へ。


 拳を連打して、強引に押し込んでいく。

 今までと違い、防御を無視した捨て身の攻撃だ。


 カウンターが直撃したら、けっこう危ないのだけど……

 ただ、ホランはこちらの勢いに飲まれている様子で、防御に手一杯だった。


「これだけの力を持っているのに、どうして君は……!?」

「俺は、一人じゃない!!!」

「っ!?」

「みんながいるから、だから、あんたみたいにバカなことはしないんだ!」


 あえて、バカなことと断言してやる。


 だって、そうだろう?

 街を守るというホランの志はとても素晴らしいものだと思うが、だからといって、なにをしてもいいというわけじゃない。

 そのために悪魔の力を利用するなんて、正気の沙汰じゃない。


 俺は、まだまだものを知らない。

 世界のことを知らない。


 だけど、これだけは断言できる。


「あんたがやろうとしていることは……」


 拳を握りしめて、


「間違っている!!!」


 思い切りホランを殴りつけた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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