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292話 二日目、最終戦その4

年末年始の更新についてのお知らせ:詳細は活動報告にて

 再びの突撃。

 フェイントを織り交ぜることで、わりと簡単に接近することができた。


 ホランは魔人になったばかりで、戦い慣れていないのだろう。

 普通なら、こうも簡単に懐に潜り込ませない。


 悪魔の力を手に入れたけど、完全にコントロールしたわけじゃない。

 それなら、いくらでも付け入る隙がある。


「このっ!」

「ええい、ちょこまかと!」


 俺を迎え撃とうと、ホランは拳を繰り出してきた。

 それなりに速く、それなりに鋭い。

 ただ、それなり、で終わってしまうくらいのものだ。


 一度、アレクと戦っていることが幸いした。

 彼と比べれば、ホランの戦闘技術は赤子のようなものだ。


「調子に乗らないでもらおうか!」

「くぅ」


 全てを避けるというのはさすがに難しく、ホランの拳が俺を捉える。


 咄嗟に両手を交差させて盾として、顔への直撃は防いだ。

 ただ、衝撃が骨まで伝わり、ビリビリと痺れる。


 さすがというべきか。

 結界だけじゃなくて、その力も厄介だ。


 これ以上、もらうわけにはいかない。

 数で押し切る!


「ぐっ……!? この力は……」


 ここしばらく、リキシルにたっぷりとしごかれた。

 おかげで、シルファほどではないものの、それなりに戦闘技術は向上した。


 付け焼き刃のホランに負けるほど、彼女の稽古は甘くない。


 突撃。

 突撃。

 突撃。


 ホランの反撃を許さず、ひたすらに拳を叩き込んでいく。


 思っていた通り。

 わりとデタラメな攻撃なのだけど、ちょくちょくヒットを稼ぐことができる。


 魔人になったことで、ホランは慢心してしまったのだろう。

 絶対無敵の結界があるからと、防御を学ぶことはなかっただろう。


 その結果がコレだ。

 俺の攻撃を受けて、うまく避けることもカウンターに繋げることもできず、ひたすら貝のように耐えるだけだ。


 そうやって耐えていても、ホランに勝機はない。

 ほどよく強化されたおかげで、俺の攻撃のいくらかはホランに届いていた。


 強固な盾となる結界も、防御力以上の火力を叩き込めば突破できる。


「君のその力は、いったい……!?」

「さて、なんだろうね」

「くっ、このようなところで!」


 まだ決定打を与えたわけじゃない。

 ただ、いくらかの攻撃は結界を撃ち貫いて、ホランに届いている。


 それが焦りを誘ったのだろう。

 ホランは防御を捨てて、攻撃に専念した。

 黒いモヤを拳にまとい、それで殴りかかってくる。


 ゴォッ!


 しっかりと距離をとって回避したはずなのに、衝撃波を感じて、ビリビリと肌が震えた。

 とんでもない力だ。

 直撃したら、即座にアウト。

 かするだけでも大ダメージをもらってしまうだろう。


 なりたてとはいえ、魔人の脅威は健在だ。


「そう、これだ。この力があれば、私は……!」

「自分の夢が叶えられる、と?」

「そうだ! 何者にも侵されることなく、自治を保ち、街を発展させていくことができる! これは、私にしかできないことだ」

「そういうの、思い上がりっていうんだよ!」


 さらに懐に潜り込む。


 必然的に、ホランの攻撃が直撃する確率が上がるのだけど……

 でも、リスクなしに勝てる相手じゃない。

 賭けをするような勢いで、思い切りよく戦うのが善だ。


「思い上がりなどではない! 確かな事実だ」

「どんな根拠があって!」

「ずっとこの街を見てきた! 祖父の代から、ずっとずっと……! それだけの時間をかけて、いくつもの世代を重ねて……だから、この街について一番くわしいのは私だ! 全てを理解しているのは私だ!」

「そういうのは……」


 ぐぐっと右手に力を入れて、


「思い上がり、っていうんだよ!」

「がっ!?」


 思い切りホランを殴りつけた。

 結界を突破するのに大半の力を使ったため、決定打にはなっていない。


 ただ、絶対無敵の結界が突破された衝撃は大きい。

 ホランはあからさまに動揺した顔で、目を大きくする。


「積み上げてきた想いを、思い上がりと笑うか!?」

「笑ってなんかいないよ! ただ……」


 今度は左手に力を込めて、


「一人で抱え込んで、なんでも一人で解決しようとして……それでできることなんて大したことはないんだ!」


 もう一度、ホランを殴りつけた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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