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290話 二日目、最終戦その2

「さて、雑談はここまでにしてもらうぞ」


 待ちきれないという様子で、アレクが前に出た。

 拳を構えて、そして、同時にニヤリと笑う。


 子供のようにわくわくとした笑顔だ。

 これからの戦いを思い、心弾ませているのだろう。

 やっぱり、とんでもない戦闘狂だ。


「シルファ、ちょっと大変かもしれないんだけど、アレクを任せてもいいかな?」

「いいけど、ハルの方が大変じゃないかな?」


 さすがというか、シルファはホランの危険性を見抜いていた。


 自ら武術大会に出場するということは、それなりの自信があるということ。

 そしてなによりも、アレクがパートナーとして認めている。

 チームのリーダーとして認めている。


 試合という枠内の話かもしれないが……

 たぶん、アレクよりも強いのだろう。


「大丈夫、なんとかしてみせるから」

「おっけー。なら、シルファがアレクを担当するね」

「うん、ありがとう」


 簡単な作戦会議、終了。

 審判は律儀に待ってくれていた。


 そして……


「武術大会二日目、最終戦……はじめ!」


 審判の合図と共に、シルファとアレクがほぼ同時に前に出た。


 二人共、速い。

 風のような速度で、目で追いかけるのが精一杯だ。


 ガッ!!!


 シルファとアレクの拳が真正面から激突した。

 鈍い音が響く。


 そんなことをすれば、普通、骨が砕けてしまうのだけど……

 二人の骨はどういう構造になっているのか、砕ける様子はなく、そのまま拳撃や蹴撃の応酬を始めた。


 一撃一撃が速く、そして重い。

 見ているだけだけど、そのことがよくわかるほどの圧が放たれていた。


「……すごい」


 思わず、そうつぶやいてしまう。


 シルファは体術のエキスパートで、レベルに換算したら、俺と同じくらいだと思う。

 それなのに、アレクは一歩も負けていない。


 いや。

 むしろ、シルファを若干ではあるが上回っていた。

 まだ本気を出してなさそうなのだけど、シルファよりも攻撃が速い。


 本気を出していないのはシルファも同じだろうけど……

 これは、なかなか厳しい戦いになるかもしれない。


 できるなら援護に回りたいのだけど……


「やはり、君が立ちはだかるか」


 俺は俺で、ホランをなんとかしないといけない。


「こい」

「言われなくても!」


 ここまで、ホランはアレクだけに戦いを任せてきた。

 そのため実力は未知数。


 こういう時は、尻込みしていては意味がない。

 時に思い切りよく、突撃するしかない。


「……セット、ファイア。コンバート」


 初級火魔法を取り込み、それを力に変換した。

 武術大会は魔法禁止なので、反則に近いグレーの技だ。


 でも、勝つためには手段は選ばない。


「まずは、先制する!」


 体内を魔力が駆け巡り、熱い熱い力を与えてくれる。

 地面を蹴ると、体が砲弾のように勢いよく射出された。


 速い。

 軽い。


 その勢いを乗せて拳を繰り出すのだけど……


「ふむ、意外とやるな」

「なっ」


 ホランはその場から動くことなく、片手で俺の拳を受け止めてみせた。

 余裕の表情を浮かべている。


 得体の知れない恐怖を感じて、慌てて後ろに跳んだ。


 追撃は……ない。

 ホランは一歩も動くことなく、表情を変えることもない。


「すさまじい一撃だな。そちらのお嬢さんもアレクと対等に渡り合っているし……惜しいな。なにをしてでも、味方に取り込んでおくべきだった」

「あなたは……」

「なにかな?」


 とある仮説が思い浮かぶ。


 根拠はない。

 ただ、今、拳を交わした時……

 一瞬ではあるが、覚えのある気配がした。


 それが正しいとするならば、ホランは……


「ふっ」


 それを確かめるために、もう一度、突撃した。

 リキシルに学んだ通り、軽いフェイントを織り交ぜつつ、攻撃の軌道を悟られないようにする。


 うまくいったのか。

 はたまた、見逃してもらえたのか。

 どちらにしても、ホランの懐に潜り込むことに成功した。


 そして、現段階の全力の一撃を放つ。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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