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287話 激闘の二日目

 余談だけど……


 後日、エリンとリキシルに頼んで、アランとケイトの調査をしてもらった。

 すると、子供がいるという話は本当だった。


 ただし、家庭環境は劣悪の一言に尽きる。

 ネグレクトに近い状態で、十歳なのに読み書きもできなくて……

 体重は、標準の半分しかなかったという。


 その子はすぐに保護された。

 一時は命の危険があったものの、無事に危機を乗り越えて、回復に向かっている。


 一方のアランとケイトは、育児放棄で逮捕。

 調べてみると、余罪が他にもあって……

 強制労働の刑が確定。


 死罪にはならなかったものの、生きているだけという状態。

 今後、まともに日の光を浴びることはできないだろう。


 やっぱり、悪いことをしたらいけないし、やらかしたらそのツケはいつか回ってくるものだね。

 そんな世の中の真理を知ったような気がした。




――――――――――




 話は戻り、武術大会へ。


 本戦に出場しても、俺とシルファは快進撃を続けることができた。


 アランとケイトをほどよく撃破できたのがよかったのか……

 流れに乗ることができて、全勝無敗。


 敗者復活戦に賭ける、ということもなくて……

 次の戦いに勝利すれば、ベスト8というところまで来ることができた。


 それはうれしいのだけど……


「まさか、二日目でホランとアレクと当たるなんて……」


 彼らと当たるなら三日目。

 あるいは、決勝戦だと思っていた。

 そんな緊張感を持って挑んでいたのだけど……


 トーナメント表をよくよく見てみたら、ホランとアレクとは同じブロックにいた。


 うん。

 三日前に激突して当然の流れだ。

 というか、なんでこんな大事なことを見落としていたんだか……自分に呆れる。


「よしよし」

「シルファ、なんで俺の頭を撫でているの?」

「ハルが落ち込んでいるっぽいから?」

「……ありがとう」


 とても良い子だ。

 あの戦闘狂の師事を受けていたとは思えない。


「ハル、これがアレクのデータよ」


 場所は控え室。

 今日一番の戦いを控えているということで、みんなの入室も許可されていた。


 そして、アリスがアレクの戦闘データをまとめてくれていた。

 資料に目を通す。


「一度、やったことがあるけど……うん。やっぱり、シルファと同じバリバリの近接戦タイプか。しかも、武器は己の拳」


 拳の勇者と言われているだけのことはある。

 その拳一つで、己の欲しいものを掴み取ってきたのだろう。


「ホランのデータはないの?」

「ごめんなさい……調べてみたんだけど、あいつ、どうにもこうにも掴みどころがないっていうか、情報がさっぱりなのよね」

「私達、観客席でハルさんの応援をしつつ、ホランさんの戦い方などを研究しようと思っていたのですが……」

「ダメですわ。あの御仁、よほど用心深いのか、はたまた戦う力はないのか、カカシ同然でしたわ。戦闘はアレクに任せて、自分は高みの見物をしていましたの」

「ふむ」


 クラウディアが可能性にあげていたけど、ホランに戦闘力がまるでないとしたら、うれしいことになる。

 敵はアレク一人。

 こちらが圧倒的に有利だ。


 ただ……


「クラウディアさま。恐れながら具申いたしますと、ホランに戦う力がないというのは、まずありえないことかと。あのような方は、切り札を最後まで隠し持っておくタイプでしょう」


 ナインの言う通りだ。

 かなりの強敵……

 場合によっては、アレク以上の力を持つと考えた方がいい。


「エリンは何か知らない?」

「あー……参考になるかわからねえが、俺、何度かホランの財布を狙ったことがあるんだよ」

「エリン、キミっていう子は……」

「う、うるせえな! リキシルにこっぴどく叱られたから、今はやってねえよ」

「そう言う割りに、ハルの財布は狙ったわね?」

「うぐっ」


 しまった、という顔になるエリン。

 リキシルが元気になったら、また叱ってもらう必要があるかな?


「それで、どうなったの?」

「失敗したよ。俺の腕が悪いとか、そういう問題じゃなくて……やろうと思ったら先に牽制されたっていうか、俺のスリの腕がことごとく通用しなかったんだ」

「なるほど……なるほど?」


 ここを褒めるのはどうかと思うんだけど……

 エリンのスリの腕はかなりのものだ。

 本人の身体能力が高く、なおかつ技術もある。


 そのため、武術を嗜んでいる人からも盗むことができるだろう。

 好条件なら、アレクからも盗めるかもしれない。


 そんなエリンが手も足も出なかったという話は気になる。


「実力で叩き伏せられたわけじゃなくて、先に牽制された……か」

「俺の感想だから、あまりアテにすんなよ」

「了解」

「あっさり納得されると、それはそれでムカつくな」


 どうしろと?


 ただ……

 エリンの話を聞いて、なにか閃きそうになった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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