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275話 トラブルは続く

 悔しいけれど、アレクやホランが犯人という証拠がないのは事実だ。


 強引にいくことは可能だけど……

 でも、領主を決める戦いが近づいている今、そんなことをしたらリキシルに迷惑をかけてしまう。


 なので、一度持ち帰り、相談することにした。

 それで、今後の対応を決めよう。


 そう思っていたのだけど……

 新しい問題が発生した。


「リキシルが倒れた!?」


 屋敷に戻ると、アレクが襲撃してきた時と同じくらい慌ただしくて……

 話を聞いてみると、リキシルが倒れたとのことだった。


 急いで彼女の部屋に駆けつけると、アンジュとナインが迎えてくれる。


「ハルさん! よかった、戻ってきてくれて……」

「リキシルの容態は!?」

「それが……」


 アンジュが微妙な顔をして、ベッドで寝ているリキシルを見る。


「……あたしは平気さ」


 起きていたらしく、リキシルは起き上がろうとするが……


「ダメです! まだ寝ていてくださいっ」

「いや、でもな」

「ダ・メ・で・す」

「むう」


 子供を相手にしているような感じで、アンジュが強く叱る。

 リキシルは眉をへの字にしつつも、素直に横になった。


 アンジュが強い。

 聖女候補という立場だから、病人が無茶しようとしたら放っておけないのだろう。


「ナイン、なにが起こったのか教えてくれる?」

「はい」


 ナインの説明によると……


 俺とシルファが屋敷を出た後、ほどなくしてリキシルが倒れたらしい。

 かかりつけの医師の診断の結果、極度の過労が原因。


 ただ、アンジュが治療してくれたこともあり、大きな問題に発展することはない。

 ゆっくりと静養すれば、問題なく治るだろう……と。


「そっか、よかった……」

「よくねえよ」


 リキシルは拗ねた子供のように唇を尖らせる。


「今は寝てる場合じゃねえのに……くそっ」

「気持ちはわからないでもないけど、おとなしくしないと。無理をして悪化したら大変だよ」

「そうです、ハルさんの言う通りです。ただの過労と認識しているみたいですが、過労で亡くなってしまうこともあるんですよ? 甘く見てはいけません」

「でもよ……」

「でももなにもありません!」

「むう」


 アンジュにピシャリと言われてしまい、リキシルは反論の言葉を失ってしまう。


 こういう時のアンジュは強い。

 そして怖い。


 以前、サナが風邪を引いたことがあるんだけど……

 わがままを言うサナを無理矢理寝かしつけていた。

 そして、こっそりベッドを抜け出そうものなら、強烈な説教をしていた。


 誰かを助け、力になることが使命。

 そう考えているであろうアンジュにとって、病人が無茶をすることは許せないことなのだろう。


「だけど、ハルの稽古もあるし……」

「俺はいいよ。大体の感覚は掴めたから、あとは一人でもなんとかなると思う」

「まあ……それは確かに」


 何度も何度も稽古を繰り返して……

 結界について、それなりの手応えを得ていた。


 まだ成功はしていないのだけど、それも時間の問題だと思っている。

 師匠が良いと覚えも早い。


「ただ、もうすぐ武術大会なんだ。シルファとの連携訓練もやらないといけねえし、寝てられねえよ」

「それは……」


 武術大会は、おおよそ二週間後。

 長いようで短い。


「アンジュ、リキシルはどれくらい静養しないとダメなの?」

「お医者さまもおっしゃっていましたが、かなりの疲労が溜まっています。そんな時に今回の騒動……見た目以上にダメージは深いはずです。十日はゆっくりしないといけません」

「十日!? おいおい、勘弁してくれよ。そんなに寝てたら体が鈍るし、仕事もできねえ。武術大会のための稽古もできねえ」

「書類仕事なら、寝ながらやっても構いません。でも、他はダメです」

「いや、でもよ……」

「ダ・メ・で・す」

「うぅ……」


 アンジュの前では、リキシルも子供と同じような扱いだった。

 体の問題が絡むと、本当にアンジュは怖いからなあ。


 でも、リキシルの言いたいこともわかる。

 二週間後に武術大会を控えた今、十日も寝て過ごすのは致命的な問題だ。

 優勝できる可能性は限りなく低くなってしまう。


 その問題を解決するには……


「ハルさま」


 そっと、ナインが声をかけてきた。


「私が言えるようなことではないのですが……」

「うん、大丈夫。ナインの言いたいことはわかっているし、俺もそうしようと思っていたところ」

「さすが、ハルさまですね。差し出がましい真似をしてしまい、申しわけありません」

「ううん、気にしてないよ」


 よし。

 俺も覚悟を決めないとダメかな?


「リキシル」

「なんだ?」

「こんなことを言うのはなんだけど、やっぱりリキシルは安静にしておいた方がいいと思う。さっきも言ったけど、無茶をしてもっとひどくなったら大変だよ」

「でもな……」

「だから……武術大会には俺が出るよ」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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