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270話 いくらかの疑問

 稽古を終えて、ごはんを食べて。

 馴染みつつある客間のベッドに横になる。


 そういえば……と、ふと疑問に思う。


「ホランさんは、なんで領主になりたいのかな?」


 リキシルの場合は、言ってしまえば孤児院のためだ。

 エリンや他の子供達のために、現状を維持することが大きな目的。


 それなら、ホランさんは?


 自分の方が、より大きく正しく街を発展させることができると思っている?

 あるいは、権力欲が強い?


「うーん」


 しっくりこない。


 ホランさんとは少し顔を合わせただけだけど、そういう俗物的な思想を持つ人じゃないように見えた。

 個よりも全を優先させるというか……

 動くとしたら、もっと大きな思想、大義などを掲げるような気がした。


 まあ、俺個人の感想だから、間違っている可能性はあるんだけどね。


「逆に、アレクはすごくわかりやすい」


 戦いたいから戦う。

 実にシンプルな理由だ。


 でも、そういう人に限って、常識とか理性とか吹っ飛んでいる可能性があるから油断できない。

 ちょっと目を離したら、とんでもないことをやらかすこともあるかも。


「なんか、改めて考えると厄介な人が多いなあ、この街」


 色々と荒れそうだ。


 リキシルにはお世話になっているし、エリンとも仲良くなったし……

 できるなら色々と力になりたいけど、うまくいくかどうか。

 先行きは不安だ。


 ため息を一つ。

 それから、ゆっくりと目を閉じて……


 ゴガァッ!!!


「うわっ!?」


 突然、屋敷の奥の方から爆発音が響いてきた。

 地震が起きたかのように軽く揺れる。


「なんだ!?」


 慌てて部屋の外に出ると、エリンと鉢合わせた。


「エリン、今のは!?」

「俺だってわらかねーよ! ただ、封印倉庫の方ってのはわかる」

「封印倉庫?」

「よく知らねーけど、なんかやばいものを封印してる倉庫のことだよ」

「ならもしかして、それを狙った賊が?」

「だからわからねーって!」


 考えるのは後。

 今は、封印倉庫とやらに急がないと。


 エリンに案内をお願いして、屋敷内を走り……

 そして、封印倉庫に辿り着いた。


「ここが……」


 封印倉庫は地下三階にあった。


 頑丈な扉と魔法。

 二重の封印が施されていたみたいだけど、今は、無残に破壊されていた。


 千年を生きる大木ほどもある巨大な扉は大きくねじ曲がり、強引に開けられている。

 力任せに突破されたのか、魔法陣は光を失い、ただの文字になっていた。


「ひでーな、こりゃ」

「あ、勝手に中に入ったら……」

「まだ賊が残ってるかもしれねーだろ」

「だとしたら、なおさら先行させるわけにはいかないよ。俺が先を行く」

「あんだよ? 俺が信用できねーってか?」

「違うよ。エリンは女の子じゃないか」

「んなっ」


 なぜかエリンが顔を赤くする。


「てめー……この俺を女子供扱いとは、いい度胸だな」


 どこからどう見ても、今のエリンは女子供なんだけど……


「おら、行くぞ」

「う、うん」


 エリンにせっつかれつつ、封印倉庫の中へ。


 中には色々な物が収められていた。

 武具に魔導書。

 絵画に家具。

 果ては、なにに使うかわからない代物も。


 いずれも妙なオーラとまとっているように見えた。

 ただの物じゃないというか……

 呪われた品、という言葉がぴったりだ。


 下手に手を出そうとしたら、絶対になにかが起きる。

 そんな嫌な予感がした。


「やべーな、この場所」

「そうだね。でも……」


 賊はいなさそうだ。

 とっくに逃げたのだろう。


「ハル! エリン!」


 振り返ると、リキシルの姿が。

 騒ぎを聞きつけて、駆けつけてきたのだろう。


「お前ら、なんでこんなところに……」

「ごめん。気になって……それで、賊が残っていないか確認していたんだ」

「そっか……まあ、仕方ないな。協力、感謝するよ。ただ……」


 リキシルは苦い顔をして、倉庫の最奥を見る。


「一番盗られちゃいけないものは、盗られたみたいだな……」

次回の更新は、一回、休まさせていただきます。

詳細は活動報告にて。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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