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266話 改めて自己紹介を

「いやはや、長く生きるものじゃのう。お主のような強敵がいるとは、心躍るわい」


 アレクは笑顔で顎髭を指先で撫でる。


 とても満足そうなのだけど……

 突然、殴りかかられた方としてはたまったものじゃない。

 ムスッとした顔になってしまうのだけど、仕方ないはず。


「すまんのう。強者を見ると、つい腕試しをしたくなる。儂の悪い癖じゃ」

「はあ……」

「この通り。すまんかった」


 アレクは両手をぴたりと合わせて、拝むように頭を下げる。


 腹は立っているのだけど……

 ただ、老人にここまでさせてしまうと、こちらもちょっとバツが悪い。


「……わかりました。正直、ちょっと思うところはあるけど……謝罪を受け入れます」

「助かる」


 アレクはにっこりと笑う。

 突然、殴りかかってきたとは思えないような、無邪気な笑みだ。


 この人は、言葉通り、本当に腕試しをしたかったんだろうな。

 そんなことを常日頃から考えているのだろう。

 だから、ついつい体が動いてしまった。


 なかなかに困ったバーサーカーだ。


「ところで……」

「うん、なんじゃ?」

「さっき、拳の勇者とか言っていましたけど……それは本当に?」

「ああ、そのことか。うむ。一応、そんな称号を与えられておるぞい」

「おぉ」


 思わぬところで目的の人物を探し出すことができた。

 不幸中の幸い、と言っていいのかな?


「儂を探しておったのか?」

「あ、はい。ちょっと話を聞ければ、と思って」

「先の非礼の詫びじゃ。なんでも聞くとよい」

「それじゃあ遠慮なく……あなたは、ホランさんの代理として武術大会に出場するんですか?」


 この人を相手に、遠回りな話をしても意味はないだろう。

 そう感じた俺は、直球で切り込んでみることにした。


「ほう、どこでその話を?」

「街中で噂になってますよ」

「なるほどのう。一応、ホランからは秘密にしておくように言われたが、人の口に戸は立てられんということか」

「隠しておきたかったんですか?」


 ということは、もしかしてやましいことを考えている?


「まあのう。儂は勇者なんて称号をもらっているが、そういうものにあまり興味はなくてのう。ただただ、己の武を磨きたい。願うことはそれだけじゃ」

「はあ……」

「だから、あまり注目されるのは好まないのじゃよ」


 なんとなく、アレクの人柄を掴むことができたような気がした。

 良くも悪くも、この人は自分の欲求に忠実なんだ。

 そのせいで、周囲に迷惑をかけてしまうことがある。


 その悪癖を自覚はしていて、コントロールを試みているものの……

 なかなかうまくいかない、というところか。


「困った人ですね」

「ははは、よく言われる」


 ついつい本音がこぼれてしまうのだけど、アレクは怒ることなく、楽しそうに笑うのだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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