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264話 アレク・ウェルナス

 勇者のこと、ホランさんのこと。

 一刻も早くリキシルに伝えた方がいいと思い、屋敷に向かう。


 向かうのだけど……


「サナ、どこへ行ったのかな……?」


 露店の肉串に気を取られて……

 ふらふらと歩いて……

 人波に飲まれて、そのままはぐれてしまった。


 サナの自由すぎるところ、なんとかしてほしいのだけど、なんともならないような気がした。

 ある意味で、アレがサナらしいからね。


「とはいえ、どうしよう?」


 サナを探すべきか?

 それとも、気にせずに屋敷へ戻るか?


「……探そうか」


 少し迷い、そんな決断をした。


 さすがに、迷子になったまま帰ってこれない、っていうことはないと思うんだけど……

 どこかでトラブルを引き寄せてしまう可能性はある。

 リキシルのところでお世話になっている以上、それは避けたい。


「迎えに行こうか」


 それがベストと考えて、サナを探して街を歩く。


「とはいえ、どこを探したらいいのかな?」


 滞在を始めてそれなりの時間が経っているので、街の地理はなんとなくわかる。

 でも、細道や裏道を含めると、とんでもなく広い街で……

 サナが今どこにいるのか、当たりをつけることができない。


 ひとまず、聞き込みをしようか。

 見た目的にも内面的にもサナはとても目立つ女の子だから、意外とあっさり情報が得られるかもしれない。


「すみません」

「おう、なんだい?」

「えっと……角と尻尾が生えた、ドラ……トカゲみたいな女の子、見てません?」


 ドラゴンと言うと大変なことになりそうだったので、トカゲにしておいた。

 本人が聞いたらすごく怒りそうだ。

 ごめん。


「トカゲ? ……ああっ、あの嬢ちゃんか!」

「見たんですか?」

「ああ。この先に公園があるのわかるかい? そこで、兄ちゃんが言うような嬢ちゃんを見かけたぜ」

「ありがとうございます」


 通りすがりのおじさんにお礼を言って、公園に向かう。


 五分ほど歩いたところで公園に到着。

 そこそこ広い公園で、広場と遊具だけじゃなくて、散歩用の林道が整備されている。


「えっと、サナは……あれ?」


 林道に移動したところで、サナを発見した。

 木の幹に寄りかかり、体を大の字にして寝ている。


 そんなサナの前に、見知らぬ男の人が。


 かなりの高齢で、白髪混じりの髪。

 たっぷりの髭を生やしている。


 ただ、そんな見た目に反して精力にあふれているというか、とても若々しい印象を受ける。

 背がまっすぐで、足取りもしっかりとしているところが、その要因の一つなのだろう。


 その人はあごひげを撫でつつ、迷うような視線をサナに送っていた。


「えっと……すみません」


 ちょっと考えてから、老人に声をかけた。


 サナは見つけることができたけど、でも、この老人を放っておくことはできない。

 なぜか、そう思った。


「なにかな?」

「その子、俺の仲間なんですけど……もしかして、なにか迷惑を?」

「ほう、ドラゴンを仲間にしておるのか」


 一瞬、警戒するものの……

 でも、考えすぎと思い直す。


 見る人が見れば、サナがドラゴンであることはすぐにわかる。

 それなのに警戒をするのは考えすぎだし、この人に対しても失礼だ。


「ちょっと変わったドラゴンなので。それで、なにかこの子を気にかけていたみたいですけど……」

「ああ、すまんの。特にこれといって、なにかあるわけじゃない。ただ、このようなところでドラゴンが昼寝をしておるから、何事かと思ってのう」

「なるほど」


 もっともな話だ。

 こんなところでドラゴンが寝ていたら、普通は気になるだろう。


 変な勘違いをされないように、しっかりと説明しておこう。


「この子はドラゴンですけど、悪さとかはしないので。その点は安心していただけると」

「ああ、うむ。そういう心配はしておらんよ。こんなにも無邪気で警戒心のない寝顔を見せられて、悪いことを企んでいるとは考えぬよ」

「あはは……」

「先も言ったが、なぜこんなところにドラゴンが? と思っただけでのう……あと、あわよくば手合わせ願えればと思っただけじゃ」

「なるほど……なるほど?」


 今、予想外の言葉が飛び出してきたような?


「時に、お主」

「はい?」

「高レベルの冒険者と見たが、間違いはないか?」

「あ、はい。そうですね、一応」

「では、儂と手合わせせぬか?」

「え?」


 こちらの話を聞くことなく、老人は拳を構える。


「儂の名前は、アレク・ウェルナス……拳の勇者などと呼ばれておるが、その実態は、武を追求する一人の武人じゃ」


 さらりととんでもないことを口にして……

 老人……アレクは地面を蹴り、こちらに突撃を開始した。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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