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263話 二人目の勇者

 シルファのため、リキシルのため。

 武術大会に勝利するために、まずは情報収集をすることに。


 稽古が終わった後。

 あるいは始まる前に街に出て、武術大会に出場する選手達の情報を集めていく。


「なんか、誰も彼もぱっとしないっすねー」


 選手達の情報を見て、サナがそんなことを口にする。


 二つの剣は嵐のごとく相手を飲み込む……双剣使いのアレキアス。

 どれだけのダメージを受けても、地に倒れることはない……不滅のドズ。

 その刃は雷のように速い……紫電のユックス。


 二つ名を持つ選手が多数出場予定だ。

 ぱっとしないとか、そんなことはないと思うんだけど。


「サナからしたら、大したことないのかもね」

「師匠からしても、大したことないっすよ」

「そんなことないって。この人達、一騎当千の強者って呼ばれているんだよ? 俺なんかじゃあ、さすがに相手にならないと思う」

「師匠の自己評価の低さ、最近は改善されてきたと思ったっすけど……やれやれっす」


 なぜか呆れられてしまう。


 でも、正当な評価だと思うんだよね。

 魔法もアリなら、それなりに健闘できる自信はあるんだけど……

 物理オンリーとなると、なかなか難しい。


「師匠ならワンパンっすよ?」

「そんなことはないから」

「またまたー。自分をワンパンしたくせにー」

「サナって、時々、記憶を妙な方向に改ざんしてない……?」


 この子の頭は、いったいどうなっているんだろう?

 たまに戦慄してしまう。


 って、話が横道に逸れた。

 こんなことをしていないで、引き続き情報収集に励まないと。


 武術大会運営が配信している情報に目を通したり。

 聞き込みをしたり。

 色々な方法で情報を集めて……


「「勇者?」」


 ふと、そんな情報が飛び込んできた。


 意外なところに思わぬ情報が転がっているものだ。

 そう考えて、露店のおじさんに話を聞いてみたら、思いもよらない単語が飛び出してきた。


「おう! 拳の勇者、アレク・ウェルナスさまが大会に出場するみたいだぜ」

「拳の勇者って……それはつまり、勇者ってことっすか?」

「他に誰がいるんだよ?」

「……師匠、どういうことっすか?」


 サナが声を潜めて尋ねてきた。


「……勇者は、レティシアでは?」

「……一人に限定されているわけじゃないんだ。複数いるんだよ」


 レティシアは、史上最年少で勇者の称号を授かり……

 剣の勇者と言われていた。


「おじさん、それは確かな情報?」

「ああ。まだ公には発表されてないが、けっこうな人数が知っていると思うぜ。勇者さまが動くとなれば、完全に隠すことはできないからな。どこからか話が漏れて、噂が広がり……っていうわけさ」

「なるほど……ちなみに、その勇者さまに会うことはできるかな?」

「なんだ、兄ちゃんも勇者さまのファンか?」

「まあ、そんなところ」

「なら、アストラス商会に行ってみるといい」


 思わぬ名前が飛び出してきて、ついつい目を丸くして驚いてしまう。


 アストラス商会、って……

 ホランさんのところだよね?

 どうして今、その名前が出てくるのだろう?


「それは、どういう……?」

「勇者さまは、アストラス商会の代表で出場するんだよ。代理、ってやつだな」

「えっ」


 勇者が代理に?

 というか……

 ホランさんも、武術大会の優勝を……次の領主の座を狙っていた?


 思わぬ事実が次々と飛び込んできて、すぐに頭を整理することができず混乱してしまう。


「師匠、大丈夫っすか?」

「サナは驚かないの……?」

「自分、最初から考えることを放棄してるので!」


 そこは、胸を張って言うことじゃないと思うよ?


 たまに、サナの教育を間違えたかな? と不安になる時がある。


「兄ちゃん、アストラス商会の場所はわかるかい?」

「あ、いえ……やっぱり、今日はやめておこうかな、って」

「そうかい?」

「ちょっと用事があるのを思い出したので。じゃあ」

「あ、師匠!」


 ゆっくりと歩いて、その場を離れた。

 サナが慌てて追いかけてくるものの、悪いけど、彼女のことは頭に入っていない。


 武術都市に勇者がいた。

 そして、ホランさんの代理人として大会に出場するらしい。


「なんか、モヤモヤするな……」


 物語の駒というべきか。

 そういったものが揃い始めていて……

 なにか大きなものが動き出しているような気がして……


 少し不気味だった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ホランは領主争いのライバルって話だったと思うんだけど。 [一言] この作者は、こういうのが多い
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