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259話 クライン孤児院

「あっ、エリンの小姉ちゃんだ!」

「小姉ちゃん、おかえりなさい!」


 中に入ると、子供達が笑顔で駆けてきた。

 それぞれエリンに抱きついていて、どことなく犬を連想させる。


「おう。てめーら、出迎えご苦労」

「あい!」

「これくらい、なんでもないよ!」


 エリンは子供達に慕われているみたいだけど……

 その口調はなんとかならないのかな?

 台詞だけを見ると、悪い組織の幹部みたいだ。


「エリン小姉ちゃん、この男は誰だ?」

「小姉ちゃんの彼氏?」

「ばっ……こんなひょろっとしたもやし野郎が、俺の彼氏なわけねーだろ!」


 ひどい。


「俺は、リキシルみたいなできる女になるからな。こんなもやし野郎じゃ、ダメダメさ」

「うーん、ハルは言うほどもやしじゃないと思うけど。ごぼうくらい?」


 シルファがそう言ってくれるのだけど、フォローになっているのかどうかわからない。


「ところでエリン」

「あんだよ? あ、その荷物は、この孤児院のものだからな。倉庫まで運べ」

「それはいいんだけど……小姉ちゃんって、なに?」

「っ!?」


 触れてほしくない部分だったらしく、エリンが顔を赤くした。


「や、やかましい! てめーが俺を小姉ちゃんと呼ぶな!」

「でも、気になるんだけど」

「気にするな!」

「えぇ」


 なんて横暴な。


「兄ちゃん、兄ちゃん」


 ふと、子供達に服を引っ張られた。


「前は、普通にエリン姉ちゃんって呼んでいたんだ」

「そうなの?」

「でも、エリン姉ちゃんが、俺達にとっての姐御はリキシルだけだ! だから、小姉ちゃんと呼べ、って」

「だから私達、小姉ちゃん、って呼んでいるの」

「へえ……」

「ぬぐぐ」


 隠しておきたいことを暴露されてしまい、エリンは顔を赤くしてプルプルと震えた。


「今の話をまとめると……エリンは、なんだかんだ言いつつもリキシルのことを尊敬していて、慕っているということかな?」

「ばっ、んなことは……!」

「慕っているというよりは、好き、っていう感じだよね。うん」

「んあ!?」

「まったく別の呼び方じゃなくて、小姉ちゃんにするところを見ると、おそろいにしたかったのかな? うん、かわいいところがあるね」

「ぐぎぎぎ……!」


 エリンはものすごい表情をして、全身を震わせて……

 ギンッ! と目を逆三角形に吊り上げる。


「コロス!」

「え!?」

「てめえ、この俺を舐めやがって! ぶちコロス!」

「わわわ、ごめんごめん! もうからかわないから」

「やっぱりからかってやがったのか! 叩きコロス!」

「しまった!?」


 両手を振り回して追いかけてくるエリン。

 その行動は子供っぽいのだけど……


 でも、視線に込められた殺意は本物。

 俺は慌てて逃げ出した。


「ごめん、もうからかわないから!」

「うるせえ! 一発、殴りコロさせろ!」

「断る!」

「待てやこら!」

「エリン小姉ちゃん、足はやーい!」

「私も一緒に遊ぶ!」


 追いかけっこをしているものと勘違いして、子供達も混ざり、状況は混沌としたものに。


「やれやれ。ハルもエリンも、まだまだ子供だね。ボク、荷物を運んでおくね」


 シルファは、我関せずという様子で奥へ移動するのだった。




――――――――――




 俺達が運んでいたものは、孤児院が使う食料や衣類。

 その他、生活必需品だった。


 月に一度、こうしてリキシルが援助しているらしい。


 いつもは屋敷のメイドさんなどに任せているみたいだけど、今回は俺とシルファとエリンが指名された。

 ただ雑用を任せるだけなら、いつものメイドさんを指名すればいい。

 でも、今回は俺とシルファが仕事をすることに。


 たぶん、なにか意味があるんだろうな。


 リキシルがなにを狙い、なにを求めて派遣したのか?

 それを読み解くことも訓練の一環なのかもしれない。


「ほら、茶だ」


 荷物を運んで落ち着いたところで、中に案内された。

 そこで、エリンがお茶をいれてくれる。


「ありがとう、エリン」

「さんきゅー」

「ちっ、なんで俺が給仕みたいなことを……」


 メイド服を着ているからだと思うよ。


「ところで……」


 見た感じ、孤児院に大人はいない。

 どういうことなのだろう?


 不思議に思って質問をしようとした時、


「失礼するよ」


 ふと、第三者の声が乱入してきた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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