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258話 気分転換

 武術都市にやってきて、そろそろ一ヶ月が経とうとしていた。

 なにか一つのことに集中していると、時間が過ぎるのはあっという間だ。


 結界の習得は……

 あまりうまくいっていない。


 部分的に結界を展開することもできず。

 コツを掴むこともできず。

 四苦八苦する毎日。


 リキシルは、習得には一年かかるだろう、って言っていたからこれが普通なのかもしれないけど……

 でも、目に見えた成果がないと焦りを覚えてしまう。


 そんなある日のことだった。


「おっす」

「おっす」


 朝。

 エリンとシルファが部屋を尋ねてきた。


 歳が近いこともあり、二人は仲良くなったみたいだけど……

 最近、エリンの口調がシルファにうつっているような気がする。


 うーん……教育に悪いと注意するべきか。

 それとも、そこまで口を挟む必要はないか。

 悩ましい。


「ハル、今日はオフだよな?」

「だよな」

「そうだけど、なんで知っているの?」

「俺はハルの世話係なんだから、スケジュールを知ってるのは当然だろ」


 エリンは引き続き、屋敷に滞在して俺の世話をするように。

 最近では秘書のような立ち位置に収まっていて、あれこれと面倒を見てくれていた。


 こんな子供に……

 と複雑な気分にならないでもないが、でも、エリンはとても優秀なので助かる。

 リキシルは彼女の能力を見抜いて、次に繋がることを考えて、こういう仕事を与えたのかもしれないな。


「ちと俺らに付き合えよ」

「あえよ」

「別にいいけど……シルファ、そうやって語尾を繰り返すのはやめようね?」

「ダメなの?」

「ダメ」

「そっか、了解」


 そう言いつつも、シルファはちょっと残念そうな顔をしていた。

 密かに気に入っていたのかな?


「どこに行くの? 買い物?」

「あー……似たようなもんだ」


 なぜかはぐらかされてしまう。


「荷物を運ぶんだけど、俺らだけじゃ手が足りねーんだよ。だから特別に、ハルにも手伝わせてやるよ」


 すごく口が悪い。

 でも、エリンはまだまだ小さいので、どこか背伸びをしているように見えて逆に微笑ましい気持ちになる。


「うん、いいよ」

「おい、なんでニヤニヤしてやがる?」

「なんでもないよ。あ、外に出るなら、リキシルにそう言っておかないと」


 なんでもかんでも報告する必要はないのだけど……

 お世話になっている身なので、外出の際は、それを伝えておいた方がいいだろう。


「それなら問題ねえよ。俺がもう伝えておいた」

「仕事が早いね」

「俺はできる女だからな」


 ちょっと得意そうに語るエリンは、できる女というよりは、かわいらしい女の子という感じだった。




――――――――――




 荷物を運ぶというから、大きな鞄を持っていくのかな?

 そんなことを考えていたのだけど……


「まさか、こんなことになるなんて」


 人力の荷車を引いていく。

 荷台には、エリンが用意した荷物がたくさん。

 勝手に開けるわけにはいかないので、なにが入っているかはわからない。


「おいおい、ふらついてるぞ」

「ハル、大丈夫? 手伝おうか?」

「だ、大丈夫……それに、いい訓練になるからね」


 ものすごく重い上に、エリンとシルファも荷台に乗っていた。

 かなり大変だけど、これはこれで良い運動になるだろう。


「ねえ、エリン」

「あんだよ」

「これ、なにを運んでいるの?」

「……なんだっていいだろ」

「まさかとは思うけど、怪しい取引じゃないよね?」

「てめー、俺がんなことをするように見えるのか?」


 ちょっとだけ。

 でも、日頃の言動がこんな感じなので、それは仕方ないと思う。


 そんな俺の内心に同意するかのように、シルファもうんうんと頷いていた。


「てめーら……いつか絶対に泣かす!」

「物騒なことを言わないで。ところで、どこまで運べばいいの?」

「もうすぐだよ。ほら、見えてきたぜ」


 歩くこと五分。

 彼女が言うように、とある建物が見えてきた。


「教会?」


 やや大きいサイズの教会だ。

 建物は大きく、それだけじゃなくて広い庭と畑もある。


 入り口に『クライン孤児院』という表札がつけられていた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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