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251話 歓待

 屋敷に到着して、休憩。

 それから、話は後でしようということで、歓待を受けることに。


 リキシル曰く、ささやかな宴なのだけど……


「これが……ささやか?」


 確かに、部屋はそれほど広くない。

 ただ、パーティー形式で、いくらかのテーブルが並べられている。


 その上に乗せられているのは、色鮮やかな料理の数々。

 肉、魚、野菜、スイーツ……ジャンルごとに料理が分けられていて、見た目にも楽しい。


 もちろん、味は絶品。

 一度手を伸ばしたら、二度目を伸ばさずにはいられないような、病みつきになる味だ。


「はぐはぐはぐっ!」

「あむあむあむっ!」


 サナとシルファはすでに料理に夢中で、頬をリスのように膨らませつつ、ガツガツと食べていた。

 このごちそうは誰にも渡さない!

 というような感じで、競い合うようにして料理を口に運んでいる。


 一方、俺はちょこちょこと食べるだけ。

 予想以上の歓待に圧倒されているせいだ。


「すごいなあ……」

「これくらい普通ですわ」


 ワイングラスを片手に、クラウディアが隣に並ぶ。


「普通なの?」

「当然ですわ。ハルさまは、紹介状を持つ客。普通の紹介状ではなくて、他の都市の領主が書いたもの。故に、それ相応のもてなしをするのは当たり前なのです」

「あぁ、なるほど」


 ここでしょぼいおもてなしをしたら、その人の器量が疑われてしまう、ということか。

 だからこそ、リキシルはささやかと言いつつ、これだけのパーティーを開いてくれたのだろう。


「貴族って、大変だね」


 色々なところに目をやり、気をつかわないといけない。

 とてもじゃないけれど、俺にはできそうにないな。


 肉をぱくりと食べつつ、そんなことを思う。


「よう、ハル!」


 さきほどまでアリスとアンジュとナインと話をしていたリキシルだけど、今度はこちらにやってきた。

 クラウディアと同じく、片手にワイングラス。


 ただ、クラウディアと違うのは、その中身がなみなみと注がれているところ。

 リキシルは、それをぐいっと一気に飲み干してしまう。


 そして、おかわり。


「楽しんでいるか?」

「えっと……うん」


 リキシルが一番楽しんでいるのでは?

 なんてことを思ったけど、それは口にしないでおいた。


「ありがとうございます。わたくし達のために、このような素敵なパーティーを開いていただき、とても感謝しておりますわ」


 さすがクラウディア。

 その挨拶はとても様になっていた。


「客はきっちりもてなさないとな」

「感謝しております」

「し、しています」


 クラウディアに続いて、慌てて頭を下げた。


 うーん。

 貴族のやりとりは大変だ。


「まあ、パーティーといっても小さなものだし、他に誰かがいるわけでもねえ。肩の力を抜いてくれ。それに、ハル達が主役なんだからな」

「それじゃあ……うん、そうさせてもらおうかな」

「ハルさま、それは……」

「リキシルがそう言っているんだから、大丈夫じゃないかな? それに、今の言葉を無視する方がダメな気がしたんだけど」

「そう言われると……」

「くははっ、そう返すか。ホント、おもしろいヤツだな」


 ツボにハマったらしく、リキシルは本当に楽しそうに笑う。


 俺は普通にしているつもりなんだけど……

 それでも、俺みたいなタイプは珍しいのかな?


「うちは、けっこう賑わっているからな。これくらいのパーティーなら毎日開くことができるくらいには、懐は温かい。堪能してくれ」

「うん、そうさせてもらっているよ」


 主に、サナとシルファが堪能していた。


「エリンはどうしたの?」

「せっかくだから、あいつも参加させようと思ったんだけどな。ドレスを着たくないとか言い出して、部屋に立てこもってる。ったく、困ったもんだぜ」

「女の子……なんだよね?」

「ああ。あの言動のせいで勘違いされることが多いが、エリンは女だぜ」


 あんなに活発になったのは、リキシルの影響なのかな?

 なんて、ちょっと失礼なことを考えてしまう。


「そんなわけで、エリンはいない。だから、話をするなら今がちょうどいい、っていうわけだな」

「それは……」

「うまい料理と酒を楽しみながら、ゆっくり話をしようぜ? 最初は、そんなもんでいいのさ」

「……うん。じゃあ、お言葉に甘えて」


 リキシルとグラスを合わせた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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