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247話 自分らの存在意義は?

「最近、やばい気がするっす」

「んー?」


 馬車の隣をテクテクと歩くサナとシルファ。

 運動不足になるということで、ちょくちょく歩くことにしていた。


 そんな中、サナが深刻そうな顔になる。


「自分達、目立ってない気がするっす」

「サナはすごい個性の塊だと思うよ?」

「でへへー」


 良い意味で言われたのかわからないが、サナは照れる。

 単純な女の子……ドラゴンだった。


「って、そうじゃないっす!」

「どういうこと?」

「最近、アリスもアンジュもクラウディアも、師匠にらぶらぶオーラをぶつけているっす!」

「らぶらぶ……」


 シルファは、お前は古い時代の親父か? というような顔をした。

 しかし、それに気がつくことなく、サナは力説する。


「それに比べて、自分達はどうっすか!? なにもしていないっす! このままだと、ゼロ個性としてそこら辺に埋没してしまうっす!」

「サナは個性たっぷりだと思うよ?」

「でへへー」


 再び照れるサナ。

 本当に単純なドラゴンだった。


 こんなに単純で大丈夫なのか?

 他人事ながら、心配になるシルファだった。


「サナは、ハルとイチャイチャしたい?」


 結論をまとめるように尋ねると、シルファがまんざらでもない顔をする。


「そっすねー、師匠と番になるのもいいっすねー、でへへー」

「でも、ハルはそういう目をサナに向けたことはないと思うけど?」

「うぐ」

「友達感覚……ううん、ペット?」

「はぐ」

「ペットは言い過ぎかな?」

「そっすよ!」

「ペットに失礼か」

「そっち!?」

「当然」

「胸を張って肯定された!?」


 涙目になるサナだけど、シルファとて、別にいじわるをしているわけではない。

 ただ単に、物事をオブラートに包むことを知らないため、思ったことをそのまま口にしてしまうのだ。


 それはそれで、ある意味、質が悪いが。


「とにかく! 自分は、この状況を脱したいっす! 自分も師匠とらぶらぶしたいっす!」

「難しいんじゃないかな?」


 そもそも、ハルはアリス達ですら特別な目で見ていない。

 彼女達の想いに気がついていない。

 鈍感と言えた。


 そんなハルが、サナを特別扱いすることはないだろう。


「そんなことないっす。本気出せば、自分の魅力に師匠はメロメロっす!」

「そう」


 適当にがんばってくれ。

 そう言うような感じで、シルファは適当な相槌を打ち、そのまま歩みを再開……


「シルファには、手伝ってほしいっす」

「シルファが?」


 思わぬ言葉を受けて、足を止める。


「一緒に師匠を魅力して、イチャイチャなでなでしてもらうっす!」

「……なでなで……」


 それは魅力的かもしれない。

 ついつい、シルファはそんなことを考えてしまう。


「どうするの?」

「それは……」


 二人は怪しい密談を始めた。




――――――――――




「うーん……馬車に乗っているだけ、っていうのも退屈だよね」


 旅は順調に進んでいるものの、それはそれでなにもすることがなくて退屈だ。

 まあ、それはそれで喜ばしい。

 退屈を歓迎するべきか。


「師匠、師匠」

「ハル」

「うん? どうしたの、サナ、シルファ」

「うっふーん」

「ウッフーン」


 突然、サナとシルファが奇妙なポーズをした。

 その状態で、パチリとウインク。


「えっと……?」

「師匠、我慢しないでいいっすよ」

「たぎる熱をシルファ達にぶつけていいよ?」

「???」


 二人はなにをしたいのだろう?

 欠片も理解できなくて、心の底からの疑問を覚えてしまう。


「えっと……」

「ドキドキ」

「ワクワク」

「……二人共、疲れている?」


 ガクリ、と二人が……というか、主にサナがコケた。


「必死に自分達が魅了しているのに、どうしてそんな結論になるっすかー!?」


 よくわからないサナの魂の叫びらしきものが響き渡り……


「まあ、こうなるよね」


 その隣で、シルファがのんびりと言い、肩をすくめるのだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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