表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

247/547

246話 ライバルだけど友達でもあるから

 困りました。

 巡礼は無事に終わったのですが……


「どうしたの、アンジュ?」

「い、いえ、なんでもありません!」

「そう? 俺の顔を見ているから、なにかついているのかな、って」

「な、ななな、なにもついていません!」


 ついつい、ハルさんの顔を見てしまいます。

 特に意味はないのですが、気がついたらじーっと見つめていて……


 そして、今のように不思議に思われてしまいます。

 今日だけで、何度コレを繰り返したか……


 うぅ、おかしな子と思われたらどうしましょう?

 これをきっかけにして、嫌われたり……


「……はぅ」


 ものすごくどんよりとした気分になってしまいました。


「お嬢さま、大丈夫ですか?」

「え?」

「なにやら顔色が優れない様子ですが、もしや、馬車酔いでも?」

「い、いえ。そんなことは……」

「無理をしてはいけません。すみません、ハルさま。少し休憩をいただいても?」

「うん、もちろん。というか、気づいてあげられなくてごめんね」

「う……」


 ハルさん、とても優しいです。

 やっぱり、お慕いしています……はぅ。


 その後、見晴らしのいい場所で馬車を止めて、しばらく休憩をとることに。

 私の問題でみなさんの足を止めてしまい、申しわけないのですが……


 ただ、正直なところ助かりました。

 あのままハルさんと一緒にしたら、どうにかなってしまいそうで……


「とはいえ、このままじゃいけないんですけど……」


 これからも旅は続きます。

 一緒にいても問題のないように、心の整理をつけないといけません。


 そのためにも、まずは……


「お嬢さま」

「ひゃい!?」

「ひゃい?」

「い、いえ、なんでもありません……どうしたんですか、ナイン」

「アリスさまとクラウディアさまをお連れしました」

「え?」

「しっかりと話し合うことをオススメいたします。そうすることで、少なくとも心労の原因が一つ、取り除かれるでしょう」

「ナイン、あなた、私の気持ちを……」

「では、失礼いたします」


 ナインは優雅に一礼して、この場を離れる。


「あっ、アリスとアンジュっす! ちょっとお菓子をあいたたたた!?」

「今、邪魔をしてはいけませんよ」

「なんで自分怒られているっすかー!?」


 サナさんの頭を鷲掴みにして、立ち去るナイン。

 たまに思うのですが、私のメイドはとんでもない力を発揮する時があります。

 なぜでしょう?


「えっと……ねえ、アンジュ」

「これは、どういうことですの?」


 連れてこられた二人は不思議顔。

 なにも説明されていないのでしょう。


「えっと……」


 どう話したものか?

 あれこれと考えるものの、素直に打ち明けたが方がいいと思いました。


「実は……私、その……ハルさんを好きになってしまいました!」

「「知ってた」」


 ……え?


「あの……それは、どういう……?」

「アンジュがハルを好きなことは知っていたわ。あ、ナインに聞いたとか、そういうことじゃないからね?」

「同じ想いを抱える女同士……見れば、すぐにわかりますわ」

「そ、そうなんですか……って、同じ想い……?」

「えっと……あたしも、ハルのことが好きよ」

「わたくしも、もちろん、好きですわ」

「え、えええぇっ!?」


 ついつい大きな声を出して驚いてしまう。


 サナさんが、何事かと顔を出そうとするのだけど……

 再びナインに頭を鷲掴みにされて、引きずられていきました。


「えっと……アリスさんと、クラウディアさんも……?」

「ええ。わたくしを助けてくれたハルさまは、とてもかっこよくて……まるで、物語に出てくる騎士のようでしたわ。心奪われない方がおかしいかと」

「あたしは、まあ、色々と長い付き合いだから……ね」

「そうなのですか……」


 二人がハルさんを慕っていたなんて、まるで気がつきませんでした。

 私、鈍いです。


 そして、ハルさんを慕うようになったのは、私が三番目。

 わがままを押し通すことはなく、素直に身を引いて……


「身を引こう、とか考えないでよ」

「えっ? ど、どうしてわかったんですか?」

「アンジュって、けっこうわかりやすいもの」

「ですわね」


 うんうんと、妙な納得をする二人。

 私、わかりやすいのでしょうか……?


「とにかく。必要以上に私達のことを気にしないで」

「そうですわ。身を引くとかは考えず、むしろ、わたくし達がハルさまと付き合っていたとしても、奪い取ってやる、くらいの気概が欲しいですわ」

「そ、そそそ、そんなことは!?」

「例えですわ」

「私もクラウディアに同意。ハルを好きな者同士だからこそ、変なことで退いてほしくないし……一緒にがんばりたいの」

「……アリスさん、クラウディアさん……」

「わたくし達はライバルですが、でも、仲間でもあります。だから……」


 クラウディアが手を伸ばす。

 アリスも手を伸ばす。


「「がんばろう?」」

「……はい!」


 私は、笑顔で二人の手を取りました。

『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、

ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ