表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

246/547

245話 あなたのためにも祈りを

 七層に続く階段をゆっくりと降りていく。

 普通、階段に魔物は出現しないし、トラップもない。


「ねえ、アンジュ」

「はい?」

「ところで、さっきはどうやって本物の俺を見分けたの?」

「えっ」

「すごく迷っていたみたいだけど、最後はとても自信たっぷりだったから……なにかコツとかがあるのかな、って」

「え、えっと、その、あの……はう」


 なぜかアンジュは顔を赤くしてしまう。


 うーん……

 よくわからないけど、深く聞かない方がいいのかな?


 俺が同じような状況に陥った時に備えて、対処法を聞いたおきたかったのだけど……

 でも、次は最下層。

 トラップはなにもないはずだから、そこまで心配する必要はないかな?


「あ、ついたね」


 ほどなくして最下層に到着した。

 通路がまっすぐ伸びていて、大きな扉が見える。

 その向こうが歴代勇者の墓になっているのだろう。


「いこうか」

「はい」


 アンジュと力を合わせて扉を開ける。


 歴代勇者の墓ということで、とても丁寧に作られているのだろう。

 扉は錆びついていることはなくて、スムーズに開いた。


「これが……」


 扉の向こうには小さな部屋が。

 いつか見た時と同じように、中央に歴代勇者の墓が見える。


「ハルさんは、ここで待っていてくれますか?」

「うん、了解」


 アンジュはゆっくりと墓の前へ。

 それから、膝をついて両手を合わせ、祈りを捧げる。


「……」


 ほどなくして、アンジュの体から光の粒があふれだした。

 それはホタルの光のように、どこか幻想的で……

 見る者の心をがっちりと掴む、とても綺麗な光景だった。


(……勇者、か)


 心の中でつぶやいた。


 歴代の勇者は、なにを思い、その称号を授かったのだろう?

 なにを考えて、英雄的な行動をとったのだろう?


 ここにいると、どうしてもレティシアのことを考えてしまう。

 勇者にならなければ、彼女は……


(って、順番が逆か)


 悪魔に取り憑かれて、それから勇者になったわけで……

 勇者になったことが悪いわけじゃないか。


 うーん。


 なんか、レティシアのことになると、ちょっと思考が乱れるな。

 それだけ気にしているのか?

 それとも、過去のトラウマが刺激されているのか?

 自分では判別ができなかった。


「……ふぅ」


 ほどなくして、アンジュがゆっくりと立ち上がる。

 どうやら祈りが終わったらしい。


「おまたせしました」

「うん、おつかれさま。疲れていない?」

「大丈夫です。こういう場以外でも、祈りを捧げることはよくあることなので」

「そうなの?」

「はい。私は、神に仕える身ですから。毎日のお祈りは欠かしていません」


 なるほど。

 言われてみれば納得の話だった。


「ただ……」


 なぜかアンジュは頬を染めつつ、微妙に視線を外しながら言う。


「その……これからは、ハルさんのためにもお祈りをしますね」

「え、なんで?」

「その、えっと……そ、そういう気分なんです!」

「ありがとう?」


 突然、どうしたんだろう?

 不思議に思いながらも、まあいいか、と断らないでおいた。

『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、

ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ