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227話 一緒でしょう?

「冒険者?」


 一週間の謹慎が開けた後……

 レティシアは、真っ先にハルを尋ねて、己の考えを打ち明けた。


 それは、冒険者になり、世界を巡ること。

 思わぬ強敵を討伐する。

 未踏の大地を踏破する。

 金銀財宝を手に入れる。


 夢のある職業と言えなくもないが、しかし、常に危険と隣り合わせだ。

 怪我は日常茶飯事。

 重傷を負うだけではなくて、時に命を落とすこともある。


 確かな腕がないと、やっていくことはできない。

 レティシアはまだ子供。

 いくらなんでも……


「……あれ?」


 ちょっと待てよ? と、ハルは考え直した。

 確かにレティシアは子供ではあるが、先日、ウルフを討伐してみせた。

 しかも、おたまで。


 もちろん、ウルフに手こずるようでは、冒険者としてやっていけないだろうが……

 駆け出しとしては十分ではないだろうか?

 これからの成長を考えると、十分に及第点のような気がした。


「うーん、でも……」

「なによ、ハルは反対なの?」

「……どちらかというと?」

「むー」


 レティシアは頬を膨らませた。


 ハルなら応援してくれると思っていたのに。

 表情がそう語っている。


「なにが不満なのよ?」

「だって、まだ子供だから……」

「あと数年は訓練するわ。さすがに、今すぐに、なんて考えていないわよ」

「それなら……いや、でも……」

「もう、まだ問題があるの?」

「レティシアって、その、なんていうか……」


 言っていいものだろうか?

 迷いつつ、ハルは素直な気持ちを口にする。


「ちょっと、猪突猛進なところがあるじゃない」

「うぐ」


 自覚はあったらしく、レティシアは苦い顔に。


「そういうところが問題にならないかな、って」

「そ、それは……」

「いざという時、大丈夫なのか不安なんだ。それと……」

「それと?」

「……ううん、なんでもないよ」


 ハルは、次に続く言葉を飲み込んだ。


 レティシアと離れたくない。


 そんなことを思ったのだけど、口にすることはできなかった。

 恥ずかしいという思いがある。

 それと、個人的な感情でレティシアの夢を邪魔したくなかった。


「と、とにかく、レティシア一人だと心配なんだ。どうしても冒険者になりたいなら、まずは、どこか有名なパーティーに参加させてもらうとか……」

「え、イヤよ」

「えぇ……」

「よく知るパーティーならともかく、有名っていうだけで参加をしたら、どんな目に遭うかわからないじゃない」

「それは、まあ……」

「そもそも、私は自分だけのパーティーを立ち上げたいの」

「誰か心当たりが?」

「ハル」


 レティシアは、まっすぐにハルを指差した。

 ぽかんとなる。


「え?」

「だから、ハルよ。ハルも、一緒に冒険者になりましょう?」

「え……えええぇ!?」


 ハルの驚きの声が、村中に響いたとかなんとか。


「ぼ、僕も……?」

「大丈夫。ハルなら、きっと強くなれるわ。だって、私と一緒にウルフを倒したんだもの」

「でもあれは、ほとんどレティシアの活躍のおかげで……」

「そんなことない」


 キッパリとレティシアが断じる。


「ハルがいなかったら、あたしはあそこまで戦うことはできなかったわ。ハルのサポートがあったからこそなの」

「それは……」

「ハル、自分を卑下しないで。ハルは、すごくすごく強いわ。そして、ものすごーーーく、頼りになるの!」


 そんな風に思われていたなんて。

 思わぬ言葉に、ハルは思わずうるっと来てしまう。


「ねえ、ハル。私と一緒に冒険者にならない?」

「……」


 ハルは迷う。


 冒険者なんて、自分に務まるのだろうか?

 仮になれたとしても、レティシアの足を引っ張ってしまわないだろうか?

 そのことが、なによりも怖い。


 ただ……


 レティシアと一緒の冒険は、とても楽しそうだ。

 苦しいことはたくさんあるだろうけど、でも、楽しいこともたくさんあると思う。


「……僕で大丈夫かな?」

「ハルがいいの」


 レティシアは、ハルに手を差し出した。


「私と一緒に色々なところに行って、たくさん冒険をしましょう? 私達は、ずっと一緒よ、ハル」

「うん」


 ハルは、レティシアの手をとった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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