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223話 一緒にいると

「うぅ……」


 翌日。

 食堂で、みんなで一緒に朝食を食べるのだけど……


「どうしたの、ハル?」

「とても辛そうですが……」


 あれから、色々なことを考えてしまい、まったく寝ることができなかった。

 そのせいで、頭が重く、ふらふらしてしまう。

 パンを食べるのだけど、よく味がわからないくらいだ。


 みんなは、そんな俺を心配してくれていた。


「うぅ……もうしわけない」

「謝ることなんてありませんわ。それよりも、どうされたのですか?」

「うん、ちょっと……」


 クラウディアの問いかけに、ついつい言葉を濁してしまう。


 昨日のレティシアのこと。


 別に、隠すつもりはない。

 ただ、どう話していいか、どんな感情を乗せるべきか。

 俺自身が、まだ気持ちの整理ができていないため、うまく説明できる自信がない。


 突然現れて、思わぬ余波を撒き散らしていく。

 今も昔も、魔人になっても、そういうところは変わらないレティシアだった。


「なにかあったのならば、話してほしいのですが……」

「ハルさん。私達では頼りになりませんか?」

「師匠、自分がなんでもするっす!」

「ハル、元気だして」


 みんなの優しさがうれしい。

 でも、同時に辛い。


 はぁ……


 俺、こんなにみんなに心配をかけて。

 でも、素直に頼ることができなくて、情けないな。


「ごめん。情けないけど、相談したいとは思うんだけど……ただ、なんていうか、俺の中で考えがまとまっていなくて、どう話したらいいかわからないんだ」

「まとまっていなくても、構わないのです。ハルさまが思うように、思うまま、言葉を紡げばよろしいかと」

「ありがとう、ナイン」


 ナインはいつでも優しくサポート、フォローしてくれる。

 俺は主でもないのに、その対象に含まれている。

 彼女の優しさだろう。


 素直にうれしい、って思う。

 少しだけ落ち着くことができた。


「えっと……」


 話をまとめようとして……

 でも、まとまらない。


 俺にとって、レティシアのことは、とても大事なことだ。

 ついつい感情が乗ってしまうということは、よくあること。

 逆に、感情を消してしまうということもある。


 唐突すぎたせいか、どうにもこうにも平常ではいられない。

 だから、今の状態で話をすると、感情が大きく揺れてしまうことが予想できた。

 もしかしたら、みんなに八つ当たりのようなことをしてしまう可能性も……


 そう考えると、やっぱり今はダメだ、という結論になってしまう。


「……ごめん。話したくないわけじゃないんだけど、ただ、やっぱり、もう少し落ち着いてからというか、話したいこととかがまとまってからにしたいんだ」


 ぺこりと頭を下げる。


「ハルさん、頭なんて下げないでください。私は、なにも気にしていませんから」

「そうですわ。謝ることなんてありません」

「師匠でも悩むこと、あるっすねー」

「サナ、それはハルに失礼。おかしなハルでも、悩むことはあるよ」

「シルファさま、その言葉の方が、ハルさまに失礼ではないかと」

「おっと、つい本音が」

「あはは」


 レティシアのこと。

 レティシアの言葉。

 どう受け止めればいいか、まだわからないのだけど……


 でも、みんなと一緒にいると、心が落ち着いた。

 自然と笑顔になることができた。


「……」


 ただ、アリスはどこか難しい顔をしていた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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