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215話 打ち明けるべきこと

「……あれ?」


 黒い霧に飲み込まれたと思ったのだけど……

 しかし、なんともない。


 怪我をしているわけではないし、毒などの状態異常にかかっているわけでもない。

 精神的な異変は……

 今のところ、なんともないと思う。


 俺は、俺。

 ハル・トレイターだ。


「ハル、大丈夫!?」

「怪我はしていませんか!? 気分は大丈夫ですか!?」

「顔色は……大丈夫そうですわね。しかし、見えないところで異常が起きている可能性も……」


 みんな、ものすごく心配してくれた。

 あまりに慌てているものだから、逆に冷静になることができた。


「えっと……うん。俺は大丈夫。たぶんだけど、なんともないよ」

「本当に?」

「ハルさんは、すぐに無理をするので……」

「あまり信じられないですわ」


 俺の信用度って、いったい……


「でも、師匠は至って健康そうに見えるっす」

「そうだね。無理をしている感じはしないかな?」

「私見になりますが、特に問題はないように見えるのですが……」


 他のメンバーが、サポートのつもりなのかそう言ってくれた。

 感謝。

 おかげで、みんな、少しは落ち着いてくれた。


「結局、なにが起きたのかしら?」


 アリスの疑問に、みんな、小首を傾げた。


 ただ……

 俺は、なんとなくだけど予想できた。


 とはいえ、それが事実だった場合、かなり大変なことになる。

 なので、迂闊に口にすることはできない。


 まずは、確証を得るために、リリィとシノに会いに戻らないと。


「ルミエラ、アリエイル」

「「はい!」」


 二人は、やたらと緊張していた。

 というよりは、怖がっている……のかな?


 うーん……ますます、俺の推理が正しく思えてきた。


「地上に戻りたいんだけど、転移陣はある?」

「もちろん、あるのよ。帰ってくれるのかしら?」

「これ以上、ここに用はなさそうだからね」

「ほっ……」

「ただし。いたずらはほどほどにしておくこと。でないと、また戻ってくるから」

「わ、わかったのよ!?」


 ヒィ、と小さな悲鳴をあげるルミエラ。

 アリエイルも、顔色を青くしていた。


 さきほどまでと、態度が全然違う。

 渋々という感じだったのだけど、今は、俺を恐れているような感じだ。


 推理については、ひとまずパス。

 今は、帰還を優先しよう。


「それじゃあ、地上に案内してくれる?」

「了解なのよ」


 ……こうして、俺達は地上へ帰還した。




――――――――――




 予定よりも、かなり早く帰還することになったとはいえ、それなりに疲労は溜まっている。

 リリィとシノとの面会は後回しにして、まずは寮に戻り体を休めた。


 思っていた以上に疲れていたらしく、昼まで寝てしまった。

 それからごはんをいっぱい食べて、軽く休んで……

 みんなで一緒に、リリィとシノのところへ。


 行く前に、みんなで話し合う場を設けた。

 その内容は……俺が魔王ということ。


 これ以上隠しておくことはできないと思い、全部、打ち明けることにした。


「ハル、話っていうのは?」

「それよりも、シノのところに行かないっすか? 早くした方がいいんじゃないっすか」

「そうなんだけど……でも、それ以上に大事な話があって。今、話しておくべきだと思ったんだ」


 俺の真剣な顔に、みんなはごくりと息を飲む。


 そして……

 俺は、自分が魔王であること。

 悪魔……魔人のさらに上位の存在であるらしいことを打ち明けた。


「「「……」」」


 さすがに驚いた様子で、みんな、言葉が出ない様子だ。

 色々と考えているのか、思考をまとめているのか。

 それぞれ考えを巡らせている。


「ごめん、こんな大事なことを黙っていて……」

「ハルさんは……悪魔なのですか?」

「似たようなもの、みたい」

「だとしたら、聖女見習いである私は……ハルさんを……うぅ、そんなことは」

「お嬢さま、落ち着いてください」

「ごめんなさい、ナイン……」


 中でも、アンジュの混乱と動揺がひどい。

 聖女の使命は、迷う人々を導いて……

 そして、人の敵となる悪魔を討つこと。


 故に、動揺も大きいのだろう。


「……」


 空気が重い。

 俺も、なにも言うことができない。


 これ以上、隠しておくことはできなかった。

 それは、みんなに対する裏切りのような気がした。

 だから、全部を話した。


 でも……


 本当にそれで良かったのだろうか?

 正解だったのだろうか?


 これでパーティーが崩壊するようなことになれば、俺は、すごく後悔するだろう。

 だからといって、黙っていても後悔しただろう。


 結局……俺は、どうすればよかったのか?

 どうすることが、一番正しい道なのか。


 わからない。


「ねえ、ハル」


 長い沈黙の後、アリスがゆっくりと口を開いた。

 その口から語られるのは……

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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