表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

212/547

211話 私のことは気にしないで、という台詞を横取り

 そんなヤツに屈しない。

 それはつまり、人質であるルミエラのことは気にしないということ。


 そんなことを言われるとは思っていなかったらしく、ルミエラが目を丸くした。

 ついでに、ファントムの動きも止まる。

 やはり、ファントムはルミエラの指示で動いているようだ。


 言葉で命令を出しているのか、それとも、思うだけでコントロールが可能なのか……

 そこはよくわからないのだけど、予想外の展開に、ファントムの操作を忘れているようだ。


 ますますボロが出てきたのだけど……

 ひとまず、それについてはツッコミはしないで、話を進める。


「ルミエラは、誇り高い妖精だからね。魔物の言いなりになんてなりたくないよね」

「え? いや、あの……私、そんなことは一言も……」

「大丈夫。ルミエラのことは気にしないで、確実に、その魔物を倒してみせるから。そして、妖精の誇りを守ってみせるよ」

「え? え? え?」


 ルミエラの計画では……


 自分を人質にすることで、俺達の自由を奪う。

 そうして、命を奪うか物を奪うか……

 目的はよくわからないのだけど、好き勝手するつもりだったのだろう。


 でも、そうはさせない。

 ルミエラがなにかしら企んでいることは読めたので、こちらも好き勝手させてもらう。


「ちょ、ちょっと待った! 私、別に、コイツを無理に倒せなんて言ってないんだけど!?」

「うんうん、そうだよね。ソイツに脅されているから、本音は口にできないんだよね。でも、大丈夫。ルミエラの本心……誇りは伝わっているから」

「私の本心?」

「こんな魔物に利用されるくらいなら、いっそのこと、自分ごと討ち果たしてほしい……って」

「ぜんぜん思ってないんだけど!?」

「というわけで……いくよ!」


 右手に魔力を収束。

 空間を切り裂くための魔力の剣……フレアソードを使う。


「ちょっ……ま、マジで私ごとやるつもりなのよ!?」


 ルミエラは慌てていた。

 それはもう、ものすごく慌てていた。


 計画通りに進むことはなくて……

 あろうことか、自分も一緒に斬られてしまう展開になってしまう。

 慌てて当然か。


「慌てないで、大丈夫」

「そ、そうなのよね。私ごとやるなんて、冗談なのよね……」

「痛みはないように、一瞬で、きっちりと終わらせるから」

「本気だったのよ!?」


 ルミエラは、おもしろいくらいに慌てていた。

 裏の事情を推測しているこちらとしては、滑稽に見えて仕方ない。

 アリスなんかは、堪えきれない様子で、小さく吹き出していた。


 俺も笑ってしまいそうなのだけど……

 さすがに、そうなるとルミエラがこちらの意図に気がついてしまうかもしれない。


 しっかりと顔を引き締めつつ、ルミエラの尊い犠牲によってファントムとの戦いを終わらせる決意をした、という演技を続ける。


「じゃあ……いくよ」

「いかなくていいのよ!? っていうか、あんた達、ぼーっと見てないで、そこの人間を止めるのよ!」


 俺やアリスはどうしようもないと判断したらしく、ルミエラはアンジュ達に声を飛ばす。


「そう言われても……ハルさんのすることなら、なにも問題はないと思います。私は、ただ、そっと後ろからサポートするだけです」

「私は、お嬢さまの求めることを叶えるだけです」

「自分が代わりにやってもいいっすよ?」

「ハルがおかしなことをするのは、いつものこと」

「わたくしは、まあ……ハルさんを信じるだけですわ」


 みんな、自分は関係ないから、みたいな顔をする。

 というか……

 サナは、さりげなく俺のことをディスっていないだろうか?

 俺、師匠なんだよね? 泣くよ?


「それじゃあ、今度こそいくよ!」

「えぇ!?」


 炎の剣を手に、ルミエラとファントムに向けて駆け出した。


 止まらない俺を見て、ルミエラがことさらに焦る。

 あわあわと目をぐるぐると回して……


 そして、致命的なミスをやらかしてしまう。


「あ、あわわわ!? ふぁ、ファントム! 私を守るのよ!」


 ルミエラの命令を受けて、ファントムが動いた。

 迫りくる脅威……俺を排除しようと、その手に魔力を収束させて、こちらに向けるのだけど……


 しかし、遅い。


 ルミエラの判断が遅かったたため、ファントムの行動は、ワンテンポ遅れていた。

 しかも、曖昧な命令のせいで、明確な攻撃行動に移ることができないでいる。


 これなら敵じゃない。


 俺は、上半身を横に傾けることで、ファントムの攻撃を回避。

 代わりに、反撃を叩き込む。


「はぁ!」


 ザンッ!!!


 炎の剣がファントムを断ち切る。

 空間を切り裂く一撃だ。

 いかにファントムといえど、防ぐ術はない。


 致命的な一撃を叩き込まれたファントムは、苦悶に身をよじらせて……

 霧が晴れるように、宙に溶けて消滅した。


 あっけない最後だ。


「……さて」


 炎の剣はそのままに、ファントムを失ったルミエラを見る。


「ひぁ!?」

「今、ファントムに命令をしていたけど、どういうことかな?」

『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、

ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ