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210話 猿芝居

 ルミエラは、本当に人質にされたのか?

 あるいは、自作自演なのか?


 どちらにしても、向こうからコンタクトがあるはずだ。

 そう判断して、ここで待機。

 向こうが動くのを待つことにした。


 そうして、待つこと少し……

 空間がぐにゃりと歪んで、壁をすり抜けてファントムが現れた。


 ルミエラの姿はない。

 まあ、それもそうか。

 どちらのパターンでも、俺達の前にのこのこと顔を見せるわけにはいかないからな。


「……」


 ゆっくりとした動作で、ファントムは俺を指差した。

 くいくいと指を曲げる。


「かかってこいよ……っすか?」

「メタメタにしてやんよ、だと思うな」

「こちらへ来い、だと思うのですが……」


 サナとシルファがボケて……いや、たぶん天然だろう。

 それに対して、たらりと汗を流しつつ、クラウディアがツッコミを入れていた。


 それはともかく。


 ファントムの行動は、こちらの予想通り。

 ルミエラの自作自演にしろ、そうでないにしろ。

 彼女を連れ去ったからには、なにかしらの要求があるのは当然のこと。


 要求を伝える対象として、俺かアリスが選ばれるのではないか? と予想していた。

 間違っても、サナを相手に選ぶことはないと思うんだよね。


 理由?

 ……それはノーコメントで。


「ルミエラはどうしたんだ?」


 とりあえず……

 ルミエラを心配しているという体を装いつつ、誘われるまま前に出る。


「……」


 ファントムはなにも答えない。

 ただ、近くに来いと誘う。


 ファントムが人質を取り、なにかしらの要求をしたという記録はないはず。

 そんな知能はないはず。


 何者かが背後にいる。

 その可能性がますます高くなるのだけど……

 とはいえ、絶対と断言することもできないため、素直に従う。


 そうして、ファントムの手前まで近づいた。


 ファントムは満足そうに頷いた後、宙に魔法陣を展開した。


「ハル!?」

「大丈夫だよ」


 攻撃するつもりなら、とっくにしている。

 おそらくは……


「え? あ、なになに、どうなっているのー?」


 魔法陣からルミエラが現れた。

 ファントムが彼女を召喚したのだろう。


 あるいは、召喚されたように見せかけて、ルミエラが自分で転移した。


「……」


 ファントムは、いつでも握りつぶせるぞ、というような感じでルミエラを掴み、その様子をこちらに見せつけた。

 その上で、ルミエラになにかしら合図を送る。


「ハル、私を助けるのよ!」

「どういうこと?」

「コイツ、言うことに従わないと、このまま私を握りつぶすと言っているのよ! きゃー、こわーい」


 うん、黒確定。

 ファントムの背後にいるのは、間違いなくルミエラだ。

 たぶん、アリエイルも同じだろう。


 人質にされているのに、ルミエラに緊張感がまったくないとか。

 どうして、ファントムの言葉がわかるの? とか。

 タイミングが良すぎるとか。


 色々な疑問はあるものの……

 ルミエラが関わっていると確信した、その決定打は、今の召喚だ。


 ファントムは希少種ではあるが、そもそも魔法が使えない。

 希少種の中の変異種であれば、魔法が使える可能性はなくもないのだけど……

 それでも、召喚なんていう上級魔法を使えるなんて、あまりにも都合が良い。


 なので、ルミエラが黒幕と考える方が自然だ。


「その要求っていうのは?」

「自分に付いてこい、って言っているのよ。お願い。私、まだ死にたくないのよ。助けてーいやー」


 なんて猿芝居。

 というか、ルミエラは大根役者すぎないだろうか?

 演技の素人でも、もうちょっと良い芝居をすることができると思う。


 ルミエラに対する疑惑がますます深まっていく。

 ほぼほぼ黒幕と判断しても……

 というか、もう確定だろう。


 ちらりとアリスを見る。


「……うん」


 アリスも同じ考えらしく、事前の打ち合わせ通りやっちゃっていいわよ、と小さく頷いてみせた。


 よし、許可も出た。

 ならば、おもいきりやることにしよう。


「安心して、ルミエラ」

「じゃあ……」

「そんなヤツに屈しないから。ファントムを倒して、ちゃんと助けてあげる」

「……え?」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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