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206話 ファントム戦

 ボロ布を見にまとう骸骨が、ふわふわと宙に浮いている。

 その手に持つのは、湾曲した巨大な鎌。


 ファントムだ。


 死神としか思えないような姿は、見るものに恐怖を与える。

 なるほど。

 希少種らしく、それなりの威圧感を覚えた。


 ただ、魔人と比べると大したことないかな?

 フラウロスやマルファスを見ているせいか、希少種であるファントムもそれほどの脅威とは思えない。


「って、いけないいけない」


 魔人と比べると大したことがないとはいえ、それでも希少種。

 脅威はかなりのもので、油断なんてしたらいけない。


 しっかりしないと。

 気を引き締め直して、あらかじめ打ち合わせしておいた通りに行動する。


「サナ、頼んだよ」

「任せてくださいっす! うちゃー!」

「噛んでるわね……」

「不安ですわ……」


 掛け声でさえ噛むって、どういうこと?


 みんながジト目になる中、サナはまるで気にした様子はなく、ファントムに向けて突撃した。


 それはどうなの? と思うのだけど……

 ただ、サナらしいとも言える。

 それに無駄な緊張が解けた。


 俺達も、一斉に行動を開始。


 真正面からサナが突撃して、攻防を繰り広げて時間を稼いでくれていた。

 その間に散会して、ファントムを囲む。


 急造のためやや不安は残るものの……

 俺を含めて、みんな、空間系の攻撃方法を会得することができた。


 ただ、しっかりと集中して時間をかけないと失敗してしまう。

 なので、一番頑丈で、普通の魔物相手ならまず怪我はしないであろうサナが囮に。

 その間に、俺達は準備をして一気に叩く……という作戦だ。


 シンプルだけど、それ故に阻害される恐れはない。

 それに、効果は抜群だ。


「いくわよっ、ディメンションスラッシュ!」


 まず最初に、アリスが攻撃をしかけた。

 くるっと回転しつつ、その勢いを剣に乗せて、斜めに切り払う。


 通常攻撃を無効化してしまうファントムは、己の防御力に絶対の自身を持つ故に、防御、回避行動を取ることはないと言われている。

 それでも、希少種だけあって頭は悪くない。

 生存本能も高い。


 アリスの攻撃に嫌なものを感じたのだろう。

 サナへの攻撃を中断して、アリスの攻撃を回避することに専念したらしく、大きく宙へ舞い上がる。


 しかし、それは予想済み。


「ホワイトウォール!」


 アンジュの魔法。

 ファントムの動きを阻害するかのように、宙に薄い白い壁が出現した。


 アンジュは聖女なので、攻撃魔法は得意じゃない。

 代わりに、回復や防御、補助魔法はかなり上手だ。


 彼女が使用したのは、一種の結界だ。

 空間を強引に捻じ曲げて、脱出不可能な壁を作り出してしまう。


 逃亡を阻止するだけではなくて、位置をうまく調整すれば盾としても機能する。

 なかなかに強力な魔法だ。


「ッ!?」


 動きを阻害されたファントムは、初めて動揺するような仕草を見せた。

 アリスの剣技とアンジュの魔法……

 今までにない相手と認識したらしい。


 警戒するファントム。

 どうにかして距離をとろうとするが、アンジュの結界は脱出不可能。

 いくらファントムでも、空間を乗り越えることはできない。

 可能とする者がいるなら、自由自在に空間転移を使える者だけだろうけど……

 そんな能力は、ファントムは持たない。


「というわけで、次はシルファの番だね」


 さすがというべきか。

 いつの間にかシルファがファントムの懐に潜り込んでいた。


 ファントムが笑った……ような気がした。

 素手のシルファは脅威ではないと判断したのだろう。


 でも、それは大きな間違いだ。


「空破脚っ!」

「ッッッ!?!?!?」


 シルファは素早い動きで地面に手をついて逆さ立ちになり、独楽のように回転。

 鋭い蹴撃を繰り出して、空間を蹴り削る。


 こんな技を使えるなんて、ファントムは思ってもいなかっただろう。

 うん、俺達も思っていなかった。

 初めて見た時は、目を丸くして、しばらく動けなかったよ。


 ファントムも同じくらいの衝撃を受けた様子。

 そして侮っていたせいか、回避が遅れ、まともに直撃した。


 キィイイインッ! という耳鳴り。

 おそらくは、ファントムの悲鳴なのだろう。


 着実にダメージを与えている。

 そのことを確信したシルファは、さらに攻撃を叩き込み……

 ナインも動いた。


 スカートから双剣を取り出して、それぞれを投擲する。

 ナインはメイドなので、さすがに空間を操作する術は持っていない。

 会得も無理だった。


 ただ、ファントムはそれがわからない。

 アンジュとシルファができたのだから、ナインもできるのでは? と警戒したらしく、双剣を避けようと跳ぶ。

 しかし、それは悪手だ。


 ナインは絶妙な位置に双剣を投擲することで、ファントムの動きを思い通りの方へ誘導したのだ。

 ファントム自身も、そうさせられたと気づかないほどの妙技。

 空間を操作できなくても、ナインは十分に強い。


 そして、ファントムが跳んだ先に待ち構えているのは……


「ハルさん、いきますわよ!」

「うん、オッケー!」


 火炎魔法剣、フレアソード。

 雷撃魔法剣、ライトニングソード。


 俺とクラウディアは、それぞれ、炎の剣と雷の剣を生成した。


「「せーのっ!!!」」


 同時に叩き込む。

 炎と雷が、空間ごとファントムを切り裂く。


「……!!!?」


 そんなバカな!?

 というような感じで悶つつ、ファントムは消滅した。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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