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205話 妖精の習性

 空間操作のコツを掴んだものの、習得したわけじゃない。

 完璧なコントロールを得るためには、さらに練習を積み重ねる必要があるだろう。


 具体的にどれくらいか、それはわからないのだけど……

 一日二日で終わるものじゃない。


 俺も、未だに完成していないし……

 たぶん、一ヶ月以上はかかると思う。


 でも、それだけの間、待つことはできない。

 ファントムの方から襲ってくるだろう。


 なので、討伐に出ることにした。

 やや不安は残るものの……

 ある程度、空間に干渉することができるから、ダメージは与えられると思う。


「ここなのよ」


 ルミエラの案内で、十五層にやってきた。

 転移陣を利用したので、あっという間だ。


「十五層にファントムの住処が?」

「それはわからないのよ。ただ、ヤツの目撃情報は、この階層が一番多いのよ」

「なるほど」

「それはいいんだけど……ルミエラ達妖精は、どうして、こんな階層まで足を運ぶの?」


 アリスが不思議そうに言い、俺も違和感に気がついた。


 目撃情報が多いということは、それなりに足を運んでいるはず。

 確かに、謎だ。


「そういえば、最下層に繋がる転移陣もあるんですよね?」

「ということは、最下層にも足を運んだ……ということになりますね」

「自分、妖精はそこまで強いイメージないっすけど、ダンジョン内でそんな活発に活動できるものなんっすか?」

「……」


 まずい、というような感じで、ルミエラが目を逸らす。


 怪しい。

 やましいことがあります、と言っているような態度で、とても怪しい。


「うーん……」


 ふと、思う。


 なんか……

 全部、ルミエラやアリエイル達の良いように事態が進行していないだろうか?


 この広いダンジョンで、偶然、俺達と出会い。

 偶然、利害の関係が一致して。

 たまたま、行動を共にするようになる。


 なんだろう……?

 考えすぎなのかもしれないけど、でも、ちょっとした違和感が残る。


「ハル?」

「え?」

「どうしたの? なにか、難しい顔をしているけど」

「……ううん、なんでもないよ」


 自分でも考えがまとまっていないため、まだ表にすることはためらわれた。


「それで……ルミエラ、なんで、あちらこちらで活動しているの?」

「……そんなこと、当たり前のことなのよ。私達妖精は、食料と魔力、両方を得ないと生きていけないのよ。だから、魔力を得るために、あちらこちらを探索する必要があるのよ」

「そっか」


 おかしなことは言っていない……か。

 でも、違和感は消えない。


 うーん……気にしすぎなのか。

 それとも……


「ついたのよ」


 さらに歩くこと五分ほど。

 ダンジョン内なのに、たくさんの植物が自生している広間に到着した。


「ここは……」

「私達は、ここで主に食料を集めているのよ。でも、見ての通り、視界が悪いのよ。それに乗じて、ファントムが襲ってくることが多いのよ」

「なるほど」


 クモの巣と似たようなものかな?

 自分に有利な場所で獲物を待ち構える。


 こんなところに足を運びたくないけど、しかし、そうしないと食料を得ることができない。

 妖精達も大変なのだろう。


「えっと……いるね」

「うん、いるね」


 俺がそう言うと、シルファが追随した。

 彼女は勘が鋭いから、なんとなく、ファントムの居場所がわかるのだろう。


「みんな、注意して」

「わかりましたわ」

「シルファ、ファントムの位置は特定できる? 俺は、ちょっと曖昧で、この辺りにいることしかわからなくて」

「うーん……シルファも、ハッキリした場所はわからないかな。ただ、なんとなくなら」


 シルファは、右斜め前を指差した。


「あっちの方から、嫌な感じがするよ」

「よし、決まりだね」

「ちょ、ちょっと待つのかしら」


 慌てた様子で、ルミエラが声をかけてくる。


「あっちにファントムがいると、なぜわかるのかしら?」

「んー……勘?」

「勘、って……そ、そんなもので決めてしまっていいのかしら? もう少し、慎重になるべきではないかしら?」

「大丈夫」


 きっぱりと言い切る。


 こう言うのはなんだけど……

 シルファって、野生児っぽいところがあるんだよね。

 サナに似ている感じ。


 そんなシルファの勘なら信用することができる。


「きっと、こっちにいるよ……ほら」


 シルファの勘が正しいことを証明するかのように、空間がゆらぎ、ファントムが現れた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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