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193話 最深部に眠るものは?

 クラウディアの一件で図書館ダンジョンに潜る機会があった。

 結果、それは無駄になったのだけど……


 ただ、図書館ダンジョンに触れることができたので、まったくの無駄じゃない。


 あのダンジョンは……とんでもない。

 レティシアと旅をする中、一応、色々なダンジョンの探索に関わってきたけど……

 それらとレベルが段違いだ。


 魔物の強さ。

 探索の難しさ。

 トラップの極悪さ。


 その全てを体験したわけじゃないけど……

 一端に触れることで、相当に危ないものだと理解することができた。


 そんなダンジョンを、気軽に踏破してほしい、とか言われても。

 そもそも、踏破することの意味は?

 最深部になにが隠されている?


「どうして、図書館ダンジョンを踏破しないといけないのか、教えてほしいんだけど」

「そうだね、いいよ」

「え? 教えてくれるの?」

「そりゃ、教えるよー。なにも教えないで、やることはやってね、はさすがに都合良すぎるからねえ」


 ちょっと意外だ。

 魔人というからには、もっとこう、理不尽なことをして当たり前、というイメージがあったんだけど……


 うーん?

 もしかして、実は良い人?

 話せばわかり合うことができる?


「ハル。そうやって人を信じることができるところは長所だと思うけど、だからといって、簡単に信じたらダメよ。まずは、きちんと考えて、それから見定めること!」


 はっ!?


 アリスに説教される光景が思い浮かんだ。

 俺の常識が足りないから、合間に色々なことを教えてもらっているんだけど……

 うん、正解だったかもしれない。

 今の話を聞いていなければ、簡単にリリィのことを信じていたかも。


「図書館ダンジョンを踏破してほしい、っていうことは、最深部になにかがある、っていうことだよね」

「うんうん、話が早くて、お姉さん助かるかなー」

「……お姉さんって歳でもないでしょうに」


 ガンッ!


 リリィの鉄拳が炸裂してシノがノックアウトされる。

 ……見なかったことにしよう。

 それに、今のはシノが悪い気がする。


「最深部には、いったいなにが……?」

「魔水晶だよー」

「なっ」


 とても大事なことを気軽に言われてしまう。


「……そんなものを、どうするつもり?」

「んー、悪いことには使わないよ?」


 ものすごく怪しい。

 リリィが魔水晶を手に入れたら、魔人を復活させるのでは? と考えるのが普通だろう。

 それは、どう考えても『悪いこと』だ。


 ただ、そんな俺の考えを読んだらしく、リリィがふにゃりと笑う。

 こちらの警戒を解くかのような、のんびりとした優しい笑みだ。


「だいじょーぶ。悪いようにはしないから」

「なら、具体的にどうするのか教えて」

「んー……まあ、いっか」

「魔水晶を手に入れて、どうするの?」

「食べさせる」

「は?」


 今、なんて?


「魔人って、魔人を食べることができるんだよねー」

「はあ……」


 突然の話に理解が追いつけない。


「共食いとはちょっと違うんだけど、んー……相手の魔力を吸収する、みたいな? そうやって、強くなることができるんだ」

「……仲間なのに、共食いをするの?」

「それ、間違い」


 どれ?


「魔人は、とある方……まあ、キミの中の魔王さまの部下ではあるんだけど、魔人同士の仲が良いとは限らないんだよねー。すごく仲の良い魔人もいれば、顔を合わせれば殺し合いを始めちゃうほどに仲の悪い魔人もいる」

「それは……なんていうか、意外かも」

「そう?」

「いや、そうでもないのかな……?」


 リリィは、とてもマイペースなように見えるから、特定の魔人とはソリが合わなそうだ。

 フラウロスもマルファスも癖があったし……

 それらのことを考えると、仲が悪い魔人がいたとしても不思議じゃない。


「あれ? ちょっと待って」


 食べる、じゃなくて、食べさせるって言ったよね?


「リリィが食べるんじゃないの?」

「違うよ?」

「なら、誰が?」

「んー……秘密♪」


 肝心なところは教えてくれないみたいだ。


 さて……どうするか?

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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