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189話 ナインの過去

 私に親の記憶はありません。


 物心ついた時には、すでに一人で……

 浮浪児として、路地裏などで生活をしていました。


 ゴミを漁り、雨水をすすり、橋の下で寝て……

 そんな、ただ生きているだけの時間を過ごしていました。


 希望はありません。

 夢もありません。


 命があるから、生きるだけ。

 死ぬのが怖いから、生きるだけ。

 ただ、それだけのこと。


 生きているけど、でも、生きていない。

 そんな日々が続いていました。


 そんなある日のこと……


 私の運命が変わる事件が起きました。


 いつものようにゴミを漁っていると、見知らぬ女の子が姿を見せたのです。

 路地裏にふさわしくない綺麗な格好をしていました。


 その頃の私は、貴族という概念を知らなかったため、ひどく驚いた覚えがあります。

 この子は誰だろう?

 私とはぜんぜん違う。

 もしかして、人間じゃない?


 そんなことすら考えました。


「うぅ……ここは、どこでしょう?」


 女の子は涙目でした。


 迷子になったんだろうな、というのは、なんとなくわかりました。


「……ねえ」

「な、なんですか!?」

「もしかして、迷子?」

「は、はい……うぅ」


 私が声をかけると、女の子はビクビクとしつつも、涙目で頷きました。

 一人じゃないことに安心していたのかもしれません。


 初めて見る同い年くらいの女の子。

 私は興味を覚えて、さらに言葉を続けました。


「……案内しようか?」

「えっ、いいんですか?」

「場所によるけど……」

「えっと、えっと……私のおうちは、りょーしゅ、っていうお仕事をしているおうちです」

「りょーしゅ?」


 その時の私は、領主という概念も知りませんでした。

 ただ、女の子の家は大きいところだろうと感じて、それらしい家をしらみつぶしに探すことにしました。


 そして、一時間後……


「わぁ、ここ! 私のおうち、ここです!」


 なんとか、女の子をおうちに返すことに成功しました。


 女の子はとてもうれしそうで、笑顔いっぱいです。

 それを見ていると、不思議と私の胸も温かくなりました。


 この笑顔をもっと見ていたい。

 そんなことを思いました。


「ありがとうございます!」

「……どういたしまして」

「私、アンジュっていいます。あなたのお名前は?」

「ナイン、だけど……」

「ナインですか……」


 女の子は考えるような仕草を取り……

 ややあって、にっこりと太陽のように笑います。


「よければ、私のお友達になってくれませんか?」

「え……?」

「私、ナインとなら、ずっとずっと仲良くやっていけると思うんです。だから、お友達になってほしいです。その……どうでしょうか?」

「えっと、その……」


 そんなことを言われたのは初めてでした。

 だから、戸惑い、迷い、困惑しました。


 でも、私も女の子に惹かれていました。

 彼女の言葉と同じく、一緒にいたいと思った。


「……よろしく」


 私は彼女の手を取った。


 その後……


 私は色々な教育を受けた後、女の子……お嬢さま専属のメイドとなった。

 あの時、あの日。

 お嬢さまに出会わなければ、私はどうなっていたか。

 手を差し伸べてくれなければ、どうなっていたか。


 たぶん、生きてはいないだろう。


 だから恩を返さないといけない。

 そして、約束を果たさないといけない。


 ずっと一緒にいよう……という、約束をずっとずっと。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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