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185話 世界を知る

「俺は……世界を知りたい」


 自然とそんな言葉がこぼれた。


 シノが目を丸くする。

 ただ、すぐに興味深そうな顔になり、こちらに尋ねてくる。


「なんで、こんなことになっているのか? なんで、悪魔や魔人というものが存在するのか? なんで、俺が魔王の生まれ変わりなのか? 考えれば考えるほど、色々な謎が出てくるんだ」

「……それで?」

「今の俺は、知らないことが多すぎるから……だから、全部を知りたい。世界のことを知りたい」


 その上で、最適な行動を導き出して……

 最善の結果をつかみ取る。


 そのためには、まずは知らないといけない。


「なるほどね」


 俺の答えを聞いたシノは、どことなく満足そうに頷いた。


 合格……ということでいいのだろうか?


「悪くない答えだね」

「認めてくれるの?」

「僕は好きな答えだよ? まあ、見方を変えると、身勝手極まりない考えだけどね」


 それはそうだ。

 俺の都合で周囲をかき乱すようなものだ。

 言ってしまえば、自己満足でしかない。

 世界のために、という信念を持つ人に比べたら雲泥の差だ。


 それでも俺は。


 なにも知らないせいで、幼馴染が変貌するのを黙って見るだけなんてしたくない。

 なにも知らないせいで、大事な人達が危険に晒したくない。


 知らないといけないんだ。

 この世界の仕組みを。

 この世界の在り方を。


「いいよ、面白そうじゃないか」


 シノがニヤリと笑う。


「最初は、キミの質問に答えるだけのつもりだったけど……うん、気が変わったよ。僕にできることがあれば、協力しようじゃないか」

「え、本当に?」

「なんだい、その意外そうな顔は?」

「いや、だって……」


 シノは、こういう問題に関しては、一歩引いたスタンスを取ると思っていた。

 それは性格的な問題もあるだろうし……

 あと、主の許可が得られないのではないかと。


 その辺りを尋ねてみると、


「んー……まあ確かに、主の許可がないとダメなんだよね」


 シノは、途端に苦い顔に。


「協力すると言ったものの、キミが言う通り、主の許可がなければならない。もしもダメと言われたら、その時は、悪いけど前言撤回させてもらうよ。キミのことはおもしろいと思うものの、でも、主に逆らってまで協力したいとは思わないからね。悪いけど、僕は僕が大事なんだ」

「うん、それでいいと思うよ。さすがに、そこまでの無茶をしてまで、俺に協力してほしいなんて言えないし」

「そう言ってもらえると助かるよ。でもまあ、たぶん、大丈夫だと思うけどね。僕の主は、どちらかというと優しい方だ。キミの決意を知れば許可を出してくれるだろうし、むしろ、主も協力してくれるかもしれない」


 そうなるといいな。

 シノだけじゃなくて、魔人そのものの助力が得られるというのは、かなり助かる。


「それで……キミの望みは、さらなる知識を求める、っていうことでいいのかな?」

「そうだね。ひとまず、俺のことはだいたい理解できたから……次は、魔人について知りたい」


 悪魔の魂が人に取り憑いた。

 それが魔人。


 しかし、その目的は?

 どれだけの数がいて、どんな活動をしている?

 結界を破る方法は?


 知らないといけないことはたくさんある。


「それらの疑問について、だいたいの答えを出すことはできるよ」

「本当?」

「ただ、内容が内容だからね。主の許可がないとダメかな」

「結局、話はそこに戻るんだね」

「主にコンタクトをとって、話をしてみるよ。さっきも言ったけど、うまくいけば全面的な協力を得られるかもしれない。ダメだとしても、全却下ということはないだろうね。ある程度の情報は開示されるはず」

「そうなることを期待するよ」

「時間は……うーん、ちょっとなんとも言えないね。あの方は、あちらこちらを飛び回っているからね。ホント、なにをしているんだか」


 そう言うシノは、どことなく呆れた様子だった。


 従者に呆れられてしまうなんて……

 シノの主って、いったいどんな人なのだろう?


「まあ……進展があるまで、最短で一週間。最長で一ヶ月、っていうところかな?」

「けっこうアバウトだね」

「悪いね。こればかりは、本当に読めなくて。まあ、待っている間、学院の施設を自由に使うといい。図書館ダンジョンに潜れば、色々な情報を得ることができるよ」


 それはありがたい。


 今は、一つでも多くの知識を身に着けておきたいし……

 それと、今開発中の魔法を完成させるための情報も欲しい。


 なので、いずれまた、図書館ダンジョンには潜りたいと思っていたんだよね。


「それじゃあ、話はこんなところかな?」

「うん、そうだね」


 今できる話は、これで……


「あ、一つだけ追加でいいかな?」


 ふと思い出して口を開いた。


「ん? なんだい?」

「魔法学院に……というよりは、学術都市に、他の魔人はいる?」

「ノーコメント」


 シノはにっこりと答えた。


「そういうのは、やっぱり主の許可がないと答えられないかな」

「了解」

「ただ……」


 明後日の方向を見つつ、独り言のように言う。


「ここにいる間は、もう厄介なことは起きないと思うよ……とだけは、言っておこうか」

「ありがとう、シノ」


 言い換えるのなら……


 マルファスのように、他の魔人が来てもちょっかいは出させない、という意味なのだろう。

 シノの主がやってきたら、どうなるかはわからないけど……


 最低でも、今は、シノは味方でいてくれるみたいだ。

 そのことは助かるし、本当にうれしいと思う。


 俺は、一人じゃない。

 仲間だけじゃなくて、色々な人に助けられている。

 そのことを改めて実感することができた。


「よしっ、がんばろう!」


 やる気を出して、俺は前を向くのだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 水曜日のシリウスを見て、約一か月半、 原作を見させてもらいました。 なるほど、ハルの力の正体、レティシアの豹変理由などなど、 一言でいえば、面白い展開になってきた。 と、いうことですので…
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