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166話 予定外の予定外

 予定の時間を一時間過ぎても、クラウディアが報告に現れない。


 三十分なら誤差の範囲内かもしれないけど……

 一時間ともなると、さすがに気にせずにはいられない。

 なにかトラブルが起きたと考えるのが妥当だろう。


 そう思い、みんなでクラウディアの部屋を訪ねたのだけど……


「……どういうことだろう?」


 部屋は空っぽで誰もいない。


 当初の予定なら、アインを操ることに成功したクラウディアが迎えてくれるはずなのだけど……

 もしも失敗したとしても、それはそれで報告をしてくれるはず。


 誰もいないで……

 まったくの反応なしというのは想定外だ。


「くんくん、くんくん……師匠、誰かが隠れているとか、そういう気配はしないっす。あと、さっきまで人がいたとか、そういう感じもしないっす」

「サナは犬なのかな?」

「シルファ、自分をわんころと一緒にしないでほしいっす。自分は誇り高いドラゴンっす!」

「行動は犬そのものでしたが、それは指摘しない方がいいのでしょうね」

「うーん?」


 この日に備えて、色々なパターンを想定してきたのだけど……

 これは予想外だ。

 神隠しに遭ったかのように姿を消してしまうなんて、考えていない。


 争った跡があるのなら、なにかしらの手段を使い、アインがクラウディアを拉致したと考えられるんだけど……

 でも、そんなこともない。

 部屋は綺麗なものだ。


「どういうことなのでしょう?」

「よくわからないけど……なにか、イヤな予感がする」


 モヤモヤとした、漠然とした不安が胸に広がる。


 いったい、なにが起きているのか?

 今すぐに確かめないと、なにかが手遅れになるような……

 そんな予感がした。


「そうね、ちょっと調べてみましょうか?」

「できるの?」

「ヒカリの力を借りてみるわ。出ておいで」


 アリスが使役する精霊、ヒカリが現れた。


 猫のような感じで、ヒカリはご主人さまであるアリスにじゃれつく。

 そうして満足した後、ふわふわと浮きながら、ゆっくりと部屋の中を飛んで回る。


「ヒカリはなにをしているの?」

「魔力の反応を調べてもらっているのよ。クラウディアになにかあったのなら、なにかしらの魔法を使われた可能性もあるから」

「なるほど」


 待つこと少し。

 ヒカリは若干慌てた様子でアリスのところへ戻る。


「どうしたの、なにかわかった?」

「……! ……!!」

「そう、そう……なるほど。うん、ありがとうね」


 アリスは優しくヒカリの頭を撫でる。

 ヒカリはうれしそうに宙で一回転すると、そのまま、ぽんっというような感じで消えた。


「アリス、どうだった?」

「……まずいことになったかもしれないわ」


 アリスの話によると……


 俺達が想定していた通り、クラウディアの部屋をアインが訪ねてきたらしい。

 その目的は、政略結婚のため、強引にクラウディアを連れ帰ること。


 でも、その対策はバッチリ。

 罠も張り、天使の鈴でアインを洗脳すればいいのだけど……


 しかし、それは不発に終わる。

 なぜか天使の鈴を使用してもアインを洗脳することができず、逆に、奪われてクラウディアが洗脳されてしまったという。

 そして、クラウディアはアインに連れられて部屋の外へ……


 以上が、一部始終らしい。

 ヒカリはとても優れた精霊らしく、魔力の残滓を探り、遡ることで、多少ならば過去の映像を見ることができるのだとか。


 その能力に驚くのだけど……

 それよりも別に、今の話は本当なのか、と驚いてしまう。


「そんな、クラウディアさんが逆に洗脳されてしまうなんて……」

「不躾なことをお聞きしますが、その情報は確かなのでしょうか?」

「あたしは間違いないと思っているわ。ヒカリはとても優秀な子だもの」

「そう、ですね……申しわけありません。アリスさまが大事にされているヒカリさまを疑うような発言、どうかお許しください」

「ううん、気にしないで。ナインの懸念ももっともだと思うから」

「でも、どうしてクラウディアは逆に洗脳されたのかな? シルファは魔法を使えないからよくわからないけど、そこがちょっと謎」

「んー……これは根拠もない自分の勘っすけど、もしかしたら、アインはカウンターアイテムを持ってたのかもしれないっすね」


 カウンターアイテム?

 なんだろう、それは?


 俺の疑問を察した様子で、サナが得意顔で説明する。


「魔道具の効果を無効、あるいは反射する、特別なアイテムのことっすよ。色々な種類があって、色々な効果があるから、まあ、細かい説明は省くっすけど……基本的に、敵が持つ魔道具を無力化して、その効果を跳ね返す。故に、カウンターアイテム、って呼ばれているっす」

「なるほど」

「サナ、やればできる子っぽいね」

「シルファのその感想、なんか傷つくっす……」


 師匠はそんなこと言わないっすよね? というような感じで、サナがこちらを見た。

 ついつい視線を逸らしてしまう。


 言えない。

 シルファと同じようなことを思ったなんて、言えない。


「そ、それよりも」

「師匠!? ごまかしたっすか!?」


 サナがショックを受けた顔になるけど、でも、今は本当に無駄話をしている時間はない。


「そういうことなら、クラウディアが危ないわね」

「はい。今頃、どのようなひどいことをされているか……とても心配です」

「すぐに追いかけたいところだけど……アリス。ヒカリに頼んで、クラウディアがどこに連れていかれたか調べることはできない?」

「ごめん、それは難しいかも。今の過去視で、けっこうな力を使っちゃったから、すぐにっていうのはなかなか……ごめんね」

「そっか、うん。仕方ないよ。謝ることはないよ」


 まずいな……

 色々なパターンを想定してきたものの、コレは予定外中の予定外だ。


 天使の鈴を使った策を構築してきた。

 その前提が崩れてしまったため、想定外すぎる展開に。


 これは、俺のミスだな。

 作戦を成功させることしか考えてなくて、失敗した時のことを考えるのを疎かにしていた。

 まったく考えていない、というわけじゃないんだけど……

 でも、ありとあらゆる可能性を考えて、今回のような事態も想定しておくべきだった。


 ただ、クラウディアが連れ去られてさほど時間は経っていないはずだから、まだ巻き返しは可能なはず。

 どうする?

 考えろ、ハル・トレイター。


「……よし。ひとまず、領主の屋敷へ向かおう」


 クラウディアが連れて行かれたか、それはわからない。

 ただ、なにかしらの手がかりを得ることはできるだろう。


 でも、無策で挑むわけにはいかない。


「シルファ、ちょっとおつかいを頼まれてくれないかな?」

「うん、いいよ。シルファはなにをしたらいいかな?」

「シノを呼んできて」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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