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160話 耐性

 俺が放った魔法は石像を直撃するが、しかし、ダメージを与えた様子はない。

 油が弾かれるように……

 石の体に触れた瞬間、四散してしまう。


「うそ……ハルの魔法を弾くなんて」

「あの石像、魔人並の防御力を備えているのでしょうか……?」


 アリスとアンジュが唖然として、


「魔人?」


 二人の口から出てきた聞き慣れない単語に、クラウディアが小首を傾げた。


「なんでもない、なんでもない。気にしないで」

「気になりますわ……なにを隠していらっしゃいますの?」

「えっと……そ、それよりも、今はあの石像の攻略法を考えないと」

「ごまかし方が下手ですわね……やれやれ。ですが、その通りなので、聞かなかったことにしておきますわ」


 クラウディアはため息をこぼしつつ、貸し一つ、というような感じの笑みを浮かべた。


 それから思考を切り替えた様子で、難しい顔に。


「火魔法に対する耐性があるのでしょうか? あるいは、全部の魔法に対する耐性が……?」

「試してみようか」

「え?」

「フリーズ!」


 今度は、初級氷魔法を唱えた。


 氷の弾丸が高速で翔ける。

 そのまま石像を貫くかと思われたのだけど……


 パァンッ!


 さきほどと同じような乾いた音を立てて、氷の弾丸が消失した。


「また消えました……」

「今、よく見てたからわかったけど、直撃する寸前に消えていたわよね? っていうことは、耐性があるんじゃなくて、結界でも展開しているのかしら?」

「その可能性が高いと思われますが……その前に、一つ」


 クラウディアのジト目がこちらに。


「いきなり攻撃するなんて、なにを考えているのですか!?」

「え? いや、その……」

「一度目は反応しなくても、次撃でカウンターをしかけてくるという可能性がありますわ。あるいは、攻撃を重ねることで本格的な排除行動に移る可能性も! それなのに、今のような軽率な行動をとるなんて……まったく、なにを考えていらっしゃいますの!?」

「えっと……ご、ごめんなさい……」


 まったくもってその通りなので、なに一つ反論できない。

 ただただ、頭を下げることしかできなかった。


「まあまあ、ハルも反省してるから、その辺で」

「……アリスさん。あなたが、そのように甘やかしていては、ハルさまのためになりませんわ。時に厳しく、指導することも女性の務めですわ」

「それはわかっているんだけど……うん。これまでのハルのことを考えると、あたしは、とことんハルを甘やかしたいかな、って」

「これまで?」

「大丈夫。ハルはしっかりと反省しているし、同じ失敗は、二度、繰り返さないわ」

「気をつけるよ」

「……まあ、そこまで言うのでしたら」


 渋々という様子ではあるが、クラウディアが引き下がる。


 うーん……確かに、今のは俺の失敗だ。

 もっと後先のことを考えるべきだった。

 これ以上、クラウディアを失望させることのないように、しっかりと考えて、そして、がんばろう。


「話を戻しますが……魔法が直撃する寸前に消失したというアリスさんの意見に、私も賛成です。私も、そのように見えました」

「ええ。その点は、わたくしも賛成ですわ。ただ……」

「仕組みが不明なんだよね」


 魔法耐性を持つ魔物は希少だけど、いないこともないらしい。

 学院の書物に記載されていた。


 ただ、直前で弾いてしまうなんて、聞いたことがない。


 いや……そうでもないのかな?

 魔人も似たような防御手段を有していた。


 もしかして、あの石像……魔人と似た能力を持っているのかな?

 だとしたら厄介極まりない。

 まだ魔人の攻略手段を見つけていないのに、それと似た能力を持つ敵を相手にするなんて……どうにかして避けて通るしかないのかな?


「魔法がダメなら、物理攻撃はどうなのかしら?」

「それは……どうなのでしょう?」

「試してみる価値はあるね。いい?」

「ええ、構いませんわ」

「やってみましょう」


 みんなの意見が一致したところで、アリスが前に出た。

 背中から短弓を取り出して、矢をセット。

 しっかりと狙いを定めて……放つ!


 ヒュンッ!


 空気を裂くようにして飛ぶ矢は、なにものにも阻まれることなく、石像を傷つける。


「やりました!」

「どうやら、物理攻撃を防ぐことはできないみたいですわね」

「でも……」


 ほんの少し、小さな傷をつけただけ。

 巨大な石像を倒すとなると、どれだけの攻撃を与えればいいのか?


 当然、敵はカカシじゃない。

 近づけば反撃もしてくるだろう。


 物理オンリーの接近戦となると、かなり厳しい戦いになりそうだ。


「クラウディア、物理攻撃は得意?」

「……正直なところ、不得意ですわ。わたくしは、魔法を極めるために研鑽を積んでいて……職業も、魔法使いですから」

「すみません、私も……」

「謝らないで。俺も、どちらかというと魔法が専門だから、アイツの相手は難しいから……」


 自然と、みんなの視線がアリスに集中する。


「そういえば、このメンバーだと、物理担当はあたしだけね」

「アリス、やれそう? もちろん、俺達も最大限のサポートをするけど……」

「そうね……」


 アリスは、行く手を阻む石像を見て、


「アレ、試してみましょうか」


 不敵な笑みと共に、そんな台詞を口にした。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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