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159話 守護者

「次の角を右へ……それから、まっすぐ五百メートル。そこに、魔道具の反応がありますわ」


 探索を続けること二時間。

 ようやく目的地が近づいてきたらしい。


 それにしても、クラウディアの探知魔法は優秀だ。

 時間はかかったものの、ある程度の場所を特定してくれる。


 もしも探知魔法がなければ、延々と探していたかもしれない。


「それにしても……」

「どうしたの、アリス?」

「これだけの本、いったい、どこから集めてきたのかしら?」


 アリスの疑問ももっともだ。

 壁も床も天井も、全てが本。

 本に埋もれているような感じで、ちょっとめまいすら覚えてしまう。


 総数で何冊あるのだろうか?

 一千万……いや、軽く億は超えているかもしれない。


「図書館ダンジョンにある本は、数千年前から収集されていたと聞きますわ。そして、今もなお収集され続けて……その数は、それこそ無限に等しいのではないかと」


 クラウディアが、どこか誇らしげに言う。


 魔法学院のことを、とても大事に想っているのだろう。

 言葉の節々からそのことが伝わってくる。


 クラウディアにとって、魔法学院は第二の実家なのかもしれないな。

 それだけの思い出がある場所に留まる権利……なんとしても、勝ち取らないと。


「さあ、あとはまっすぐ進むだけ……です、わ……?」


 幅三十メートルはありそうな巨大な通路に出た。

 奥に扉が見える。

 もしかして、宝物庫の入り口だろうか?


 しかし、その手前に人型の石像が。

 見上げるほどに大きい。

 十メートルくらいあるのでは?


「……ハルさん」

「……なに?」

「……わたくし、とってもイヤな予感がしますの」

「……奇遇だね、俺もイヤな予感がするよ」


 そんな言葉を交わした直後、


「ガガガッ」


 石像の瞳が光り、その巨体が動き出した。


「「「「動いた!?」」」」

「ゴォ!!!」


 石像は床を踏み鳴らすようにして、こちらに近づいてきた。

 その動きはゆっくりだけど、かなりの迫力がある。

 まるで山が迫ってくるかのようだ。


「ハルさん、あれはなんですか!?」

「俺に聞かれても!?」

「ハル、あれはなに!?」

「だから俺に聞かれても!? クラウディア!?」

「わたくしに聞かれても!?」


 みんな、大混乱だ。

 いきなり石像が動き出して追いかけてくれば、それはまあ、混乱もする。


「って……あれ?」


 曲がり角まで逃げたところで、ふと、足音が消えていることに気がついた。

 恐る恐る振り返ると、石像は俺達を追いかけるのを止めて、元の位置に戻っていた。


「追いかけてこないですね?」

「見失った……ってことはないわよね。足は遅いけど、それほど引き離せたわけじゃないし」

「一定範囲に近づくと、動き出すのかな? その目的は、やっぱり……」

「番人、というところですわね」


 近づく者を排除する巨大な石像……うーん、かなり厄介そうだ。


「クラウディア、迂回ルートは?」

「おそらく、ありませんわ。この奥に進むためには、あの石像をなんとかしませんと……」

「おそらく、っていうのは?」

「この図書館ダンジョンは、学院長でも全体図を把握されていないほどに複雑に入り組んでいますの。もしかしたら、隠し通路などがあるかもしれませんが、それを見つけるとなると、どれだけの時間と運が必要になるか」

「そうなると……あの石像をなんとかしないといけませんね」

「「「「……」」」」


 みんなで顔を見合わせる。

 揃って、倒せるの? というような顔をしていた。


 図書館ダンジョンの守護者。

 おそらく、相当な力を持っているだろう。


 さきほど逃げ出したのは、突然のことで驚いたという理由もあるけど……

 それだけじゃなくて、猛獣と相対したような、すさまじい圧を感じたからだ。


 かなりの強敵のはず。

 おそらく、レベル換算すると、五十は軽く超えていると思う。


「とりあえず……試してみようか」


 幸いというべきか、近づかないのなら攻撃はしてこない。

 ならば……


「フレアブラストッ!」


 遠距離からの攻撃で仕留める!


 炎が龍のごとく宙を翔けて、石像に食らいつくのだけど……


 パァンッ!


「弾かれた!?」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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