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157話 図書館ダンジョン

 シノが協力してくれることになり、若干、計画の軌道修正がされた。


 当初は、クラウディアに協力してもらい、ファナシス家の不正などを暴いて領主の座から引きずり降ろそうと考えていたのだけど……

 さすがに、それでは混乱が大きすぎると、シノが別の案を提供してきた。


 その案というのは……

 ズバリ、心を操り自発的に領主の座から降りてもらうこと。


 こちらの方がえげつない気がするのだけど、被害の大きさを考えれば優しい方じゃないかな? なんてシノは言う。

 使徒だからなのか、倫理観がちょっと欠如しているよな。


 まあ、家族ぐるみでクラウディアにひどいことをしているみたいなので、同情するつもりはない。

 自業自得。

 今まで好き勝手してきた罰を受けると思ってもらおう。


 さて、話を戻そう。


 心を操り、クラウディアの父親は領主の座を降りてもらう。

 母親やアイン達も勝手な真似ができないように、権限を全て奪わせてもらう。

 それらを、全てクラウディアに譲渡。


 それが今回の計画なのだけど……

 では、どのようにして心を操るのか?


 そんな魔法、聞いたこともないのだけど……

 でも、人の心に干渉する魔道具が存在するらしい。


 さすが、学術都市。

 さすが、魔法学院。

 なんでもありなのだけど、でも、逆にそこが怖くもある。

 実は大量破壊兵器もあります、なんて展開になると、かなり怖い。


 話が逸れた。


 で……


 俺達は、その魔道具を手に入れるために、魔法学院のとある場所を訪れていた。


「ここが図書館か」


 部屋の中央が吹き抜けになっていて、見上げると五階までが見えた。

 その吹き抜けを利用して作られた螺旋階段。

 それらをぐるりと囲むように、本、本、本……本棚が並べられている。


 収められている本は、何冊だろう?

 一万は軽く超えるだろう。

 十万? 百万?

 一千万を超えていると言われても、納得してしまいそうだ。


「す、すごいですね……」

「これだけの本があるなんて、さすが魔法学院ね……」

「世界中の知識が集まる都市。その知識を学ぶための学院ともなれば、これだけの量の本があっても不思議ではないのでしょうね」


 アンジュとアリスもナインも圧倒されていた。

 サナとシルファは……


「難しい本はいらないっす。おもしろい物語とかないっすか?」

「シルファは、本よりもお肉とかお魚とか、そういうものの方がうれしいかなー」


 至ってマイペース。

 この二人の興味は微妙にズレているため、これだけの本を見ても、特に心に響くものはないみたいだ。


 まあ、それはそれでらしい。

 苦笑しつつ、隣のクラウディアに問いかける。


「ここに例の魔道具が?」


 シノは、クラウディアが場所を知っていると言っていたのだけど……

 本当にこんなところに魔道具があるのだろうか?

 魔導書なら、何冊でもありそうな気がするけど。


「いえ。ここは、あくまでも普通の図書館ですわ。わたくし達が目的とする場所は、さらにこの奥にあります」

「普通の……?」


 言い方に引っかかりを覚えるものの、問いかける間もなく、クラウディアは先に進んでしまう。


 とにかくも後をついていく。

 階段を登り、まっすぐ進み、道を曲がり、階段を降りる。

 さらにいくつかの隠し通路らしきところを通り……


「ここですわ」

「「「……」」」


 壁や床、天井にまで本が収められていて……

 さらに、あちらこちらに本棚が浮いていたり、反転して浮いていたり、常識を超える角度で配置されていたり。


 本で構成された迷路のような場所に到着した。


「ここは……?」

「と、とんでもない場所みたいね……いったい、どういう構造になっているのかしら?」

「ふふんっ、ここは魔法学院の秘奥の一つ。ありとあらゆる魔法書が収められていて、ありとあらゆる魔道具が収められている宝物庫……その名も、図書館ダンジョンですわ!」


 図書館ダンジョン……


 一目見てすごいところだというのはわかるのだけど、ちょっと締まらない名前のせいか、いまいち感動が薄い。


 そんな俺の心を読んだのか、あるいは表情に出ていたのか、クラウディアが厳しい顔に。


「決して油断はなさらないように。見ての通り、ここは空間が歪んでいますわ。ところどころに亜空間に繋がる穴もあり、下手をしたら、一生をここでさまよい過ごすことになりますわよ」

「おぉ……」


 さすがに、それは怖い。

 想像して、思わず震えてしまう。


「図書館ダンジョン、ということは……ここは、ダンジョンなのですか?」

「はい、そうなりますわ」

「魔法学院の中にダンジョンがあるというのは、驚きですね……」

「元々は、禁指定された魔法書や魔道具が収められていた倉庫だったと聞いていますが……どんどん数が増えていくうちに、魔法書や魔道具同士が干渉して、魔力が暴走。このように、ダンジョン化してしまったらしいのです」

「それじゃあ、もしかして魔物も?」

「はい、いますわ」

「うわぁ……」


 普通のダンジョンとなにも変わらないじゃないか。

 こんなところ、よく放置しておいたなあ。


「学院長も、最初はなんとかしようと対策を考えたらしいのですが……よくよく考えたら、ここに禁指定された魔法書や魔導書を収めれば、簡単に持ち出すことはできない。天然の金庫として利用した方がいいと、考えらしいですわね」

「確かに、こんなところに入ろうとする人は少ないだろうし、侵入したとしても、簡単に持ち出すことはできないね」


 ここに来るまでの間、クラウディアは大きく遠回りをして、途中、本棚に触れるなどの細かい作業をしていた。

 あれら全て、図書館ダンジョンに入るための方法なのだろう。


「こちらの図書館ダンジョンのどこかに、心を操る魔道具があるみたいですわ」

「……ここから探すの?」


 見た感じ、さきほどの図書館よりも広い。

 この中から、どうやって目的の品を見つければ……?


「安心してくださいな。学院長から、目的の魔道具と共鳴する鈴を借りてきましたわ。近くに移動すると、鈴が鳴るという仕組みです」

「なるほど。それがあれば、なんとかなるかな?」

「あと、こちらは相手の位置を伝えるための鈴ですわ」


 もう一つ、鈴を用意していたらしい。


「図書館ダンジョンは非常に不安定で、時間経過と共に内部構造が複雑に変化しますの。なので、誰かが入り口で待機をして、場所を教えないといけません。でないと、永遠に迷子になりますわ」

「また恐ろしい話を……じゃあ、二手に分かれようか」


 話し合いの結果、探索組は、俺とアリスとアンジュとクラウディア。

 残りの三人は入り口で待機することに。


「お嬢さま、気をつけてください。ハルさまも、お嬢さまのことをよろしくお願いいたします」

「師匠ー、ヒマがあったらおもしろそうな本を見つけてきてほしいっす」

「おみやげもよろしくね? シルファは、おいしい甘いお菓子がいいな」


 後半二人の台詞は気にしないことにして、俺達は、さっそく図書館ダンジョンの探索を始めるのだった。

 果たして、なにが出てくるのやら……?

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 図書館ダンジョンは面白い [気になる点] 幼馴染の心が乗っ取られているのを憂いている主人公が、敵の心を操る案に簡単に乗っかるのは混乱する。
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