155話 打開策は?
「甘いねえ」
シノが冷たく笑う。
「クラウディアくんを犠牲にするのはイヤだ。キミの言うことは正しいのかもしれないけど、しかし、もっとも有効な打開策を自ら捨ててしまうという、愚かな行為でもある。大事な選択を感情で決定してしまうなんて、とても甘い選択だと思うよ?」
「それでも」
俺は迷わない。
「甘いと言われてもなんと言われても、俺は、俺が正しいと思う選択を選ぶよ」
「間違っていたとしても?」
「なら、強引にでも正解にしてみせるよ」
「ぷっ」
耐えられないという感じで、シノが笑う。
「あはははっ、なんて強引な人間なんだ、キミは。あっはっはっは、ダメ、ホントおかしい。ここまでなんて……あー、笑った笑った。みんなが様子を見たい、っていう気持ち、ようやくわかったかも」
「みんな?」
「あー、そこは気にしないで」
アリスが怪訝そうな顔をするものの、シノに話す気はないらしく、軽く流されてしまう。
「うんうん、いいね。実に僕好みの展開だ。下手に諦めたり割り切られたりするより、ぜんぜん良い」
「そう言うことは、シノは俺達の味方になってくれるの?」
「もちろん、なろうじゃないか」
「ありがとう」
「おっと、礼を言うのはまだ早いよ。打開策は見つかっていないからね」
「そうだね……」
シノは味方になってくれたものの、ファナシス家の要求をどうやって退けるか、その方法はまだわからない。
シノが解任されたら、きっと困ることになるだろうし……
クラウディアのことも、これ以上、アインの好きにさせるわけにはいかない。
「要求を無視することはできないのかしら? いくら領主でも、本当に手を出せるとは思えないのだけど」
「うん、そうだね。普通ならそう考えるだろう。マイナス面しかないし、普通ならそんなことはしないけど……うーん」
「なにか懸念要素が?」
「相手は、あのファナシス家だからねえ……」
「ファナシス家ということに、なにか問題があるんですか?」
「ぶっちゃけ、ファナシス家は阿呆だからねえ」
ほんとにぶっちゃけた台詞だった。
「今の当主になってから、え? それマジで言ってんの? っていうような政策を繰り返していてね。軍事力は拡大しているけれど、生産力などは低下。どこを目指しているのか、さっぱりとわからない感じで……まあ、失笑してしまう指導者なんだよ。ここは知識を貯めて磨くための場所だというのに」
「よ、容赦ないですね……」
「それぐらいに阿呆だからね。優秀なクラウディアくんを評価することなく、逆に貶めるところを見て、まあ、大体のことはわかるだろう?」
「確かに、それだけで全てがわかりますね。オータム家で例えるなら、お嬢さまを冷遇するようなものでしょうか」
「そゆこと」
ナインは、とてもわかりやすい例えを出してくれたのだけど……
「ふ……ふぁ?」
「むぅ?」
サナとシルファは理解していない様子で、とても難しい顔をしていた。
こういう話、二人は苦手なのか。
後で、もっとわかりやすい説明をしよう。
今は、ひとまず話を先に進める。
「さて、どうしたらいいと思う?」
「えっと……」
責任はとってくれよ? というような感じで、シノがこちらを見た。
確かに、この事態を招いたのは俺なので、責任はとりたいと思うけど……
でも、どうしたものか?
考える。
ファナシス家は、クラウディアの件を理由に、魔法学院と学術都市の技術、知識を狙っている。
そんなことは絶対に認められない。
どのような技術、知識があるのかわからないけど……
でも、クラウディアにひどい扱いをするような家だ。
そんなところに力を与えたら、ろくなことにならないのは目に見えている。
なら、いっそのこと無視してしまおうか?
いかに領主であろうと、これだけの理由で、魔法学院に攻め込むなんてことはしないはず。
そんなことをしたら、非難轟々だ。
ただ……
その場合、定期的に嫌がらせをされそうなんだよな。
あと、クラウディアの件も、なにも解決していない。
彼女は不利な立場のまま。
これからも苦難にさらされるだろう。
「うーん」
これらの問題を一気に解決する方法は……
「よし、決めた」
「ハル、なにか思いついたの?」
「逆に、領主を入れ替えちゃおう」
「「「は?」」」
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