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151話 信念のために

 俺の部屋に場所を変えて、まずはクラウディアの治療をすることに。


 幸い、重傷というわけではないが……

 それでも、あちらこちらに刻まれた痣が痛々しい。


 アインとかいう男、もう少し殴っておけばよかったかな?

 あのまま放置しておいたけど……

 そんなことを本気で考えつつ、でも今は、クラウディアの治療を優先する。


「ヒール!」


 柔らかい光がクラウディアを包み込み、その体を癒やす。


 何も問題はなく、治療は終わり。

 ただ、クラウディアはぽかんとしていた。


「……」

「どうしたの? まだ痛いところが?」

「あ、いえ……そのようなことはありませんわ。完治したかと」

「そっか、よかった」

「あなたは……とんでもないのですね」

「え?」

「攻撃魔法だけではなくて、治癒魔法も使えるなんて……もしかして、賢者なのですか?」

「あ、うん。一応、そういうことみたい」

「なるほど……」


 こころなしか、クラウディアがこちらを見る目に、尊敬の色が混じったような気がした。

 気がしただけなので、勘違いということもある。

 というか、その可能性の方が高いか。


 最近は、ちょっと仲が改善されてきたと思うけど……

 でも、微妙な出会いで、それ以降も色々と絡まれていた。

 尊敬されるなんてこと、ありえないと思う。


「それで……クラウディアは、どうして、アインにあんなことをされていたの? 家族の問題とか言っていたけど、どういうことなのかな?」

「ちょっ、ハル!」

「ハルさん、そういうデリケートな問題にいきなり口を出してしまうなんて……」


 アリスとアンジュが慌てていた。

 シルファはいつもと変わらない。


「確かに、ちょっと無神経かもしれないけどさ……でも、あんなことがあった以上、避けては通れない話題だと思うよ?」

「それは……」

「まあ……」

「見なかったことにする、っていうのなら聞かない方がいいと思うけど、でも、それは無理。この件に関して、俺はクラウディアにガッツリ関わると決めたから。なら、変にまわりくどい真似はしないで、最初からストレートにいった方がいいと思うんだ」

「「……」」


 アリスとアンジュは顔を見合わせて、


「「ふふっ」」


 おかしそうに、くすりと笑う。


「そういえば、そうね。ハルって、そういう感じだったわね」

「はい、そうですね。最初はびっくりしましたけど、でも、よくよく考えたら、とてもハルさんらしいと思います」

「うん、了解。ハルは、ハルのしたいようにするといいわ。あたしは、それを全力で応援して、全力で支えるから」

「私もです」

「ありがとう」

「シルファもがんばるよ?」

「うん。シルファもありがとう」


 みんなの優しさがうれしい。

 この温かい想いがあるから、俺は今まで、歩き続けることができたのだろう。


「えっと……」


 一方で、クラウディアは呆然としていた。


「わたくしは、まだ、なにも言っていないのですが」

「事情を話したくない?」

「それもありますが、話しても仕方ないといいますか……」

「でも、話してほしいかな」

「わたくしの話、聞いていましたの?」

「もちろん」


 その上で、言わせてもらう。


「でも、それはクラウディア側の都合。俺の都合は関係ないよ」

「……」


 唖然とされてしまう。


「あ、あなたという方は……」

「うん?」

「……ちなみに、あなた側の都合というのは?」

「クラウディアの力になりたい」

「わたくしが、それを拒んでいるというのに?」

「でも、これは俺がやりたいと思っていることだから。俺の思いを変えることは、クラウディアにもできないよ」

「えっと……いえ、しかし……あれぇ?」


 どうしていいかわからない様子で、クラウディアが混乱した。


 ややあって、ため息をこぼす。


「あなた……典型的な優等生タイプかと思っていましたが、違いましたのね。とてもわがままですわ」

「そうかな?」

「そうですわ……」


 呆れた様子で……

 しかし、わずかに笑みを携えて、クラウディアは、もう一度吐息をこぼす。


「どうなっても知りませんからね? なにか問題が起きた時、わたくしに文句を言われても困りますし、自己責任でお願いいたします」

「うん、それでいいよ」

「まったく……」


 苦笑しつつ、クラウディアはそっと口を開いた。

 それから、一通りの事情を話してくれる。


 学術都市を治めるファナシス家に生まれたこと。

 魔法はともかく、領主に必要な政治的な能力を持たず、優秀な兄や姉に逆らえないでいたこと。

 家の役に立てと、アインに望まぬ結婚をさせられそうになったこと。


「……以上が、わたくしの事情になりますわ」

「そっか、そんなことが……」

「言っておきますが、同情は不要ですわ。情けをかけられるなんて、まっぴらごめんです」

「なんで、同情することがいけないの?」

「え? それは、上から見られているようなもので、憐れまれるなんて……」

「俺の考えだけど、そういうものじゃないと思うよ。同情するって、相手の立場になってものを考えて、気持ちに寄り添うことだと思う」

「……」

「プライドの高い人にとっては、屈辱的なことなのかもしれないけど……でも、決して悪いことじゃないはず。だって、一人じゃない、っていうことなんだから」

「あ……」


 その発想はなかった、というような感じで、クラウディアが小さな声をこぼす。


「あなたという方は……」

「うん?」

「……いえ、なんでもありません。それで、わたくしの事情を知り、どうするのですか? ファナシス家を打倒する気なのですか?」

「それも選択肢の一つかな」

「……迷うことなく、言い切りましたね」

「ふふっ。それが、ハルの良いところよ」

「そうですね。ハルさんらしいです」


 アリスとアンジュは、なぜか、自分のことのようにうれしそうにしていた。

 なんで?


「あなたは……なにも知らないのですわ。お兄さま、お姉さま、お父さま、お母さま……ファナシス家の恐ろしさを。学術都市を治めるその力は、他の都市よりも圧倒的。ファナシス家が本気になれば、ただの学生であるあなた達は無傷ではいられないでしょう。それなのに……」

「でも、なにもしないっていう選択肢はないかな?」

「それは、なぜなのですか?」

「自分らしくあるために」

「……」

「俺も色々とあって、今まで歪められてきて……最近は自由になったけど、でも、世界は歪んでいて。とある女の子も歪められたままで……そういうの、ダメなんだ。放っておくなんてこと、できないし……元の姿に戻したい、って思う。ありのままが一番というか、あー……なんか、話が散らかってきたかも。つまり」


 一拍挟んで、大事なことを言う。


「クラウディアの力になりたいっていう想いを無視して、自分で自分を裏切るようなことはしたくないんだ」


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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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