138話 いきなりの戦闘
声の方を見ると、同じくらいの歳の女の子が。
綺麗な亜麻色の髪は、リボンでツインテールにまとめている。
毛先がくるくるっと巻いていた。
凛とした表情からは、気の強さがうかがえる。
とても綺麗な顔をしていて、街を歩けば声をかけられることは間違いないだろう。
ただ、強気なところも見えるため、臆してしまう人もいるかもしれない。
腕を組んで、じっとこちらを見ている。
そんな体勢をとっていると、胸が強調される形になり……
ついつい目がいってしまいそうになるのを我慢。
同じ制服を着ているところを見ると、魔法学院の生徒なのだろう。
「あ、ちょうどよかった。すみませんけど、道を……」
「ここは、由緒正しい魔法学院。立ち入ることができる者は限られています。それなのに、このようなところまで……いったい、何者なのですか!?」
話を聞いてくれない……
「ちょっと待って」
見かねた様子で、アリスが口を挟む。
「あたし達は怪しいものじゃないわ。ほら、その証拠に魔法学院の制服を着ているでしょう? あなたと同じ生徒よ」
「ならば、生徒手帳を見せていただけませんか?」
「え、生徒手帳?」
「最近、制服を着て生徒になりすまして、学院に侵入するという事件がありましたの。故に、制服だけで学友と認めることはできません。認証システム付きの生徒手帳があるのならば、あなた達を学院の生徒と認めましょう」
「そんなことを言われても……」
着いたばかりなので、生徒手帳なんてものは持っていない。
たぶん、この先の事務所でもらうのだろう。
「持っていないのですね?」
女の子の視線がさらに厳しいものに変わる。
「待って。俺達は転入生なんだ。今来たばかりだから、生徒手帳なんて持っていないんだよ」
「転入生? これは、おかしなことを言いますね。そのような話、わたくしは、学院長から聞いておりませんわ」
「え?」
二つ、疑問が湧き上がる。
なぜ、シノは俺達のことを周知させていないのか?
そしてもう一つの謎は、この女の子は何者だろう? ということだ。
学院長と話をするなんて、それなりの立場でないと無理のはず。
そうなると、この女の子はいったい……?
「やはり、怪しいですわね……学院の情報を狙うスパイ? いえ、あるいは財を狙う賊という可能性も……」
「違うって。本当に、俺達は怪しいものじゃなくて……」
「話は、警備員の詰め所で聞きましょう。ついてきなさい」
「いや、だから……」
「拒否するのですか? まさか、おとなしく逃がすと思いまして?」
「待って、とんでもない誤解が……」
「もはや問答無用ですわ! あなた方を賊と断定して、ここで捕縛させていただきますわ!」
ああもうっ。
この女の子、人の話をまったく聞いてくれない!
サナと良い勝負なのではないか?
「師匠。なんか今、自分のことをディスったっすか?」
こんな時だけ勘の良いサナだった。
「抵抗は無駄と知りなさい!」
「っ!」
女の子は手の平をこちらに向けた。
魔力が収束されていくのがわかる。
くる!
「バインド!」
拘束魔法が解き放たれるのだけど、
「シールド!」
防御魔法で防いだ。
女の子は驚いたように目を大きくして……
次いで、不敵に笑う。
「私の魔法を防ぐなんて、ただの賊ではなさそうですね。ふふっ、このような時になんではありますが、少しワクワクしてまいりました」
「しなくていいんだけど……それよりも、俺の話を……」
「では、こちらの魔法はどういたいますか!?」
「聞いてくれないんだね……」
「エアロデトネーション!」
中級風魔法。
高い攻撃力を誇るだけではなくて、強風で相手の動きを封じることもできる。
そんな厄介な魔法なのだけど、
「シールド!」
「なっ!? 初級防御魔法で、わたくしの魔法を防いだ!?」
女の子から余裕の色が消える。
真剣な顔になり、今までにないほどの魔力の高まりを感じる。
「わたくしを本気にさせたのは、学院長に続いて、あなたで二人目ですわ。誇りなさい。そして、天でわたくしの力を喧伝なさい!」
「殺すの!? 捕らえるんじゃないの!?」
「問答無用! テンペストストーム!!!」
上級風魔法が解き放たれた。
嵐が吹き荒れて、触れるもの全てを切り刻む。
その威力は絶大。
並大抵のことでは、防ぐことはできないのだけど……
「シールド!」
「なぁっ!!!?」
三度、防いでみせると、女の子は唖然とした顔に。
「またもや初級防御魔法で……い、いったい、どうなっていますの……?」
「ひとまず、落ち着いて。そう、深呼吸をしよう。俺達は、本当に怪しいものじゃなくて……」
「くっ……こうなれば、根気比べですわ! あなたが勝つか、わたくしが勝つか。徹底抗戦ですわ!!!」
「どうしてそうなるの!?」
「テンペストストーム!」
本当に話を人の聞かない子だ。
若干、呆れつつ……
でも、捕まるなんてことはありえないので、しっかりと魔法で防御する。
「テンペストストーム!」
「シールド」
「テンペストストームぅ!!!」
「シールド」
「テンペストストーム! テンペストストーム! テンペストストーム! テンペストストーム! テンペストストーム! テンペストぉおおおおストぉおおおおーーームぅうううううっ!!!!!」
全部、魔法で防いだ。
「う、ウソですわ……こんな、ことが……あぁ……」
絶望した顔で、女の子は地面に膝をついた。
がくりとうなだれていて、もはや顔を上げる気力もないらしい。
「まさか、このような力を持つ方がいるなんて……わたくしの負けですわ。殺すなり犯すなり、好きになさい……」
「ハル?」
「ハルさん?」
「なにもしないよ!? しないから、その怖い顔をやめて!?」
ちょっとした騒ぎになっていると、
「やれやれ、これはどうしたことかな?」
シノが現れた。
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