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132話 試験開始

「ファイア!」


 先手必勝。

 俺は全力で魔法を唱える。


 手加減なしの一撃だ。

 炎が膨れ上がり、竜のごとくシノに迫る。


 まずは様子見……なんていう甘いことを考えていたら、すぐにやられてしまうだろう。

 そんな予感があった。


 だから、初手から全力を叩き込む。


「おおう!?」


 迫りくる火炎を見て、シノは驚きの声をあげた。

 こちらを油断させるための演技なのか、それとも、予想以上の力に驚いているのか、いまいち判断しづらい。


「これはなかなか……うん、大したものだ」


 シノがニヤリと笑う。


「ただ、こんな単純な魔法でやられてやるつもりはないよ。ブリザードウォール!」


 シノを包み込むように、氷の壁が出現した。

 俺の放った炎が激突するものの、全て氷の壁に阻まれてしまう。


「うそ!? ハルの魔法を防いだ!?」

「そんな……」


 後ろでアリスとアンジュが驚いている。

 正直なところ、俺も驚いていた。


 あの一撃で終わるなんて思ってはいないのだけど……

 それでも、多少のダメージを与えるか、あるいは隙を作り出すことができるのではないか? と考えていた。


 でも、実際にはそんなことはない。

 ダメージを与えることはなくて、隙を作り出すこともできない。

 簡単に防がれてしまった。


「それなら……」

「これはどうですか!?」


 アリスとアンジュが動いた。

 シノを左右から挟み込むようにして、立ち位置を移動。


「お願い!」


 アリスが精霊の力を使い、業風を巻き起こした。


「へえ、精霊か。なかなか珍しい」


 そんなことを言いつつ、シノは業風を避ける。

 まだまだ余裕があるのだけど、


「シールド!」


 アンジュがすぐに魔法を唱えた。

 魔力の盾が形成されるが、それは防御のためじゃない。


 業風が魔力の盾に激突して、そのまま跳ね返る。


「いっ!?」


 一度避けたはずの攻撃が、思わぬ角度から再来する。

 これはさすがに予想外だったらしく、シノは顔を引きつらせた。


 直撃は間違いない。


 そう思ったのだけど……

 不意に、シノの姿が消えた。

 揺らぎ、空気に溶けるように消える。


「やー、危ない危ない。今の連携には、なかなかに焦らされたよ」

「っ!?」


 気がつけば、シノは俺の後ろに。


 いったい、いつの間に!?


「この……ファイア!」

「おっと」


 二度目の全力ファイア。

 しかし、今度は防御魔法を使うことなく、シノは難なく避けてしまう。


「ちっちっち、甘いねえ」

「くっ……」

「キミの魔力はとんでもない。今まで見たことがないほどに高くて、ただのファイアがエクスプロージョン並の威力になってしまうほどだ。それは脅威ではあるが、しかし、脅威ではない。なぜならば、キミは魔力が高いだけ。様々な種類の魔法を使えるわけでもないし、時間差発動などのアレンジを加えることもできない。おまけに、フェイントを加えるという単純な戦術も使用していない。高い魔力を持っていても、それじゃあ意味がないね。もっともっと学ばないといけないよ」

「えっと……」

「なんだい? なにか言いたそうな顔をしているけど、反論でもあるのかな?」


 ふふん、とドヤ顔をするシノ。

 ものすごく言いづらいのだけど……


「その……髪が」

「神? 僕を神みたいに強く、すさまじいと? いやー、そこまで言われてしまうと照れるなあ」

「そうじゃなくて、髪! 髪が燃えているよ!」

「えっ!?」


 隙を誘うための冗談でもなんでもなくて、シノの髪がチリチリと燃えていた。

 さきほどのファイア、完全に避けたわけではなかったみたいだ。


「あちゃちゃちゃ!? う、ウォーター!!!」


 シノは慌てて魔法で水を生み出して消火した。


 はあはあと荒い吐息をこぼして……

 それから、何事もなかったかのように振る舞う。


「やるね。僕にまともな一撃を入れたのは、キミで二人目だ。こんなことは、数百年ぶりかな?」

「あの子、かっこうつけているけど……」

「かっこわるいですね……」

「そこっ、うるさいよ!」


 アリスとアンジュのツッコミに、シノは顔を赤くして叫ぶのだった。


 ちょっと間抜けなところを見たのだけど……

 しかし、依然といて彼女の攻略法は見えてこない。


 強力な魔法を叩き込んでも、防がれるか避けられてしまう。

 アリスとアンジュのコンビネーションも通用しない。


 ただ、この程度で諦めることはない。

 それに、作戦はまだまだある。


「さて……それじゃあ、今度は僕からいかせてもらうよ」


 シノは不敵に笑い、両手に魔力を集中させた。


 あれはいったい……?

 訝しんでいると、すぐにその正体が判明する。


「フレアブラスト! それと……アイスストーム!」

「えっ!?」


 中級火魔法と中級氷魔法。

 その二つを同時に使用するなんて、とんでもない技術だ。

 伊達に魔法学院のトップに君臨していない。


「アリス、アンジュ! 俺の後ろにっ」


 二人の避難が完了したところで、防御魔法を使用する。

 初級だけど、俺の魔力は人の数倍以上あるらしいから、中級魔法でも防ぐことができるはずだ。

 そう考えていたのだけど……


「なっ!?」


 中級火魔法と中級氷魔法が着弾する直前、混ざり合い、巨大な爆発を引き起こした。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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