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121話 必然の出会い

 馬車に揺られること一ヶ月ほど。

 俺達は、学術都市トライアル……のすぐ手前にある、宿場街に到着した。


 馬車で移動できるのはここまで。

 後は、学術都市への入場許可を得なければいけない。


 馬車の御者に最後の賃金を払い、握手をして、笑顔で別れた。

 商売の関係とはいえ、一ヶ月の間、一緒に過ごせばそれなりに情も湧く。

 またどこかで、という挨拶は本気のものだった。


 その後、俺達は宿を取り、部屋に荷物を置いて、一階の食堂に集合する。


「はぐはぐはぐっ、あむ、はむむむむむ!」


 サナがものすごい勢いでごはんを食べていた。

 骨付きの肉を片手に掴み、かじりついて……

 もう片方の手でフォークを握り、同じく肉を突き刺して口に運ぶ。


 そんな彼女を見て、アンジュが唖然とする。


「も、ものすごい食欲ですね……」

「らって、ふぉうひひゅーはんひかくまろもなろはんをらべてないッス」

「えっと……すみません。なんて言っているのか、さっぱりわかりません」

「サナさま。食事をしながらお話をするのは、どうかと思います。食べるかお話をするか、どちらかに専念されては?」

「はぐはぐはぐ!」


 食べることに専念したらしい。

 やれやれ、と苦笑しつつ、俺もごはんを食べる。


 この宿場街に到着するまで、約一ヶ月かかったのだけど……

 その間、宿に泊まることができたのは十日ほど。

 残り二十日は野宿となり、携帯食料やその場で狩った獲物を食べていた。


 だから、まともな料理を食べるのはかなり久しぶりのこと。

 サナが目を輝かせてごはんを食べるのも、よくわかる。


「とりあえず、今日はこのままゆっくり休もうか。みんな、長旅で疲れているだろうし。魔法学院については、また明日から調べることにしよう。それでいいかな?」

「ええ、異論ないわ」

「はい、大丈夫です」


 アリスとアンジュが、一番最初に同意してくれた。

 続けてナインが頷いて、食べ物で頬をリスのように膨らませたサナとシルファもコクリと同意する。


 目的地はすぐ目の前。

 ここまで来たからには、必ず魔法学院に入学して、学術都市の入場許可を得てみせる。

 そして、悪魔についての知識を手に入れて、対抗する力を身に着けて……


 最終的に、レティシアを元に戻してみせる。

 それが今の俺の目的だ。


 果てしない道のりかもしれないけど、でも、諦めるなんていう選択肢はない。

 ゼロだ。

 絶対にやり遂げてみせる。


 強い決意を胸に宿して……

 それから、願いを果たすための体力をつけるべく、しっかりとごはんを食べる。


 そんな時だった。


「やあやあ」


 突然、やたらと陽気な声が飛んできた。


 振り返ると、小さな女の子がにっこりと笑っていた。

 歳は十二くらいに見えるのだけど……でも、なんだろう?

 違和感がある。

 もっと歳を重ねているような、老練な雰囲気を備えていた。


 丸い眼鏡をかけて、白衣を着ている。

 ただ、背が低く体も小さいため、ダボダボだ。

 サイズが合っていない。


 それでも、この子が着ていると妙に似合う。

 かわいいという意味もあるのだけど、知的な雰囲気をまとっているため、白衣と眼鏡がぴったりなのだ。


 もしかして、学者や研究者だろうか?

 ここは学術都市のすぐ近くにある宿場街だから、可能性はあると思う。


「えっと……なんですか?」


 見た目と違い偉い人の可能性もあるため、念の為、丁寧語で問いかけた。


「いやー、今おもしろい話が聞こえてきてね。それで、ついつい話しかけちゃった、というわけなんだよ」

「おもしろい話?」

「魔法学院のことを調べる、っていう話かな」


 女の子は笑う。

 でも、心は笑っていないというか、威圧感を覚えた。


 この子……やっぱりというか、見た目で判断したら痛い目に遭う。

 何者かわからないけど、気をつけた方がいい。

 もしかしたら、魔人という可能性もあるのだから。


 他のみんなも同様に警戒しているらしく、表情は変えないものの、いつでも動き出せるように身構えていた。

 そんな中、


「なんすか、このチビスケは?」


 サナはなにも察していない様子で、とんでもなく空気を読まない台詞を飛ばす。


 慌てて止めようとするけど、間に合わない。


「ちょっ……」

「自分達は今、ごはんを食べてるっすよー。邪魔したらダメっすよ? っていうか、チビスケは子供なんだから、早く家に帰るっす。お母さんが待っているっすよ」


 サナなりに相手のことを考えた発言なのだろうけど、この子からしたら、とてもバカにされたように感じるだろう。

 今の台詞を別方面から捉えると、子供はママのいる家に帰りな、というガラの悪い冒険者がよく言うような台詞になってしまう。


「へ、へぇ……僕をチビスケと言うのかい」


 たぶん、背が低いことも子供扱いも、どちらも禁句なのだろう。

 なんとか、ギリギリ笑顔を維持しているものの、こめかみの辺りがピクピクと震えていた。


「サナ、それ以上は……!」

「どうしたんっすか、師匠? チビスケのことを心配してる? さすが、師匠っすね。こんな見ず知らずのチビスケでも気にかけるなんて、優しいっす。チビスケも、感謝した方がいいっすよ」

「こ、こ、このっ……!!!」


 ついに女の子の笑顔が崩壊した。

 怒り爆発五秒前というような感じで、拳をぎゅうううっと握りしめている。


 まずい、なんとかしないと。

 俺は慌てて対策を考えて、


「えいやっ」

「はぐ!?」


 突然、シルファが、サナに手刀を叩き込んだ。

 サナは鈍い悲鳴をあげて、がくりと椅子にもたれかかり、気絶する。


「……」

「えっと」


 突然のことに、女の子も俺も言葉を失ってしまう。

 他のみんなも同様に、ぽかんとしていた。


「これで静かになったね。うん。それじゃあ、話を再開していいよ。どうぞ」


 シルファなりに気を遣ってくれたみたいだけど、もう少し、穏やかな方法は選べなかったのだろうか?

 泡を吹いて気絶しているサナを見て、さすがに同情した。


「え、えっと……うん、まあ。それはどうなんだい、と思わないでもないが、一応、好意でしてもらったことだ。話を続けようか」


 女の子は、気を取り直すようにこほんと咳払いをして、それから言葉を紡ぐ。


「魔法学院について知りたいことがあるのなら、僕が教えてあげようじゃないか。なに、心配することはない。僕は怪しいものじゃないよ。そう、僕は……魔法学院の学院長なのさ」


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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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