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116話 VSキマイラ・その1

「ファイアッ!」


 まずは牽制の一撃。

 ほどほどの全力で、初級火魔法を唱えた。


 大量の火薬でも使用したかのように、巨大な炎が立ち上がる。

 キマイラは一瞬で炎に飲み込まれた。

 グガアアアッ! と雄叫びを響かせる。


「……ダメかな」


 うっとうしく思われているみたいだけど、でも、それだけ。

 決定的なダメージどころか、それなりのダメージも与えることができていないようだ。


「これくらいの児戯で!」


 キマイラが吠えて、その身にまとわりつく炎を消し飛ばす。

 羽虫にたかられたかのように平然としていた。


 なんてヤツだ。

 悪魔を名乗るだけのことはある。


 昔、絶滅したとされているため、レベルはわからないのだけど……

 たぶん、六十以上はあると思う。

 ひょっとしたら、七十近いかもしれない。


 かなりの強敵だ。

 ニセ悪魔と侮ることなく、油断することなく、全力で挑もう。


「ダブルスラッシュ!」

「風斬!」


 アリスとナインは、それぞれキマイラの左右に回り込み、武具スキルを発動させた。

 しかし、二人の斬撃はキマイラの鉄のように硬い毛に阻まれて、体に届くことはない。


「やばっ!?」


 蛇の尻尾がアリスに襲いかかる。

 アリスは慌てて後ろへ跳ぶが、それよりも蛇の尻尾の方が速い。


「リフレクション・シールド!」


 アンジュが防御魔法……らしきものを唱えた。

 らしきもの、というのは、聞いたことのない魔法のため正確な判断がつかないのだ。


 光の壁がアリスと蛇の尻尾の間に立つ。

 それをうっとうしそうに見た蛇の尻尾は、毒の霧を吐き出した。

 手前の草木が一瞬で枯れるところを見ると、かなり強力な毒なのだろう。


 しかし、それは全て光の壁に阻まれる。

 それだけじゃない。

 光の壁は毒の霧を全て吸い込み、一際強い光を放つ。

 そして、極大の光が放たれて蛇の尻尾を打つ。


「すごい……今の魔法、だよね?」

「はい、そうですよ」


 呆然としつつ問いかけると、アンジュは少し誇らしげに胸を張りつつ、説明してくれる。


「リフレクション・シールド。さきほど覚えた、聖女専用の魔法です。相手の攻撃を防ぐだけではなくて、物理と魔力を吸収して数倍にして反射するという、防御と反撃を兼ねた魔法なんですよ」

「それはもう、無敵じゃあ……?」

「限界はあるので、無尽蔵に受け止められるわけではないんです。あと、消費魔力も多いので、多用できないことも弱点でしょうか」

「なるほど……でも、とても頼りになるよ」

「……頼りになりますか?」

「もちろん」

「私が?」

「うん、アンジュが」

「……はぅ。ど、どうしてでしょう? こんな時なのに、ニヤニヤが止まりません」


 褒められたことがうれしいのかな?


「ひとまず、アイツをどうにかして倒そう。アンジュはみんなの援護を頼むよ」

「はい、任せてください! よくわかりませんが、今の私は、すごくやる気に満ちあふれています!」


 よくわからないけど、やる気があることはいいことだ。

 とても頼りになる。


「ええいっ、ちょこまかと羽虫のようにうっとうしい虫けらだ!」


 キマイラの足元では、引き続き、アリスとナインが攻撃を続けていた。

 振り下ろされる手足をギリギリのところで避けて、刃を振るう。

 その攻撃は、金属のような毛に全て阻まれているものの、それでも二人は攻撃をやめない。


 なんの考えもなく、闇雲に攻撃をしているわけじゃない。

 キマイラの注意を引いてくれているのだろう。

 打ち合わせをするわけでもなく、言葉を交わすこともなく……

 それでも、二人の考えていることを、なんとなくだけど読み取れるようになっていた。


 これが、パーティーを組む、っていうことなのかな?

 レティシアと一緒にいた時にはなかった感覚だ。


「うん。悪くない、というか、すごくいい感じだ」

「ハルさん?」

「いや、なんでもないよ。がんばろう」

「はい!」


 気合を入れて、改めて戦いに挑む。


「ファイアボムッ!」


 注意を引いてくれている二人を傷つけないようにしつつ、限定的に魔法を炸裂させた。

 オリジナルの火魔法、ファイアボムだ。

 範囲を自由に設定することができて、一部の空間を爆砕する。

 威力の加減も自由自在だ。


 最初に使用した相手は、同じ人間。

 なので手加減はしていたのだけど……


 でも、今は違う。

 相手は魔物。

 手加減することなく、全力で魔力注ぎ込み、放つ。


「グアアアッ!?」


 豪炎と衝撃がキマイラの顔を包み込む。

 大きな悲鳴が響き渡り、キマイラの巨体がぐらりとよろめいた。


 しかし、倒れるまでには至らない。

 しっかりと大地を踏みしめて、倒れることを防いでいた。


「この……ゴミ共がぁあああああっ!!!」


 キマイラの頭部の半分は焼けただれていた。

 しかし、致命傷ではなくて、逆に怒りを買ってしまう。


 ライオンの頭部から炎が吐かれた。

 荒れ狂う嵐のように、豪炎が俺達全員に迫る。


「シールド!」

「リフレクション・シールド!」


 アンジュと協力して、俺達全員を守る壁を作る。

 アンジュの防御魔法の力は今さっき見たばかりだから、なにも問題はない。


 そして俺も、こんなヤツにやられてやるつもりはない。

 なかなか自信を持つことはできないのだけど……

 でも、いつまでもそんなことを言っていられない。

 せめて戦闘の時くらいは、がんばらないと!


「よし!」


 アンジュと力を合わせることで、無事にキマイラの炎を防ぐことに成功した。


 ……しかし。

 この時、俺はとんでもないことを忘れていた。


「あっちぃいいいいいっ!!!?」


 防御範囲から漏れていたサナがこんがりと焼けてしまい、悲鳴が響き渡る。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] サナが、モ○○ンの(上手に焼けました)の ギャグキャラになっててワロタ(笑)
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