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115話 救出作戦、開始

 俺とアンジュは二手に分かれた。

 儀式を行う村人達、及びキマイラを挟み込むように、左右に展開する。

 そのまま、気づかれる一歩手前の、ギリギリの場所まで接近した。


 小さな物音一つで、すぐに気づかれてしまうだろう。

 でも、このくらいの距離でないと効果範囲じゃないというから、仕方ない。

 最大限に警戒しつつ、やり遂げるだけだ。


「すぅ……」


 心を落ち着けるために、大きく息を吸う。

 そして、一気に吐き出すと同時に、


「ファイアッ!」


 上空に向けて、特大の炎を撒き散らした。


「な、なんだっ!? なにが起きた!?」

「あああっ、これは天の裁きだ! こんなことをしているから、罰が下ったんだ!」

「ばかっ、そんなわけがあるか! これはきっと、騎士団による襲撃だ!」


 村人達は、一気に恐慌状態に陥った。

 騎士団の襲来を疑うものから、天罰を疑うものまで様々だ。


 うん。

 ひとまずは、作戦の第一段階は成功かな?

 村人達が混乱しているから、アンジュは、こっそりと紛れ込むことができた。


 そして……


「スリープ」


 強制的に睡眠状態に陥らせる魔法が発動。

 一人、また一人と村人達が倒れていき……

 ほどなくして、全員がスヤスヤと眠ってしまう。


「これは……すごいなあ」


 睡眠魔法の絶大な効果に、ついつい状況を忘れて感心してしまう。

 まさか、これほどの威力を秘めているなんて。


 サナに対しては効果はなかったのだけど……

 でも、普通の人なら抵抗することなく、一瞬で深い眠りに落ちてしまう。

 習得する機会が限定されている理由をよく理解した。

 これは強力すぎる。

 もしも悪人が習得したら、色々な犯罪がやりたい放題になってしまう。


「さてと」


 俺は俺のやることをしよう。


「なんだ、貴様らは? 我の楽しみを邪魔するつもりか?」


 キマイラがグルルルと低く吠えつつ、不機嫌そうに問いかけてきた。

 でも、コイツはどこからどう見ても敵。

 問答をする必要はない。


「フラッシュ!」

「ギァッ!?」


 さきほど、アンジュから教えてもらった魔法を使う。

 ぶっつけ本番なのでうまくいくか心配だったものの、問題なかったようだ。


 目を焼く強烈な閃光が広がる。

 まともに直視したキマイラは、悲鳴をあげてのけぞった。


 その間にみんなのところへ駆け寄り、野営で使うツールナイフで拘束を解く。


「ぷはぁっ!」


 口を塞いでいた布を外すと、アリスは大きく息をした。

 無理矢理な感じだったから、苦しかったのかもしれない。

 他のみんなも、若干、顔をしかめていた。


 みんなをこんな風にするなんて……


「ありがとう、ハル。おかげで助かったわ」

「……」

「ハル?」

「え? あ……うん。みんな、怪我はない?」


 なんか、心が黒いモヤモヤに包まれたような気がしたんだけど……気のせいかな?

 今はなにもなくて、特に違和感はない。

 うーん?


「ありがとう、ハル。シルファ、またハルに助けられたね。すごく感謝しているよ」

「私からもお礼を言わせてください。ハルさま、助けていただき、ありがとうございます。そして、申しわけありません。本来ならば、このようなことは私の役目なのですが……」

「いいよ。困った時はお互いさまというか、こういう時のためのパーティーなんだから」

「その言葉に深い感謝を」

「それよりも……」

「ハルさん!」


 アンジュがこちらに駆けてきた。

 ちらりとこちらを見て、それから、俺の後ろ……キマイラを見る。


「詳しい事情を聞きたいところですが……」

「今は、それよりも先にやらないといけないことがあるみたいだね」

「貴様ら……どこのどいつか知らぬが、我の楽しみを邪魔したこと、地獄で悔いるがいい! 我こそは、古の伝承に記されし悪魔であるぞ!」


 キマイラが怒りに吠えた。

 かなりの迫力だ。

 レベルにして、五十前後というところかな?


 本来なら、かなりの強敵だ。

 でも、恐怖を覚えることはない。

 勝てるかな? と不安になることもない。


 なにしろ、このキマイラが悪魔でないことを知っている。

 ただの騙りであることを見抜いている。


 そのせいか、コイツに対して恐れを抱くことはない。

 俺は強くて怖い悪魔なんだぞ、と精一杯強がっているようにしか見えないわけで……

 うん、ぜんぜん怖くない。


「よし。みんな、いこうか」

「ええ!」


 みんなも同じ気持ちらしく、誰一人、怯むことはなかった。


「あの、ハルさん?」


 そんな中、アンジュが困ったように声をかけてくる。


「どうかしたの?」

「えっと……サナさんが寝たままなんですが、どうしましょう?」

「……」


 言われて、そこで気がついた。

 サナを見る。


「すぴかー……すぴかー……」


 とても幸せそうに寝ていた。

 唇の端から、ちょっぴりよだれが垂れている。


「うへへ……ごちそうがいっぱいっす……師匠、一緒に食べるっすよ……うへへ」


 なんていうか、もう……本当に幸せそうに寝ていた。


「放っておこうか」

「そうですね」

「ドラゴンだから、戦いに巻き込まれても大したことはないわ」

「寝ている方が悪い」

「これほど幸せそうに寝ているサナさまを起こす方が、罪がありそうですし」


 俺達の意見が一致。

 そして……寝ているサナは放置して、キマイラに挑むのだった。

 ……いまいち締まらないなあ。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ハルは、あの戦いで後遺症みたいなものが できた可能性がありそうですね。 今後の戦いで支障が出なければいいのですが
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