111話 辺境の村
多数決で、俺達は村に寄ることにした。
宿があるのなら利用したいという理由もあるし、あと、そろそろ食料や水が少なくなってきたため、補充をしておきたい。
そのため、村に寄ることにしたのだ。
村の手前まで移動したところで、御者は、一度馬車を止めた。
「お客さん、ちょっとまっててくれますか? 村に宿があるかどうか、確かめてきますので」
そう言って、御者は一人、村に向かって歩いていく。
「なんで、わざわざ手前に馬車を止めるんだろう?」
「辺境の村になると、場合によっては、排他的なところもあるの」
俺のつぶやきに反応して、アリスが説明をしてくれる。
「他所者は受け入れないとか、最悪、村人全員がグルになって詐欺をするところとか。そういう村があるから、事前に確認しておくの」
「なるほど……怖い話だね」
「師匠、師匠。いざっていう時は、自分を頼りにしてください。悪い人間がいたら、自分がやっつけてやるっす」
「うん、頼りにしているよ」
「ひふ、ふひひひっ」
頭をなでると、サナがなんともいえない声をこぼす。
たぶん、喜んでいると思うんだけど……
年頃……年頃なのか? の乙女として、その声はどうかと思うよ。
「んー……」
「どうしたの、シルファ。難しい顔をしているけど」
「ハッキリとは言えないんだけど、嫌な感じがするかな」
「……ふむ」
アンジュだけじゃなくて、シルファも同じことを言うのか。
一人なら気の所為と済ませられるかもしれないけど、二人となるとそうもいかない。
あの村には、なにかしら問題があると考えて、警戒しておいた方がよさそうだ。
アリスも同じ考えらしく、少し表情を引き締めていた。
「お客さん、お待たせしました」
御者が戻ってきた。
「どうでした?」
「小さいですが、宿はありました。全員分の部屋もあるということで、歓迎してもらえそうですよ」
「そうですか、よかった」
「それじゃあ、馬車を動かしますね」
御者は馬車に乗り、手綱を引いた。
アンジュとシルファが感じた嫌な予感というのは……黙っておこう。
確証はないし、具体的なことはなにもわからない。
不安にさせてしまうのもどうかと思い、しばらくは様子を見ることにしよう。
――――――――――
「ようこそ、お客さま方。旅の途中ということで、おつかれでしょう。このような辺境の村ですが、ごゆっくりしてください」
宿の主人に笑顔で迎え入れられた。
小さな宿で、二人部屋が四つ。
一階が食堂。
風呂はなし。
風呂なしは女性陣にとっては辛いかもしれないが、近くに綺麗な湖があるらしく、そこで水浴びができるらしい。
まずは食事だ。
小さい村だけど、それ故に独自の料理があるらしく、楽しみだ。
まあ、アンジュとシルファの言葉もあるから、気を抜くわけにはいかないんだけどね。
他に客はいないらしく、食堂にいるのは俺たちだけ。
宿の主人が一人で切り盛りしているらしく、奥の厨房に引っ込んでいる。
そして、残った俺たちはというと……
「「「じゃーんけーん……ぽんっ!」」」
みんな、じゃんけんをしていた。
その目的は、部屋割だ。
部屋は、二人部屋が四つ。
御者が一つを使うとして、残り三つを俺達が使うことになるんだけど……
その場合、俺は誰かと一緒にならないといけない。
俺と一緒なんてイヤだろうな、と思っていたのだけど、どうもその逆で、みんなは一緒の部屋を望んでいるらしい。
そして、俺と一緒の部屋になる権利をかけて、じゃんけんをしている……というわけだ。
「ぽんっ」
「ぽんっ」
「ぽんっ」
あいこが続いているらしく、みんな、何度も拳を出していた。
というか、なんで、俺と一緒の部屋になりたいんだろう?
俺は男だから、一緒になるなんて、ちょっとどうかと思うし……
世話を焼きたい?
面倒を見たい?
うーん……よくわからない。
あ、ひょっとしたら、ボディーガード的なものを期待しているのかもしれない。
見知らぬ村だから、男が一緒の方が心強いとか、そういう理由なのかも。
「しゃあっ、おらぁ!」
どうやら、サナが勝利したらしく、高々と拳を突き上げていた。
しかし、今の掛け声はどうなのだろうか?
ドラゴンかもしれないけど、見た目はかわいい女の子なんだから、もうちょっとおしとやかにした方がいいと思うんだけど。
その辺り、今度、しっかりと教育した方がいいのかもしれない。
……弟子というよりは、親戚の子を預かっているような気分になってきた。
「師匠、師匠」
「うん?」
「えへへー、自分が一緒の部屋っすよ」
「そうみたいだね」
「不束者ですが、よろしくお願いするっす。優しくしてほしいっす」
うん。
やっぱり、この子は後で、色々と教え込まないとダメだ。
「くっ、肝心なところで勝負運がない自分が恨めしいわ」
「ハルさんと一緒の部屋が良かったのですが、でもでも、そうなった時のことを考えるとあわあわとなってしまうので、これはこれで良かったような……?」
「無自覚な想いに振り回されるお嬢さま……あぁ、とてもかわいらしいです」
「むぅ。ハルに腕枕してほしかったんだけど、残念。また今度、機会を伺おう」
そんなこんなありつつも……
ひとまず、俺達は荷物を手に、それぞれの部屋へ向かうのだった。
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