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その後2

 アルセニオが、やっとエルシー様の想いを受け止めたと聞いてから2カ月経った頃。


「第一王女と一緒に、第二王子が来る?」

自宅でのんびりと家族で寛いでいた時だった。


 めでたく隣国の第一王女であるレジーナ・カメルラード殿下と来年早々に婚約する事になった兄。遠距離恋愛爆走中である。外交を兼ねて再び我が国にやって来るという事だった。


「そうなの。ヴィヴィアーナ殿下の婚約式の時は、王太子殿下がいらっしゃっていたから、万が一のためにと国に留まっていらっしゃったんですって。で、今回はエッツィオや私たち家族に挨拶したいって、一緒に来るそうよ」

母は嬉しそうだ。


「二卵性の双子なのだそうだ」

父の言葉に驚いてしまう。

「レジーナ殿下って双子だったのか」

と、言う事はやはり剣を使うのだろうか。レジーナ様は女性、しかも王族の人間ながらに、自国の騎士団に所属している。もしかすると片割れも?


「エルダの考えているような人物ではないよ。どちらかと言うと、ベニートのようなタイプかな?」

「えええ。檻好きなのか?」

兄のこめかみがピクリとした。

「ベニートはまだそんな事を言っているのか?」

「うん、まだと言うか、それが通常運転だ」


「そうか……一度ゆっくり語り合わなければならないかな」

うん、ベニート様の命があと数日になったな。


「明後日にはまたレジーナちゃんに会えるわね」

母は、私たちの会話を気にする事なく嬉しそうに笑った。




「初めまして。レジーナの双子の弟、レンシオ・カメルラードと申します。以後、お見知りおきを」


ヴィヴィアーナ殿下を学園に送り届け、城に戻ると早々に謁見室に呼び出された。


「よく来てくれた。お二方の部屋は既に整っている。昼食まで寛いでいただければと思う」


一通りの挨拶が終わり、ヴァレンティーノ殿下と兄と共に、何故か私も部屋まで案内する事になった。いや、どこの部屋か知らないのだが。


「エルダ。あなたにも会いたかったわ」

サラサラのストロベリーブロンドをなびかせ、ペリドットの瞳をキラキラさせているレジーナ殿下。とても美しい女性だ。


「私も、再びお会い出来て嬉しく思います。義姉上」

微笑みと共にそう言うと、顔を真っ赤にさせたレジーナ殿下。年上なのに可愛いとか、どういう事だと突っ込みたい。


「な、なかなか照れてしまうものね」

手を扇の代わりにして、顔をパタパタさせている。

「レン、服装でわかる通り、この子は侯爵令嬢ながらに騎士団に所属しているのよ。しかも副団長の一人。手合わせでは全く歯が立たなかったわ」


「なるほど、やはりあなたでしたか。エッツィオ殿の話題と一緒に、妹であるエルダ嬢の話もたくさん聞かされていましてね。謁見室で、あなたがそうなのではと思っていたのですよ」

歩きながら器用に私の手を取り、手の甲にキスをした。なるほど、ベニート様と同じ部類のようだ。


レジーナ殿下と見目はそっくり。短いストロベリーブロンドの髪と、レジーナ殿下より少し目元が涼しい印象だ。身長はレジーナ殿下の頭半分くらい高かった。


「そう言えば、あなたは聖剣を持っているとお聞きしました」

「ああ、そうですね。聖剣になってしまったと言う方が正しいですが」

「腰に差しているそれですね」

「はい」

少しだけ、腰から外して見せる。


「珍しい形をしているのですね」

「ええ、これは剣ではなく刀と言います。剣よりも刀身は細く長いです」

「へえ。部屋に着いたら見せていただいても?」

ちらりとヴァレンティーノ殿下を見る。コクンと頷かれた。


「ええ、どうぞ」


部屋に到着すると、早速聖剣を見せた。

「これは、素晴らしいですね」

レンシオ殿下が刀をひと振りする。

『素人ではないな』

持ち方が剣の扱いを知っているそれだ。


「これは片刃ですか?」

「はい」

「扱いにくくはないのですか?」

「ええ、私にはしっくりくるのです」

そう言うと、剣を鞘に収め私に返してくれる。


「あなたは選ばれた人なのですね」


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