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閑話:白雪黒風(規制版)

えっちなシーンは規制かけてます。

フルはノクタの「イマドキのえちえち冒険者」に。

「手合わせはヴィリ姐の負けなんだから、約束は守ってね」

「お前さぁ…いいけど、そういう趣味だったのかよ…」


 確かに術はなしで手合わせという話であった。

 だがまさか自分が、連盟最強の剣士である自分が敗れるとは。ヴィリは妹分の成長に驚愕した。

 とはいえ種はある。

 勇者の力を継承したフラウは、確かに術は使用してはいなかった。

 しかしそもそも勇者としての力自体が強力な身体強化の作用があり、これはわざわざ起動せずとも常時フラウに作用しつづけている…いわば常時起動型の術式である事をヴィリは知らなかった。


 素の肉体性能ではもはやヴィリはフラウに勝てない。

 ヴィリが衰えたわけではなく、フラウが強くなりすぎたのだ。

 ヴィリを護りたいという思い、ヴィリへの憧憬、そういったものがフラウを強くした。


 ちなみにヴィリは確かに連盟最強の剣士を名乗るに遜色ない実力を持つが、そもそも連盟に剣を扱う者は彼女の他には誰もいない。つまりヴィリが仮にその辺の3歳児より棒切れ捌きがへたくそであっても、それはそれで“連盟最強の剣士”である事に変わりはない。


 ■


「まあ、約束だからいいけどよ…」


 ヴィリは呆れたように言って、フラウに向き直った。

 その顔色はやや赤い。


(ヴィリ姐のほっぺたが赤い。照れてるのかな。でも、私も…)


 フラウの頬にも一目でわかるほどの朱が浮かんでいた。

 羞恥はある。ありすぎるほどにある。

 だがもうここまで来てフラウは我慢することなど出来なかった。


 -規制-



 ◇◆


 -規制-


 ■


 ヴィリは処女ではない。


 経験はある。

 何度もある。


 ただし、それはいずれも愛を伴うものではなかったが。

 ヴィリが恋人を作ろうとしない理由の一つでもあった。

 家族ならば良い。

 家族は家族であって、異性ではないからだ。


 連盟員たちは自身の抱える闇を他の者達と共有している。

 連盟に所属する者達は互いに自身の精神世界の最も穢れている部分を共有しあい、そしてそれを受け入れなければならない。それが自身にとって唾棄すべき事であっても、家族だからこそ許せるという事もある。いや、家族だからこそ許さなければならない。この世界の全てが敵となったとしても、家族だけは味方となってくれる…“家族は決して裏切らない”。


 それがマルケェスが連盟そのものに施した概念縛呪であった。


 概念縛呪とは、抽象的な概念を特定の物体や個人、あるいは団体に付与する業だ。付与された概念は対象の根源を変容させ、あたかもそれが元々備えていたかのような振る舞いを見せる。


 例えば一振りの長剣にこん棒の概念を付与すれば、その剣はたちまち切れ味を失って鈍器と化すであろう。


 これは魔法でもなければ魔術でもない。奇跡の一種であった。光神はこの業を以て勇者を選定しているというのは知るものぞ知る裏の事情でもある。


 勿論絶対の権能ではない。

 現に元連盟術師ラカニシュは縛呪の影響下にあってもなお家族を殺めるに至ったではないか。

 だがそれはラカニシュが特異であっただけで、この縛呪は基本的に一人間が破れる代物ではない。

 また、ヴィリもそうだがほとんどの連盟員は望んでその業を受け入れたのだ。


 それは何故か?

 皆が皆なりに“疲れて”いたからである。

 それがどの様な疲労かは個々人によるが、魂がバラバラに砕け散ってもおかしくないほどの悲痛、魂がズタズタに引き裂かれてもおかしくないほどの怨念といったものを皆が抱えていた。


 例え仮初であってももう二度と自身を傷つけられたくない…言葉や態度には出さなくとも、心の最も深く昏い部分にそんな想いがあった。


 マルケェスにとっては人間のそういった感情は甘露に等しかった。人間のどんな感情を好むかは“悪魔”によりけりだが、マルケェスの場合は“コレ”である。


 ざっくばらんに言ってしまえば悲壮感といった重い感情。

 悲痛…そういったものを彼は食べるというか、全身と全霊で浴びる。それは性交などとは比較にもならない究極の悦楽であった。連盟とは、マルケェスの個人的な嗜好と利益により作られた孤独者達の最後のよすが、疑似的な家族関係で心を慰める為の空虚な箱庭なのだ。


 このように書くと連盟の術師達はまるでマルケェスの餌として利用されている様に見えるが、彼らもまたそれくらいは承知の上で連盟に身を置いている。


 なんだかんだで居心地がいいのだ、自身のように悲惨なことを経験してきた身の上の者達の集団に身を置くのは。

 ただ彼らは皆心中に譲れないものがあり、その価値観が相反するような事があれば、例え家族といえども……という想いもあるため、万が一を考えて一か所にかたまらないようにはしている。家族との殺し合いは彼等とて望むところではないからだ。


 ■


 -規制-


 ヴィリとフラウは、お互いの腕の中で絡み合い、激しい愛の営みで汗ばんだ体を横たえていた。呼吸は徐々に正常に戻り、二人は満足げな表情で互いの目を見つめた。


 特に言葉を交わす事はない。

 なぜなら互いの目が口より遥かに雄弁に互いの気持ちを伝え合っていたからだ。


 フラウは微笑みながら、ヴィリの顔にかかる髪の束を払うと彼女の胸元に自身の顔をうずめ、そのまま眠りについた。


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