コミカライズで編集部を訪問してみた。
マッグガーデン様より『魔術師の杖』がコミカライズ、WEBコミック『MAGKAN』にて月刊連載が決定!
続報を楽しみにお待ちください。
コミカライズ決まりました!
なろう公式ブログ【お便りコーナー】第162回にも書いております。
マッグガーデン様の打診により、なろうで連載していた『魔術師の杖』がコミカライズ決定、WEBコミック『MAGKAN』にて月刊連載が、2025年11月1日から始まっております。
今回は、その打診が来たとき、新米ラノベ作家の粉雪が大阪にある『MAGKAN』編集部を突撃した話です。(大迷惑)
『魔術師の杖』は2020年6月に『小説家になろう』で連載開始、半年もしないうちに書籍化の打診を受け、2021年5月には1巻が発売されました。ぺぇぺぇラノベ作家の誕生です。
筆者の粉雪は小説など書いたこともない初心者でした。何とか続刊できるだけの冊数を売り、コツコツ続きを出す……という、気の遠くなるような作業を7回やった後の、コミカライズ打診でした。
実は『魔術師の杖』は小説を出版したレーベルさんでは、「コミカライズは他作品と比べても、とりわけ難しい」と言われ続けていたのです。
「長編ですから手掛けてくれる出版社や漫画家さんを見つけるのは難しく、タテコミにも向かない作品です」
そりゃそうです。
長編を漫画にするとなると、漫画家さんは何年もその仕事に拘束されます。ましてや『魔術師の杖』は読者さんが見たいと挙げる場面が、5巻だったり7巻だったりで……拝めるとしても何年も先ですよ。
そこまで漫画家さんが描いてくれる?
そこまで読者さんがついて来てくれる?
そこまで私の気力体力が保つ?
そんなことを考えつつも、読者さんから「コミカライズお願いします!」と声援を頂き、とりあえず声は上げてみようと。
口に出さなければ願いは叶わないんです。
だから2023年のエイプリルフールに、Twitter(当時)で「コミカライズ決まりました!」と叫びました。恥ずかしかったですね、本気にされた読者さんもいらして、わりとすぐ削除しました。
特に反応はなかったのですが、実際に声を上げてみて、気づいたことがあります。
「コミカライズとなると、作品にはまだ足りない物がいっぱいある」
話がくる気配もなかったけれど、もし本当に打診がきたらと想定して、サブキャラのスピンオフなども書きはじめました。
『魔術師の杖』の世界をより深く、より大きく広げていこう。
設定資料集や登場人物紹介などは、書籍化の話が来る前から作っていました。それも見直して手を加えました。
それに加えて2023年は、いろんな人に『魔術師の杖』を知ってもらう努力をしました。
とはいえ、すぐに成果が上がるわけもなく……と思っていたら、その年の暮れ、突然オファーが舞いこんだのです。
「とりわけ難しい」と言っていた、当の編集長も慌てふためいていました。
うれしいよりも「え?」とか「今頃?」という気持ちの方が強かったです。素直に喜んでいいのか自分でも分からず、詳しい話を聞くため、大阪にあるMAGKAN編集部まで行っちゃいました!
(とはいえこちらも仕事があるため、話が来てから2ヵ月も先の訪問になりました)
2時間ほどお邪魔してお話をうかがいましたが、原作者が編集部を訪問する事ってないそうで。
えっ、そうなの⁉
みんな行かないの⁉
私は小説を書籍化する際、メールのやりとりだけで契約したのを、後からだいぶ反省しました。
なので次にどんな打診が来ても、きちんと対面で説明を聞いてからにしようと思っていたのです。だから話をうかがってすぐ、職場に申請して休みを取りました。
やっぱりいろいろ聞いてみたいですよね。
何をテーマに作品を探したのかとか、何が決め手になったかとか、どこが評価されたんだろうとか、私が昨年頑張ったことが少しは役に立ったかとか……。
で、ですね……わざわざ大阪まで行ってようやく聞けた答えは……「たまたま見つけた」でした。
錬金術や異世界といったテーマは特に決めず、フラットになろうを見て原作を探されていたそうで。
そうなんです。なろうって出版社の人に読まれているんですよ!
だけど私なりに頑張ったこと、全然関係なかったです!
(おおぅ、そうなんだぁ……)←脱力している。
まぁ、短編集も出せたし、無意味ではなかったと信じます……。←脱力している。
ただ打診された担当様は、ちゃんとなろうの原作を最新話まで読んで下さってました。丁寧に、決め手となったポイントを説明してくれました。
「一話冒頭のグレンの家で術式が構築され、魔法陣が展開する……という描写ですぐに『これは漫画で見てみたい!』と感じたことが最大のポイントです。その後、金文字があらわれたり、イルミエンツだったり、ファンタジー好きなら映像で見てみたくなるような描写がたくさんあり、とてもわくわくさせられました」
最新話まで読まれた担当様からは、2巻の『たこパ』や5巻の『舞踏会』、6巻の『対抗戦』なども評価されました。けれどコミカライズの決め手は、初心者が何も考えずに書いた、小説冒頭のシーンでした。
初心者が書いた小説が拾い上げられて、本になり漫画になり、世界に広く羽ばたいていく。まさしく『なろう』ではありませんか。
「加えて、キャラクターの性格をわかりやすく描写されている点も理由のひとつです。初登場時からキャラの個性がわかりやすいことが漫画でも重要なので。冒頭の頑固なグレンからしてもそうですが、少し不憫なライアス、冷ややかなレオポルドなど、魅力的なキャラが多いところが素晴らしいなと感じています」
こんなにほめられるとは思いませんでした。ネット連載ですから、対面してほめられるって初めてでした。
やっぱり直は効きますね。機会があれば他の作家さんにもぜひ、編集部訪問をオススメします。癒されます。
「コミカライズするのなら、一人の自立した女の子がいろんな出会いでさらに強くなり、世界を広げていく話がいいなと考えていたことも大きな理由です」
確かに『魔術師の杖』はまさしくそれでした。どうしてこの作品に打診が来たのか、ようやくストンと腑に落ちました。
本を出したい人はたくさんいて、新しいレーベルもどんどん創刊されています。だから「出版社がほしがる作品の傾向」とか「今はこういうのが好まれる」とか一生懸命考える人もいるけれど。
実は出版社の人も、作品を見つける時って、一読者とそう変わらない。
冒頭で引きこまれて、文章から場面を思い描いて、キャラクターにひかれて、「これが漫画になったら」と想像して……。
その根底にあるのは、作品への共感でした。
私が一生懸命やったのは、小説を書くことだけでした。たまたまその内容に共感してくれた人がいて、これを本にしたい、漫画で見てみたい、と思う人が時間をおいて現れたのです。
なろうでもカクヨムでも、作品は出版社が見つける前に、誰かが見つけてイイねをします。そうやって読者さんたちが、ポチリポチリと押し続けた延長線上に、出版社との出会いが転がっていました。
それがやはりWEB小説らしいかな、と思います。









