第94話 アメリカ内戦勃発
『時は来た! 今こそ偉大なるステイツを無法者どもから解放し、法の光をもって照らし出すのだ!』
ホワイトハウスから放送されたラジオ演説に全米が震撼した。
第30代大統領ジョン・ウィリアム・デイビスは、この日をもって明確にアメリカを牛耳る裏社会に反旗を翻したのである。
『畜生、何処に行きやがった!?』
『探せ! そう遠くに行ってはいないはずだ!』
ラジオを聞いて駆け付けたギャングが目にしたものは、無人となったホワイトハウスであった。演説はレコード盤を再生しただけであり、デイビスと閣僚たちはいち早く脱出していたのである。
『テッド君。アメリカで大統領演説が始まっているぞ。内容は国民に蜂起を訴える内容らしい』
1935年1月某日午後10時。
ベッドに潜り込んでいたテッドは、英国宰相ロイド・ジョージからの国際電話で叩き起こされていた。
「始まりましたか。まさか本当に内戦を起こすとは思いませんでしたよ」
テッドは思わずため息をつく。
4年前から準備が進められていたことは知ってはいたものの、彼自身は半信半疑だったのである。
『こうなってしまった以上、最悪の事態を想定する必要がある。情報収集を急いではいるが、そちらでも何か分かったら伝えてくれたまえ』
「分かりました。こちらでも探りを入れてみます」
受話器を置いた後のテッドの行動は早かった。
MI6のエージェントを緊急動員して、モルガン商会の息がかかっている議員や商会への監視を強化したのである。
「もしもし? あぁ、自宅に帰ってないかと思ったからそっちにかけたけど繋がってよかったよ」
もちろん、内閣調査部に一報入れることも忘れていなかった。
同盟国として当然の対応と言える。
『わたしだって、好き好んで残業しているわけじゃないんですけどね……』
電話先の眼鏡君――もとい、内閣調査部部長はぶーたれる。
こんな時間にも関わらず彼は残業中であった。
「今、本国から連絡があった。アメリカで内戦が勃発したらしい」
『!? 分かりました。至急対応を協議します』
電話を切った調査部長は、デスクに置いてあるボタンを押し込む。
このボタンは非常招集スイッチであり、ボタンを押すと所属する部員の電話に自動コールがかかる。電話を取らないと延々とループする社畜仕様であった。
「犬養総理。アメリカが内戦に突入したとの噂が流れていますが、我が国としてはどのような対応を取るおつもりでしょうか?」
数日後。
帝国議会において、野党民政党議員からアメリカ内戦についての質問がなされていた。
情報が公開されていないにも関わらず、民政党のアメポチたちはアメリカが内戦に突入したことを知っていた。親しくしているモルガン商会から知らされていたのである。彼らとしては、アメリカ内戦を議会で公表して与党側に揺さぶりをかけるつもりだったのであるが……。
「米国から正式に要請があれば検討はします。現状では、それ以上のことを申し上げられません」
対する総理大臣犬養毅の返答は淡々としたものであった。
完全に想定外の質問だったはずなのに、まったく動揺していなかったのである。
「今、この瞬間にも米国の罪なき市民たちが被害に遭っているかもしれないのですよ!? 我が国から救いの手を差し伸べるべきでは!?」
苛立ちを隠そうともせずにアメポチたちはさらに言い寄る。
その余裕ぶった髭面が気に入らなかったのである。
「こちらをご覧いただきたい。この書面は4年前に届けられたアメリカ大統領の親書であります」
「「「なっ!?」」」
驚愕するアメポチたち。
犬養が懐から取り出した書面は、かつてリンドバーグから手渡された大統領親書だったのである。
「……と、このように内戦なので手出しは無用とはっきりと明記されております。これに逆らうのであれば我が国は内政干渉のそしりを受けることになるでしょう」
「「「ぐぬぬ……」」」
もはやぐうの音も出なかった。
さしものアメポチたちも、これ以上の反論が無意味なことを認めざるを得なかったのである。
「号外っ! 号外だよっ!」
国会での質疑応答から1週間後。
日本国内のメディアはアメリカ内戦を報道し始めていた。
「内戦の影響でフィルムの輸入が途絶えるのでは?」
「今の内に輸入出来るだけ輸入してしまおう」
「現地駐在員の退避も考えないと……」
この状況に慌てたのが国内の映画業界であった。
特に松竹と東宝はアメリカから輸入する洋画で莫大な利益を叩き出していたため、対応が急務となったのである。
「現地法人をメキシコに移動しよう」
「確か国境近くに街があったはずだ」
「これは我が社だけの問題ではない。松竹さんとも協力するべきだ」
東宝と松竹は協議したうえで現地法人を国外に退避させた。
新たなフィルム買い付けの拠点は、メキシコのティフアナに設置されたのである。
ティフアナは、アメリカとの国境に接する最北端の街である。
サンディエゴまでは車で15分、ロサンゼルスでも3時間足らずの距離であるため取引を続けるには程よい立地であった。
史実ではシーザーサラダ発祥の地として有名なティフアナであるが、当時は日本人は珍しい存在であった。この世界の日本は海外への移民に消極的(一部例外あり)であり、これまで現地には数えるほどしか日本人はいなかったのである。
『久しぶりの特ダネだ。何が何でもモノにするんだ!』
日本の商社マンの次に進出してきたのが、取材記者たちであった。
この時代の新聞は特ダネのためならば手段を選ばない。彼らは特ダネ欲しさに国境を越えてアメリカの内戦を取材し続けたのである。
「GO!GO!GO!」
「MOVE! MOVE!」
普段は観光で賑わう砂浜に上陸用舟艇が続々とビーチングする。
解放されたバウランプからは海兵隊員が吐き出されていく。
デイビスによるラジオ演説と同時刻。
キューバのグァンタナモ基地に秘匿されていた海兵師団はマイアミビーチに上陸していた。
「な、なんだこいつら!? てめえら、俺たちが誰だとぐわっ!?」
「畜生!? 応援を呼べ! このままだと突破されるぞ!?」
「ふざけんな! トミーガンでこんな奴ら相手に出来る訳ないだろ!?」
上陸した海兵隊が目指したのは、この時代のマイアミではほぼ唯一の摩天楼。
縦だけでなく横にも広い巨大ビルディングは、マイアミ市でもっとも有名かつ恐れられている地元ギャングの総本部であった。
「ギャングどもを駆逐しろ。ファイアー!」
「射程はこっちが長い。撃ちまくれ!」
トンプソンで応戦するギャングたち対し、海兵隊はスプリングフィールドM1903小銃で対抗した。手数はともかく、45ACPと30-06弾とでは威力も射程も比較にならない。地元でイキっていた田舎ギャングは、海兵隊に一方的に蹂躙されることになったのである。
「オールクリア! 閣下、制圧を完了しました」
「司令部設営を急げ。時間が無いぞ!」
海兵隊総司令官ジョン・H・ラッセル・ジュニア海兵隊大将が檄を飛ばす。
ギャングたちを駆逐した海兵隊は司令部設営を急いだ。とある人物を迎えるためである。
「大統領閣下。よくぞご無事で」
「なに、ここまで来て簡単に死ぬわけにはいかんからな」
ラッセルと固い握手を交わすデイビス。
裏社会の住民たちがホワイトハウス近辺を血眼になって探しているのを他所に、当の本人は海路でフロリダ入りを果たしていたのである。
「さぁ、我々の手でアメリカを取り戻すぞ!」
「「「アイアイサー!」」」
その場にいた全ての海兵がデイビスに敬礼する。
この瞬間、アメリカ海兵隊はアメリカ解放軍となったのである。
『フロリダを解放したことをここに宣言する!』
解放軍がフロリダを完全制圧したのは1週間後のことであった。
拠点にいたギャングのボスと取り巻きを討ち取ったことで残るは残党のみであり、ほとんど犠牲を出すことなく掃討することが出来たのである。
『なめた真似をしやがって!?』
『奴を生かしておくな!』
『大統領に血の報復を!』
当然ながら裏社会の住民たちは激怒した。
解放軍――というよりも、デイビス個人を抹殺するためだけに部隊をフロリダに送り込んだのである。しかし……。
「ぎゃぁぁぁぁっ!?」
「くそっ!? いつの間にこんな陣地を……」
「装甲車が役に立たん!? 装甲ごと撃ち抜かれちまう!?」
侵攻してきた私設軍は、鉄条網で堅く守られた重機関銃陣地に血祭にされた。
重機関銃の貫通力の前には、ギャングもマフィアも装甲車も意味をなさなかったのである。
「まずは足場固めだ。今後のためにもマイアミの住民を確実に味方にしなければならない」
ギャングを駆逐して無条件で受け入れられると思うほどデイビスは楽観してはいなかった。州民のハートをがっちり掴むべく、徹底的な慰撫工作を開始したのである。
「聞いたか!? 大統領は今後10年間は税金を払わなくてよいって言ってるぞ!?」
デイビスの慰撫工作で特筆すべきは10年間の無税化であった。
不正蓄財していた地元のギャングやマフィアの財産を没収することで財源に充てることにしたのである。
「うわ、どうみても銀行にある大金庫じゃないか。こんなのがなんで個人の邸宅にあるんだよ?」
「中は札束とゴールドと宝石だらけだ!? ちょっとくらいネコババしても……」
「おい馬鹿止めろ!? 誰かこいつを軍警察に突き出せ!」
「冗談だよ!? 本気にするな!」
犯罪も脱税もやりたい放題なので、地元ギャングの不正蓄財は膨大なものであった。マイアミ州政府の予算を軽く10年は賄えるだけの金額を解放軍は没収することが出来たのである。
『もはや復興債は意味をなしていない。復興債のデフォルトを宣言する!』
これに加えて、デイビスは復興債のデフォルトを宣言した。
連邦政府の予算を圧迫していた莫大な償還から逃れることが出来るだけでなく、購入者の大半である裏社会の住民たちの収入も絶てる一石二鳥の良策であった。
「ちゃんと法律で裁いてくれるってよ。もうギャングどもに頭を下げなくて良いんだな!?」
「もう恐喝に怯えなくていいのね!?」
司法と警察の復活も住民たちから歓迎された。
地元ギャングたちの横暴ぶりにストレスを溜め込んでいたのもある。
しかし、肝心のマイアミ警察と裁判所はギャングと組んで癒着と汚職のオンパレードであった。そのため、開放地域の治安の大半はMPが担うことになったのである。
「……今こそ共産主義によって、労働者の、労働者による、労働者のための国家を建設せねばならないっ!」
1935年3月某日午前10時。
アメリカ共産党総書記レフ・トロツキーは、州都オースティンのテキサス州会議事堂で決起宣言をしていた。
『革命軍だと? 相手にするのは後回しだ。まずは社会のクズどもを粛清せねばなるまい』
『裏切り者のデイビスだけでも頭が痛いというのに、ここにきて新たな敵だと!?』
トロツキーの決起宣言は、大統領陣営と裏社会の住民に衝撃を与えた。
まさか第3勢力が出て来るとは夢にも思っておらず、その影響はアメリカ以外にも波及していったのである。
『アメリカの内乱に世界が注目している今なら、余計な横やりも入るまい。準備を急ぐのだ!』
トロツキーの決起宣言を知ったスターリンは激怒したが、怒りが1周したのか逆に落ち着きを取り戻した。アメリカ内戦勃発から1週間も経たないうちに、ソ連は再びドイツ帝国と二重帝国諸国連邦との間で戦端を開くことになるのである。もっとも、今度は逆に先手を取られることになるのであるが。
『このタイミングで独ソ戦が再開されただと!? アメリカ内戦に気を取られ過ぎたな……』
『宣戦布告から5分後に攻撃開始とか、ヴィルヘルム2世はよほど前の戦いを恨んでいたみたいだな』
『世論誘導も終わっていない現状では、表立って支援することは出来ん。ドイツから手を出したということは、それなりに勝算はあるのだろうが……』
実際、英国の初動が鈍ったのでスターリンの判断は間違ってはいなかった。
その分、ソ連側が有利になったとも言えなくもない。しかし、それが勝利に結びつくかは別問題である。先手を取られる形となったソ連は、序盤は猛烈な勢いで押されることになるのである。
『これって、ひょっとしてH〇I2の共産アメリカルートじゃ?』
『共産アメリカルートが実現したら、平和補正撤廃待った無しじゃないですかヤダー!?』
『リアルチートがさらにヤバくなったら、この世界の英帝さまでも勝てないんじゃないかな……』
日本においては、現時点でアメリカ内戦について懸念する人間は少なかった。
民政党のアメポチが大統領親書で黙らされた以上、平成会の歴史シュミレーションオタクが見当違いな心配をしているくらいであった。
「……同志トロツキー。かねての予定どおり、カンザス、オクラホマ、アーカンソー、ミシシッピ、ルイジアナは我らと共にあります」
「うむ。まずは順調といったところか」
トロツキーは側近の報告に満足げに頷く。
決起する前からテキサス周辺に政治工作を仕掛けており、その影響力は急速に増大していたのである。
「これ以上の戦いは無意味だ。わたしの部下としてこれからは力を振るってくれまいか?」
「も、もったいなきお言葉……!」
トロツキーは支配地域のギャングやマフィアを自らのカリスマで服従させていった。問答無用で殲滅した解放軍とは大きく異なる点である。ゲームで例えるならば解放軍がチェスで、革命軍は将棋といったところであろうか。
同じ裏社会の住民でも都市部と田舎では大きく違う。
都市部では好き勝手やらかして市民たちから恨まれていることが多いが、田舎では不足するインフラを補うために自警団や消防団を兼ねるなど生活に根付いていることが多かった。
そんなわけで、田舎ギャングを服従させても住民から反対されることはまず無いと言える。もちろん悪辣なのも存在するし、そういった連中を処罰するのにトロツキーは躊躇することは無かったのであるが。
「ここは銀行か? こんなのがなんで個人の邸宅にあるんだよ?」
「中は札束とゴールドと宝石だらけだ!? ちょっとくらいネコババしても……」
「同志、再教育が必要なようだな?」
「じょ、冗談ですってば!?」
「押収した金品は全て集めろ。革命軍を強くするために必要なのだ」
押収した金品の扱いも解放軍と違う点であった。
10年間の無税化という形で市民に分配した解放軍とは違い、革命軍は自軍の強化を最優先していたのである。
「よし、この工場は戦車の生産に使えるな」
「こっちはライフルの生産に向いてるぞ」
「ホントにこの国は祖国に比べて恵まれているよなぁ……」
ソ連から逃げて来た技術者たちは、革命軍が支配した地域に真っ先にやって来た。彼らからすれば、アメリカの片田舎の工場でさえ恵まれていると思えてしまう。貧乏性な技術者たちの創意工夫によって、あっという間に兵器工廠に早変わりしてしまうのである。
「そんなへっぴり腰じゃ殺せんぞ! 気合入れんか!」
「もっとしっかり狙え! 兵士は畑から取れるが弾丸は有限なんだぞ!」
「もっと革命軍としての自覚を持て! そんなことでは世界革命は成し遂げられんぞ!」
支配地域で志願兵を募るのも革命軍の特徴と言える。
プロの軍人である海兵隊が主力の解放軍とは違い、革命軍の主力は民兵なのである。
その意味では革命軍は裏社会の私設軍隊に近いものがある。
トロツキーのカリスマで成り立っているのが革命軍、ビジネスライクな傭兵が裏社会の私設軍と言えよう。
革命軍はテキサス州を中心に勢力を拡大していった。
トロツキーは、東海岸ばかりに目が向いているデイビス政権に不満を持つ諸州をうまく取り込んでいったのである。
秘密協定『米ソ貿易協定』によって南部諸州にはスラブ系移民が大量に植民しており、彼らはトロツキーを神の如くあがめていた。革命軍は彼らを取り込むことによって、急速に勢力を拡大していくことになる。
「同志トロツキー。お呼びでしょうか?」
1935年5月某日。
テネシー州ナッシュビルに置かれた革命軍の政庁にトハチェフスキーは出頭していた。
革命軍は南部を中心に支配地域を拡大していた。
結果的ではあるが、東海岸沿岸州での支配を拡大する解放軍とは住み分けが出来ていたのである。
「よく来てくれた。早速で悪いがこれを見て欲しい」
「こ、これは……!?」
「偽装国債とは上手く考えたものだ。まさに錬金術であるな」
「どうやって海軍の再建が出来たのか疑問でしたが、まさかこのようなカラクリがあったとは……」
書面に記されていたのは、メラ手形に関するものであった。
これまで調達してきた莫大な金額が詳細に記されていたのである。
「だが、どのような形であれ国債であれば償還する必要がある」
「……何が言いたいのですか同志?」
トハチェフスキーは軍事の専門家ではあったが、経済はからきしであった。
専門外のことを考えてもしょうがないので、トロツキーに説明の続きを促す。
「解放軍のスポンサーは知らん。少なくともギャングやマフィアじゃなかろうが、そんなことはどうでもいい。問題は解放軍はスポンサーの意向に逆らえないということだ」
「ますますもって分からないのですが……」
持って回った言い回しに、ますます困惑してしまう。
トハチェフスキーは軍事の専門家ではあったが以下略。
「さっきも言ったが、この莫大な金を回収する必要がある。支配地域で財産を接収しているのはその一環なのだろうが、とても足りるものではないだろう」
「確かにこの金額は、ちょっとやそっとじゃ回収は難しいでしょうな」
現実離れした数字を見てため息をつくトハチェフスキー。
その金額は連邦政府の20年分の予算に匹敵していたのである。
「この金額はアメリカの国富を全て収奪しても到底賄いきれるものではない。仮にそれをやったとしたら解放軍のイメージも地に落ちるだろうがな」
「ますますもって、無理筋ではないですか」
メラ手形で調達した莫大な金額は、あくまでも前借りに過ぎない。
しかし、まともな手段では償還は不可能。ではどうするか?
「だから他国から収奪する必要があるのだ」
「なるほど……って、えっ?」
答えは『他国から収奪する』である。
トハチェフスキーは困惑してしまったが、自国でなんとか出来ないなら他国を頼るしかない。
ちなみに、メラ手形の原型である史実のメフォ手形も同様の経緯を辿っていた。
史実のナチスドイツはメフォ手形の大量発行で経済が破綻寸前になったとき、二つの選択肢が存在した。
1.軍備増強を抑制して経済と財政を持続可能な軌道に復帰させる。
2.戦争に突き進み、占領地からの収奪に解決策を見出すこと。
2の選択肢を史実のナチスドイツが選んだのは言うまでもない。
この世界のアメリカも同様の選択肢を取るしかなかったのである。
「そして、収奪するなら資源豊富で軍が弱体な場所を狙うだろう」
「……なるほど、南米ですか」
ようやく合点がいった表情となるトハチェフスキー。
アメリカの裏庭たる南米諸国ならば収奪し放題である。
「おまけに攻撃する理由はいくらでもある。なんだったら、でっち上げてもよい」
「もはや、なりふり構ってられませんからな……いや、ちょっと待って下さい同志トロツキー。それって下手をしたら我々も巻き込まれることになりませんか!?」
解放軍が南米に至るには南部地域を経由しなければならない。
つまりは、革命軍が支配している場所に解放軍が殺到するのは確定した未来なのである。
「だからこそ、解放軍相手に正面切った戦いを仕掛けてはならんのだ」
「そういうことならば、もう一方の敵を叩くのに専念しましょう。可能なら挟み撃ちにしてしまいたいところですな」
このことが原因で革命軍は私設軍を優先的に攻撃することになった。
戦場で解放軍にエンカウントしても、可能な限り戦闘を避けることに腐心したのである。
『南米は裏社会の住民たちの薄汚れた裏庭である。我が国が健全に発展するには、これをクリーンにする必要がある!』
トロツキーの予言は後に的中した。
デイビスは突如声明を発表し、解放軍は南部諸州を経由して南米に殺到することになるのである。
「連中はリッチモンド・ヒル近辺に布陣しています」
「のこのこ来やがったか!」
「来るなら来てみろ! 今度は徹底的に叩き潰してやるぜ」
ジョージア州南東部の港湾都市サバンナ。
北側を流れるサバンナ川はサウスカロライナ州との州境であり、人口も2番目に多い要衝である。
ここに立てこもる私設軍は、街の防備を徹底的に固めていた。
前回やられた意趣返しとばかりに要所要所に堅固な機関銃陣地を築いており、万全の体勢で迎え撃つつもりだったのであるが……。
「……なんだ? 飛行機か?」
「おい!? なんかばら撒き始めたぞ!?」
「落ち着け! 爆弾じゃない。宣伝ビラのようだな」
突如としてサバンナ上空に飛来した複葉機はビラを撒き始めた。
爆弾でないことに安堵した私設軍であったが、ビラの内容を確認したとたんに青ざめる。
「午後1時に戦艦4隻による艦砲射撃を実施!? そんなことしたら街が更地になっちまうぞ!?」
「隊長、ビラを見た市民たちが我先にと逃げ出しています!?」
「くそったれが!」
私設軍の隊長は思わず毒づいていた。
いざという時は市民を盾にしようとしていたのに、ご破算にされてしまったのである。
「野郎ども落ち着け! ブラフに決まっている。市民の味方を自称する解放軍の奴らがそんなことするはずがない」
浮足立つ私設軍であったが、隊長はまだ冷静さを失っていなかった。
かつては陸軍で将来を嘱望されていた男である。裏社会に身を落としてはいるものの、怜悧な頭脳は健在だったのである。
「た、隊長!? 沖に戦艦がやってきました! 4隻です!」
しかし、部下の絶叫が聞こえた時点で籠城するプランを捨てざるを得なかった。
この状況で籠城するなんて言おうものなら、部下たちにその場で裏切られかねない。私設軍は装備も練度も充実はしているが、所詮は金で動く傭兵に過ぎないのである。
「このままだと艦砲を喰らっちまうぞ! だが、まだ時間はある。慌てずに退避しろ!」
隊長の命令で、私設軍は一斉に退却を開始した。
多少浮足立ってはいたものの、大隊規模が整然と移動する様子は練度の高さを証明していると言えるだろう。
「艦長。観測機より入電です」
艦橋で通信兵からの電文を受け取る艦長。
サウスダコタ改級『イリノイ』は、僚艦3隻と共にサバンナから東に10kmほど離れた沖合に停泊していた。
「……市街地を焼かずに済みそうだな」
電文に目を通した艦長は安堵のため息を漏らす。
いくら作戦のためとはいえ、街を焼き払うことに心理的抵抗感があったのである。
「奴らが市外に退避したからと言って終わりでは無い。火力支援の要請もあるやもしれぬ。引き続き偵察するよう観測機に伝えろ」
「アイアイサー!」
イリノイ以下、4隻のサウスダコタ改級は砲身を旋回させる。
解放軍が沿岸沿いに侵攻するのは戦艦の火力支援を受けるためであった。この事実を知った私設軍が沿岸都市での籠城戦を放棄したのは言うまでもないことである。
「連隊長、斥候に出していた小隊が帰ってきました。敵はメルドリム方面に撤退中とのことです」
リッチモンド・ヒル付近に布陣する第5海兵連隊。
その司令部では、連隊長が部下から報告を受けている最中であった。
(メルドリムか。こっちに向かって来てくれれば火力支援も要請出来たんだがな)
連隊長は微妙な表情を浮かべる。
しかし、それも一瞬のことであった。
「追撃するぞ。出撃を急がせろ!」
「アイアイサー!」
市民の味方を自認する解放軍としては、都市の破壊はなるべく避ける必要があった。それ故に私設軍が市街地からの撤退することは歓迎すべきことであった。しかし、私設軍はギリギリ艦砲が届かない範囲を見切って撤退していた。おかげで味方戦力の消耗は避けられなくなったのである。
「ここは危険です牧師さま。早く退避を!」
「あと1時間でここは更地になってしまうんですよ!?」
サバンナ市内に建てられたアメリカ正教会の修道院。
その礼拝堂では、信徒たちが牧師を必死に説得していた。
「わたしは片付けないといけないものがある。君たちは先に逃げなさい。心配ない。わたしも必ず合流するから」
そう言って、牧師は信徒たちの避難を促す。
なんのかんの言って命は惜しい。信徒たちは心配しながらも急ぎ足で去っていった。
「さて、と……」
牧師は礼拝堂の祭壇の裏側を弄繰り回す。
ガタンと音を立てて出て来たのは、小ぶりな無線機であった。
「本日午後1時に解放軍はサバンナ市街を艦砲射撃するビラを確認。立て籠もっていた私設軍は市外に撤退中」
『そこは危険だ。ただちに撤収しろ』
「了解」
牧師は革命軍のエージェントであった。
普段は牧師として活動しつつ、信徒の相談を引き受けるついでに市井の情報収集を行っていたのである。
アメリカ正教会は革命軍の情報機関として活用されていた。
1000万人もの信徒たちの何気無い会話を収集して分析することで、革命軍は貴重な情報を得ていたのである。
現在のアメリカ正教会は革命軍の支配下であった。
この世界のアメリカ正教会は、早い段階でトロツキーの手に落ちていたのである。
呉越同舟な新興宗教を手名付けることなど、トロツキーからすれば赤子の手をひねるようなものであった。人心を掌握し、共産色を薄めさせるのにアメリカ正教は利用されていたのである。
「気取られてはいないな?」
「はい閣下。今のところ双方に動きはありません」
ジョージア州ウィリー付近の大農場。
敬虔なアメリカ正教信徒の手引きのおかげで、革命軍は発見されることなく潜伏していた。
「それはそれとして、閣下自ら出られることは無かったのでは?」
「この程度なら我らでも問題なくやれます」
「閣下の薫陶を受けたわたしたちを信じてください」
口々に閣下――ミハイル・ニコラエヴィチ・トハチェフスキー革命軍元帥に言上する側近たち。その様子は真剣に彼の身を案じているように見えた。
「まぁ、そう言うな。これは政治的な意味合いが強いからわたしが出ないわけにはいかないのだ」
「「「あっ……」」」
トハチェフスキーの言葉で全てを察する側近たち。
赤いナポレオンが劇的な勝利をあげることに意味があったのである。
『本日午後1時に解放軍はサバンナ市街を艦砲射撃するビラを確認。立て籠もっていた私設軍は市外に撤退中』
「そこは危険だ。ただちに撤収しろ」
『了解』
息をひそめること数日。
サバンナ市街に潜伏しているエージェントから通信が届く。
「よし移動するぞ。奴らが艦砲射撃の射程から逃れるとしたらここしかない」
トハチェフスキーはテーブルに広げられた地図の一点――メルドリムを指差す。
その様子に一点の迷いも無かった。
「「「Ураааааааа!」」」
T-1軽戦車を先頭に、SD-1自走砲と兵士を載せたトラックが続く。
完全に機械化されている革命軍は戦場まで迅速に移動してみせたのである。
「陣地展開を急げ!」
「戦車隊突撃用意!」
「トラック総員乗車。急げ!」
革命軍はメルドリム付近に到着するや否や、合戦準備を推し進めた。
自走砲は砲列を整え、戦車隊はいつでも突撃出来るようにスタンバり、兵たちは輸送トラックに乗り込む。
「相手にするのはギャングどもだけだ。解放軍には絶対に手を出すな。これは厳命だ!」
「了解です閣下。腕がなりますな」
「日ごろの訓練の成果をお見せしましょう」
不敵な笑みを浮かべる側近たち。
ソ連脱出時は若造だった彼らも、トハチェフスキーの薫陶を受けて一端の将として成長していたのである。
「照準完了しました!」
「よし、撃てぇーっ!」
号令と共に自走砲が砲撃を開始する。
40口径76mm野砲が次々と私設軍に着弾する。
「くそっ!? どこから撃ってきた!?」
初弾を生き延びた隊長であったが、私設軍は大混乱に陥っていた。
革命軍は迅速な移動と陣地構築で最大限の奇襲効果をあげていたのである。
「どうにか、やり過ごせたか……って、なんだあの土埃は?」
「大変だーっ!? 戦車が!? 戦車が突っ込んでくるぞぉぉぉぉっ!?」
「「「なんだとぉぉぉぉぉっ!?」」」
砲弾の雨が終われば、T-1軽戦車が間髪入れずに最高速で突撃してくる。
砲撃で完全に浮足立った状態では、対応することは不可能であった。
トハチェフスキーが取った戦術は、変則的な縦深攻撃と言えるものであった。
そのようなことが出来るのは、彼自身が縦深攻撃を『縦深戦術理論』として理論化してるからに他ならない。
前線の敵部隊のみでなく、その後方に展開する敵部隊を連続的に攻撃することで敵軍の防御を突破する。その後に敵軍を包囲殲滅してしまうのが本来の縦深攻撃である。
圧倒的な戦力による縦長の隊形での連続的な攻撃と長距離火砲や航空機による敵後方に対する攻撃に加え、空挺部隊などによる退路遮断を組み合わせることが縦深攻撃を実現する最低条件と言える。
しかし、トハチェフスキーが率いる革命軍には圧倒的な戦力など存在しない。
縦長の陣地を構築する時間も無いし、退路遮断する余裕もない。ではどうするか?
答えは『砲撃で浮足立ったところに戦車隊を突撃、一撃離脱させてから再度砲撃して戦車部隊を突撃するのを繰り返す』である。縦深を確保出来ないならば攻撃回数を増やせば良い。じつにシンプルな結論と言えるが、それを実現出来るかは別問題であろう。
「な、なんだぁ……!?」
「どっから撃って……いや、撃ち終わったら戦車が突っ込んできたぞ!?」
「って、もう離脱してる!?」
すぐ傍に布陣していた第5海兵連隊は困惑していた。
いきなり砲撃が始まったと思ったら、戦車が突撃して引き上げたかと思ったら、再度砲撃をして以下略。3ループするころには私設軍は跡形もなく壊滅してしまったのである。
「うわ、酷ぇなおい。砲撃と戦車のチャージで原型が残ってる死体を探すのがムズイんだが?」
「おぇっぷ。俺、吐きそう……」
私設軍は海兵たちの目の前で無惨な屍を晒していた。
時間にして10分足らず。彼らの目の前で1個大隊以上の兵力が壊滅してしまったのである。
『赤きナポレオンは健在。ギャング共を一方的に殲滅』
革命軍の戦果とトハチェフスキーの活躍は大々的に報道された。
世界中に革命軍の存在を知らしめることになったのである。
「なぁ、聞いたか? 解放軍がこっちに向かってるってよ」
「解放軍って、あれか? 確か税金払わなくてもいいんだよな?」
「デカい顔してるチンピラどもがいなくなるなら大歓迎だぜ!」
大統領の演説から半年あまり。
東沿岸州に住む人々に最もホットな話題は解放軍に関する話題であった。
開戦以来、解放軍は私設軍に対して連戦連勝であった。
フロリダ半島から北へと順調に支配地域を拡大していたのである。
「ギャングどもから押収した金品を配ってるらしいぞ!」
「やつら溜め込んでいるからな。俺らも大金持ちだぜ!」
「マジか!? こらは解放軍を応援せざるを得ないな……!」
ギャングやマフィアに抑圧されていた分、民衆の解放軍への期待はうなぎ上りであった。しかし、高すぎる期待は憂慮すべきデマを生んでいた。
デマがデマを呼んで、終いには取り返しがつかないことになる。
解放軍は責任の所在を明白にするために、一部の部隊を処罰せざるを得ない状況に陥ったのである。
「くそっ!? あいつら手を組んでやがるのか!?」
「挟み撃ちとは卑怯だろ!?」
民衆が盛り上がる一方で、裏社会の住民の尖兵たる私設軍は頭を抱えていた。
彼らが想定もしていなかった理由で敗退を重ねていたからである。
私設軍が一方的に敗退している理由。
それは、解放軍と革命軍に挟撃されていることが原因であった。
私設軍の兵の練度は非常に高いものがあった。
大金でスカウトした陸軍の優秀の人材が徹底的に訓練を施したのである。練度が高いのも当たり前と言える。
正面装備も私設軍は充実していた。
金欠な陸軍とは違い、彼らのスポンサーは金持ちであったからこれも当然と言える。
しかし、彼らの常識は第1次大戦で止まっていた。
私設軍は情報管理の重要さを理解していなかったのである。
革命軍はアメリカ正教の信徒を情報収集の手段に用いていた。
アメリカ正教の信徒は東海岸で急速に増大しており、あらゆる場所に彼らの目が存在している。私設軍の行動は筒抜けだったのである。
地の利を生かして解放軍を待ち受けていても、何処からともなく現れた革命軍に奇襲を喰らってしまう。体勢を崩したところで解放軍に殴られると精鋭の私設軍でも為すすべが無かったのである。
「このままだと摺りつぶされてしまうぞ。何か良い手はないのか!?」
「強制徴募するしかないが、促成栽培の兵など連中相手には弾除けにしかならんぞ」
解放軍と革命軍と比較して兵の数が不足しているのも問題であった。
私設軍は兵士の練度は非常に高かったが、育成するのに金と時間がかかっている。失われると簡単に補充出来ないのである。
「おまけに、不利になったらすぐ逃げるしな」
「なまじ実戦慣れしているだけ、戦場の機微に敏感だ。これが新兵なら不器用でも戦い続けるんだがな……」
私設軍の兵士は各地の紛争地帯に派遣されて実戦経験を積んでいた。
戦場慣れしているので有利な戦闘ならば活躍出来るが、不利と悟れば逃げ腰になってしまうのである。
「信じるか信じないかはともかく、革命軍も解放軍も大義名分を掲げている。しかし、我らにはそれが無い」
「奴らとは違って、堂々と正義を掲げることが出来ないからな……」
「所詮は金で繋ぎ止めているだけだからな。命あっての物種ってやつだ」
私設軍は解放軍や革命軍と比べて決定的に欠けているものがあった。
それは戦うための理由である。大義名分とも言う。
身も蓋もない言い方をすれば、ギャングやマフィアからお給料をもらって命を賭けられるかということである。平時ならば仕事と割り切ることも出来ようが、戦時となればそう簡単にはいかない。実際、紛争が勃発してから私設軍は脱走が相次いでいたのである。
「あれだけ金をかけたのにロクに戦争も出来んのかあいつらは!?」
「ふざけるな金返せ!」
「奴らを縛り首にしろ!」
裏社会の住民は私設軍の体たらくに激怒していた。
高い金を出したあげく、連戦連敗では当然とも言えるが。
「解放軍は兄弟たちの財産を接収しているらしい」
「このままだと我らの財産も奪われかねん」
「今のうちに財産を他所に移すことも考えなければいかんか」
裏社会の住民たちは、解放軍の行状に危機感を抱いていた。
このままでは自分たちの財産が脅かされると考えたのである。
「何処に移すというのだ?」
「普通に考えればスイス銀行だろう」
「そうと決まれば急いだほうが良いな」
1936年になると莫大な金額がスイス銀行に送金されることになる。
その金額は連邦政府の10年分の予算に匹敵すると言われ、アメリカの国富は海外に流出していったのである。
以下、今回登場させた兵器のスペックです。
スプリングフィールド M1903
種別:軍用小銃
口径:7.8mm
銃身長:610mm
使用弾薬:30-06 スプリングフィールド弾(7.62x63mm)
装弾数:5発
全長:1115mm
重量:3900g(弾薬除く)
発射速度:毎分15発/分
銃口初速:823m/s
有効射程:500m
解放軍(海兵隊)の主力小銃。
史実のM1903そのものである。
大量の小銃を短期間に行き渡らせる必要があったため、技術的に枯れた本銃が採用された経緯がある。自動装填機構を組み込んだものが試作されているが、採用されることなく終わっている。
※作者の個人的意見
M1ガーランドを登場させても良かったのですが、半自動ライフルじゃ火力の底上げにあまり貢献しないと思ったので却下しました。どうせやるなら、一気にM14相当のバトルライフルを出したいですし。それまで解放軍の命脈があれば、ですが……。
サウスダコタ
排水量:43200t(常備)
全長:208m
全幅:32m
吃水:10.1m
機関:蒸気ターボ電気推進4軸推進
最大出力:60000馬力
最大速力:23ノット
航続距離:12ノット/7000浬
乗員:1120名
兵装:50口径41cm3連装砲4基
53口径15.2cm単装砲16基
50口径7.62cm対空砲8基
53cm水中魚雷発射管単装2基
装甲:水線345mm
甲板64~89mm
主砲塔457mm(前盾) 127mm(天蓋)
司令塔406mm
アメリカ海軍が建造したサウスダコタ級戦艦の1番艦。
同型艦は『インディアナ』『モンタナ』『ノースカロライナ』『アイオワ』『マサチューセッツ』『イリノイ』『ロードアイランド』『ネバダ』『アイダホ』
ヴィンソン計画によって追加で建造されたサウスダコタ級戦艦。
これまでの運用実績により、7番艦『イリノイ』以降は小改良が施されているためサウスダコタ改級と呼称されることもある。
※作者の個人的意見
メラ手形でおかわりが入ったサウスダコタ級です。
10隻で済めば良いんですけどね……(震
T-1軽戦車
全長:4.60m
全幅:2.41m
全高:2.16m
重量:7.50t
速度:70km/h
行動距離:150km
主砲:37mm歩兵砲
副武装:7.62mm機関銃(車体前面)
装甲:5~20mm
エンジン:キャデラック水冷4ストロークV型8気筒×3 マルチバンクエンジン 260馬力
乗員:3名
トロツキー率いる革命軍が開発した新型軽戦車。
非合法な手段で入手したヴィッカース6t戦車を解析して、独自の改良を盛り込んで完成している。
この戦車に求められたのは、とにもかくにも速度である。
性能要求でオリジナルの2倍の速度を求められたために、大出力のエンジンを搭載する必要があった。
しかし、この世界のアメリカでは戦車用の大出力エンジンを入手することは不可能であった。第1次大戦で時が止まっている米陸軍にまともな戦車が存在するはずなかったのである。
悩みに悩んだ革命軍の技術陣が目を付けたのが、『ニューヨーク・ティンリジー』であった。自動車工場に大量に転がっていたエンジンを利用することを思い付いたのである。
ちなみに、ニューヨーク・ティンリジーは『リンカーン モデルL』の俗称である。
ニューヨークで見かけるティン・リジー(T型フォードの俗称)という意味であり、史実日本で言うならば『六本木カローラ』が当てはまる表現であろう。
オリジナルの3倍近い出力を確保するために、V8エンジンを3基結合するという無茶な構造なエンジンとなった。しかし、現場でのトラブルは意外と少なかった。エンジン単体の信頼性が高かったために、マルチバンク化してもそれほど信頼性が損なわれなかったことが原因と言われている。
T-1は、この時代の軽戦車としては最速であった。
その高速性故に偵察車両として長らく現役であり、退役してからも改造して再利用されることも多かった。
※作者の個人的意見
マルチバンクというのは、エンジンを複数積むことではありません。
複数のエンジンをクランクシャフトに結合して単体のエンジンにしてしまうことです。史実だとM4シャーマンに搭載された直6エンジンを5基結合して30気筒21200ccのエンジンとしたA57マルチバンクエンジンが有名ですね。
それでもV8エンジンの3基結合は無理だろうって?
そんなこたぁありません。ちゃんと前例があります。WW2でオーストラリアが開発していたセンチネル巡航戦車に搭載されていたベリエ・キャデラックがまさにソレで、V8エンジンを3基クローバーのように連結したシロモノだったりします。
ちなみに、この世界のアメリカではギャング&マフィア御用達で高級車のはずのリンカーンが大量生産されています。それこそ、T型フォードの如く巷には大量に溢れているわけです。
当然、リンカーンの廃車も大量にあるわけで、革命軍の技術者は自動車工場に転がっていたリンカーンの使えるエンジンを組み合わせることを思い付いたという設定だったりします。
SD-1自走砲
全長:4.60m(砲身除く)
全幅:2.41m
全高:2.16m
重量:9.85t
速度:40km/h
行動距離:150km
主砲:40口径76mm野砲(砲弾8発)
装甲:5~20mm
エンジン:キャデラック水冷4ストロークV型8気筒×3 マルチバンクエンジン 260馬力
乗員:4名
トロツキー率いる革命軍が開発したT-1軽戦車をベースに改造された自走砲。
史実のアーチャー自走砲よろしく、後ろ向きにオープントップで自走砲を搭載している。ちなみに、SDは自走装置(self-propelled device)の略である。
ベースとなったT-1軽戦車と比べると鈍足になってはいるが、それでも当時の自走砲としては最速クラスであった。搭載砲はソ連のM1902/30 76.2mm野砲をコピーしたものを搭載しており、火力と機動力に関しては画期的な自走砲と言える。
ただし、それ以外の点では問題が多い自走砲である。
オープントップの砲塔は装甲が薄いために場所によっては弾片防御すら不可能であった。
携行弾数が少ないために継戦能力にも欠けているのも問題であった。
こちらの問題に関しては、T-1軽戦車の車体を流用した弾薬運搬車が開発されて多少は改善されている。
※作者の個人的意見
縦深攻撃を実現するには支援火力が欠かせません。
可能ならば史実ソ連ばりの重砲を多数用意したかったのですが、今の革命軍の懐具合ではとても無理なのでお手軽な自走砲を用意してみました。スペック的にはSU-5-1、砲の搭載方法は史実のアーチャーをパクってます。
砲弾が8発しか搭載出来ないので、継戦能力に欠けるのが難点です。
弾薬運搬車が無かったころはどうしたかって?後ろに補給トラックを置いて人力で補給したのですよ。ゲー〇ボーイウォーズア〇バンス状態ですな(爆
フォード モデルAA
全長:5.50m
ホイールベース:4.00m
全幅:1.702m
全高:2.10m
重量:1.8t
速度:45km/h
行動距離:200km
エンジン:液冷直列4気筒ガソリンエンジン50馬力
乗員:3名(最大)
革命軍で使用されている輸送トラック。
完全な民生モデルで、あらゆる用途に使用されている。
※作者の個人的意見
史実フォード モデルAAそのまんまです。
どうしよう、これ以上書くことが無いw
ついにアメリカ内戦が始まってしまいました。
アメリカの最終進化形がどうなるか乞うご期待です。
>リンドバーグから手渡された大統領親書
本編第91話『リンドバーグ来日』参照。
テッド君と犬養総理にそれぞれ渡されています。
>ティフアナ
シーザーサラダ発祥の地。
史実の禁酒法時代には仕事帰りに越境して酒飲みに来てたらしいです。
>この世界の日本は海外への移民に消極的(一部例外あり)
この世界の日本は海外領土が広大なので、そちらを優先しています。
そのため、アメリカにもメキシコにも日系人は絶無だったりします。例外はテッド君が音頭を取ったドーセットと、アメリカ風邪で白人が壊滅したハワイくらいです。
>海兵隊総司令官ジョン・H・ラッセル・ジュニア海兵隊大将
史実だとこの時代の海兵隊は少将が最高位だったりします。
>一部の部隊を処罰せざるを得ない状況に陥ったのである。
史実の赤報隊待ったなしと言いたいところですが、相手が勝手に誤解した点も考慮されて比較的軽い処罰で済んでいます。




