6-24 リコルの秘めたもの
リコルの発言という思わぬ形で知ることになったRAIDERと赤服が繋がった経緯の謎。
リコルは自身の主観ながら自分が知っている事を吐いた。
「最初に父の元にあの人達が現れたときは当然警戒されていた。だけどその人達が見せた、まさに夢のような技術の数々に、そして積まれた大金を前に警戒を解いてしまった」
ランや大吾はリコルの台詞から考えた。
「連中の情報網に引っかかったって事か」
「そこは俺ら次警隊とは早い者勝ち勝負やからな。向こうが先に気付いて他に漏れないように隠蔽するのはお互い様やろう」
二人が次警隊の隊員としての話をしていると、リコルは本題の話を進めた。
「彼等の支援と技術提供もあって、ウイルスの力は兵器利用方面に大きく発展した。
父も次々に手元に入ってくる大金を前にすっかり人が変わってしまい、人を病気から救うはずだった力は、人を怪物にするものに代わってしまった」
リコルは悔しそうにすると、ラン達三番隊が各々に思い返す場面があった。彼等が過去に行った『魚人の世界』。そこで出会ったフジヤマやアキの事を思い出したのだ。
あの二人もまた革新的な医療用として心血を注ぎ開発した科学技術を、裏で目を付けた赤服の一団によって勝手に悪用され、兵器獣を生み出されてしまった。
幸助は怒りが顔にハッキリ表れて声に出してしまった。
「アイツ等、とことん人が救えるはずの力を悪用して! なんで平和利用する考えが起きないんだよ!」
「落ち着け。話の途中だ」
声を荒げる幸助を静めるラン。リコルからの情報を聞き終えたランは、次に彼女に問い詰めた。
「お前、本当に全て知っていたんだな? ジネスにはアイツの事情を知った上で黙っていた」
「それは……」
ランは平然とした顔のままにジネスに対して毒ともとれる台詞を吐いた。
「ジネスのやつ、利用していたと思っていた恋人ですら連中とグルだとは思うまいよ。見事にミイラ取りがミイラになったって訳だ。
お前も、ジネスの恋人としての顔が仮面だったのか。中々にやらしい性格している」
「ラン!」
ランの台詞にユリが怒鳴って止めてきた。彼の言葉を受けたリコルがとても暗い顔をしていたのを見たからだ。
「言い過ぎよ」
「……ま、ここでこいつを責めた所で何にもならないか。色々知れた事だし時間もない」
ランがアイコンタクトを送ると、スフェーが次に発言した。
「確かにこうなると時間がない。すぐにでも突撃しなければならない。それも結晶とそのボス。別れて捜索した方がよさそうだ」
スフェーはランから大吾に視線を移し、大吾は目を閉じて話を繋げる。
「やろうなぁ。ボスについては社長室辺りか? じゃあ俺は南ちゃん一緒にそっちで」
「え? ちょ!」
突然また肩を組まれて困惑する南だったが、直後に零名が大吾に拳骨を喰らわせて倒れさせた。
「零名……南と一緒……お前、邪魔……」
「零名ちゃん」
声をかけて来る南に零名はグーサインを向けてきた。
大吾は不満げな顔を浮かべつつ顔を上げると、幸助に顔を向けて声をかけた。
「ええい、しゃあないな。オイ幸助、今回ばかりはお前と組んでやるわ。サクッと結晶見つけて南ちゃんと合流する形でええな」
「何、その上から目線。まあいいけど」
これで後動きが決まっていないのはラン、ユリ、スフェーの三人。男二人はどちらに付くべきか少し悩んでいた。
「さて、後は俺達だけか。俺は元々の目的である結晶を」
「私はラウスの情報を得るためにも、この組織のボスを捕えにいくべきか」
二人の判断が決まりそうな中、残り一人であったユリが丁度間に位置に立って口にした。
「ごめんみんな! 私はまだ行けない!」
驚く一行、分かりやすく顔を歪ませるスフェー。しかしランだけはそこまで表情に変化がなかった。
「理由を聞かせろ」
ランからの問いかけにユリは一度後ろにいるリコルに目を向けてから再び前を向いて話をした。
「リコルさんと、二人で話をさせて欲しいの」
「分かった」
「即決!?」
ランのあまりにはやい判断に幸助が思わず声を挙げる。逆にスフェーはユリの元に近付いて面白いくらいに首を振りながら拒否した。
「ダメだダメだ! マリーナをこんな危険な場所でこれ以上一人でいさせるわけにはいかない!」
「別に一人じゃないわよお兄様。それに話はすぐに終わらせるから」
ユリの説得に乗ったランがスフェーの服の袖を掴んで後ろに引いた。
「貴様!」
「だそうだぞ。お前の心配も分かるが、ここはシスコン度合いを収めて引いてやれ」
「誰が貴様の命令など聞くか!」
掴んできたランの手を振り払い、またしてもユリに問い詰めようとする。しかしユリはこれに真っ向から立ち向かった。
「お兄様!」
ユリからの覇気のある言葉にスフェーはユリの目を見ると、彼女は同じく目を見て頼んできた。
「お願い。リコルさんと二人で話をさせて!」
大好きな妹からの真っ直ぐな頼み事。スフェーは内心ではとても複雑な気持ちになっていたが、これ以上ユリの頼みを断れるほど厳しい兄にはなれなかった。
「わ、分かった。ただし、少しだけだぞ」
「ありがとう、お兄様!」
瞬間、スフェーの目はカメラが最高の瞬間を撮影するかのように目の前のユリの笑顔を記憶し、脳裏で何度も同じシーンを繰り返させた。
『ありがとう、お兄様! お兄様……お兄様……』
呆けた顔になって固まってしまったスフェーに後ろから幸助がふと声をかける。
「あ、あの~……ユリアーヌ隊長?」
「放っておけ。変態兄貴の思考がテンション上げてるだけだ。お前たちは先に行け。すぐに追いつく」
「え? ランも残るの!?」
ランからの頼み事。結晶を探すことをいつも一番に考える彼が人にその役目を頼むことは珍しい。
「ランが結晶を二の次にするだなんて。一体どうして」
「ユリを置いて行くのが反対なのはこいつと同じだ。だが話はさせてやりたいんでな。ちょっとばかし待っている。
以前は出来ない選択だったが、今は俺の所にも所属している隊員がいるからな」
ランは遠回しながら自分達の事を頼りに思ってくれている。幸助は今の彼の台詞をそう受け止め、何処か心が熱くなった。
そしてランのこの言葉を受けて心が燃えたのは幸助だけではない。もう一人の三番隊隊員である南も、同じ影響を受けていた。
「分かった! 向こうは」
「僕達に任せて! 結晶もボスさんも、しっかり捕まえて来るから!」
「南ちゃん!?」
近くにいる仲間のテンションの上がりように押された幸助が驚いて顔を向けてしまう。
実際に幸助が見た南は目を輝かせて煙が出るように鼻息を荒くしていた。
元々南は学校の優等生生徒会長としてや、影の魔法少女として頼られ続けていた。本人は気付いていないのかもしれないが、頼られるのが好きなのだろう。
「ま、まあそういうことだな。向こうには俺達が先に向かうよ。隊員として、ちゃんと仕事をしてくるさ」
押された勢いを修正しつつランに声をかける幸助。続けて大吾もこれに便乗した。
「頼りがいがありそうやな。これは、ラン達が来る前に終わってるかもや」
「油断、禁物……何があるか、分からない……」
調子に乗りかけた三人に冷静な指摘を入れる零名。彼女の言葉は気合が上がった分緩んでいた緊張感を引き戻してくれた。特に南は緩んでいた表情を自身の頬を叩いて真剣なものに変えた。
「それじゃあ、先に行く」
「出来るだけすぐに来いや。仕事を惜しく手られんのは姉貴のだけで充分や」
そうして幸助達はRAIDER基地に先に向かっていった。
道中、幸助はふと気づいたことに不安げな顔色になり、大吾に指摘される。
「どうした、別れて早々顔色悪くなってんで? ここに来て緊張が強なったか?」
「いや、今になって不安になってきて」
「不安?」
「ランとユリアーヌ隊長、一緒に残してきてよかったのかなって」
「ああ、アイツ等か……まあ大丈夫やろ、なんせ……」
幸助達が移動したのを確認すると、ランは動かないスフェーを引きずって離れていき、ユリとリコルに気兼ねなく話が出来る状況を作った。
「くどいようだが出来るだけ早く終わらせろよ」
「分かってるわ。時間取ってくれてありがとう」
ユリはランに礼を言って離れてもらうと、二人きりになって早速目線を下げたままのリコルに質問をする。
「ジネスさんの事、本当に好きだったんですよね」
「え?」
この状況下にとってかなり異質な質問にリコルが戸惑ってしまうと、ユリは補足を付け加えた。
「あ、いや……監視だ実験だってランは言っていたけど、私にはどうにもそう思い切れなくて。
最初に出会った時からずっと、貴方が本当にジネスさんを大切に思っている気がしたから……」
ユリの言葉にリコルは顔を上げる。
「なんで、そう思うの?」
「貴方がなんだか私と似ているように感じたから、かな?」
「え?」
ユリからの返しに反応に困るリコル。ユリはそんな彼女に核心に触れるようなことを言い出した。
「ジネスさんの事、本当に大切に思っていたんですよね?」
瞬間、リコルは痛い所を付かれたような顔になった。ユリは追撃とばかりに自分の言い分を続ける。
「ヘレティックが現れる度に出現していた白いワンピースの女。あれの正体は貴方だった。つまり貴方はジネスさんが暴れる度に、彼の妹のふりをして現場に姿を見せていたって事になる。
わざわざ何故そんなことをしたのかが、それは彼に自分の犯した事を気付かせないためだった。違う?」
リコルの目線は一度見透かされた事を嫌がるようにユリから逸らしたが、わざわざこの事を聞いて来たユリに対して向かい合おうと視線を彼女の目線に戻す。
「ジネス君は、私の恩人だから……私はそんな彼を、裏切った」
ジネスの話題を口にした途端に自分を責め始めるリコル。ユリはここでふと問いかけた。
「聞かせてもらっていいですか? ジネスさんとのこと。二人がどのようにして出会ったのか……とか」
リコルは散々組織の事について語っておいて今更秘密にする理由もないと判断すると、目線を下げたままに語り始めてくれた。
自身と恋人でありゾンビでもあったジネスとの出会い、そこからの関係について




