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ココラー10 マネージャー

 そして現在。鈴鹿は自分の今のきっかけになった雷太が自分達を危機に陥れた事件の黒幕だと言われている。ラッシュバックした記憶が過ぎ去り、鈴鹿はこんな事を言い出したフジヤマを猛烈に批判した。


「そんなわけない!! 雷太兄がこの事件の犯人だなんて……ありえない!!」

「鈴鹿さん!!」


 前のめりになってフジヤマを問い詰めようとする鈴鹿だったが、隣にいたココラが押さえつけて動きを止めた。対するフジヤマは冷静なまま少し謝罪の様子を見せる。


「落ち着いてください!!」

「知り合いか。単刀直入な台詞に混乱するのも無理はないな、すまない。だが現状、調べてわかった情報では彼が最も怪しいんだ」

「怪しいって、何か分かったんですか?」


 暴れる鈴鹿を抑えて汗を流しつつ問いかけるココラに、これ以上フジヤマにしゃべらせればより険悪ムードになると見たオーカーが彼より前に出て説明を交代した。


「順を追って説明させてもらおう。まず我とフジヤマ殿は先日の事件の録画映像を見て気になる人物が浮かび上がった。それが見慣れない道具を手に持っていた雷太殿だったのだ」


 徐々に落ち着いていたのか暴れなくなってきた鈴鹿。ココラが放しても抵抗はせずに顔を俯かせたまま話を聞いている。

 オーカーは鈴鹿の様子を見てから話の続きを口にする。


「ここ最近の雷太殿の行動について調査した。この家にはもちろん、実家にも連絡はいっていないらしく行方不明。

 分かっているのは先月にGINGAGAME(ギンガゲーム)の入社試験を受けて、失格したことだけだったのだ」


 俯いていた鈴鹿の顔が上がり反射的に台詞が飛び出した。


「雷太兄が! GINGAGAME(ギンガゲーム)の入社試験を受けていた!!?」


 鈴鹿にとってもこの情報は初耳だったらしい。オーカーは追加で説明を入れた。


「ええ、試験の合否が発覚した直後、どういう訳か姿を消したらしいのだ。以来足取りは不明になっている。それが昨夜のステージには現れた。

 理由は分からないが、わざわざ姿を出したのは何か意味がある。そう思って行方を追っているのだ」

「じゃあもしかして、雷太兄が事件に巻き込まれているってことじゃ!!」


 さっきまでとは別の意味で焦り出す鈴鹿。この場から走ってどこかへ行こうとする彼女にココラは声に出して止めた。


「待ってください鈴鹿さん!」

「何よ!! あんなこと聞いて動くなっていうの!!?」

「やみくもに探したって見つかるわけではないです!」

「だからって大切は人に何かあるのを無視していろって言うの!!?」


 鈴鹿が吐いたセリフは、ココラの胸に深く突き刺さった。過去にココラは大切な勇者ととある風来坊が出会った際、旅人に対して交渉材料になりうるものをたまたまココラが握っていた。

 ココラもまた、大切な人を助けるために黙ってみていることが出来ない性分だった。だから今頭鈴鹿の思いは痛いほどわかる。


 ココラが鈴鹿の悩みを何とかしてあげたいと頭を悩ませていると、そばから見ているフジヤマとオーカーはココラよりも現実的に事件の解決のため頭を悩ませた。

 ここで最初に口を開き提案を挙げたのはフジヤマだった。


「……鈴鹿さんが予定通り仕事に出る。というのはどうだ?」


 フジヤマが口にした案。だがそれだどういう事なのか分かっているココラとオーカーはすぐさま反対の声を挙げた。


「ちょっと待てフジヤマ殿! それは鈴鹿さんを自分から危険な目に遭わせる行為だぞ!!」

「そうです! それに仕事中は人が多かった! そんな中でその兵器獣とやらがまた現れでもしたら、今度は怪我人だけでは済まないかもしれません!!」


 オーカー、ココラの最もな言い分。当然フジヤマもこのことは考慮している。だが唯一の手掛かりである雷太の足取りがつかめない以上、餌を巻いておびき出し、罠にはめるのが最も効率がいい方法なのも事実だ。


 他に宛はないものか意見を言い合う三人。だがここで騒動の一番中心核にいる鈴鹿本人が答えてきた。


「やるわ!!」

「えっ!?」

「鈴鹿さん!!」


 鈴鹿の答えに動揺するココラ。オーカーとフジヤマは彼女ほど大きくは反応しなかったが、それでも少し渋い顔をした。

 三人の顔色を確認した上で鈴鹿は自分の言い分を述べ始めた。その目つきは動揺していた先程とは違い、真っ直ぐ一転を捉えている。


「私が今会社を抜け出してまでここに来たのは雷太兄に会うためなんだもの! 私が仕事をして現れるっていうのなら、望むところよ!!

 それに、このまま闇雲に探していたって一向に事件は解決しないんでしょ? だったら私が仕事に出て犯人もやってくれば一石二鳥じゃん!!」


 雷太と犯人を別事として言い張る姿勢。あくまでも雷太は犯人ではないと言い張る構えなのだろう。


「だが、何処から現れるかも分からない。観客まで守るとなると今度こそ人手が足りるか分からないんだぞ!!」


 フジヤマの反論。鈴鹿はこれに怯まず指を差して解決案を立ててくる。


「そこは仕事次第でしょ! 交渉次第ではあるけど、撮影や録音ならあまり人数を多くせずに仕事が出来る! それで現れたのならばよしでしょ!!」


 確かに人数が少ない仕事ならば、フジヤマ達にとっても護衛がしやすく、犯人も炙り出しやすい。

 フジヤマとオーカーは互いに考えたようにして一度視線を別方向に向けたが、顔を見て頷きココラと鈴鹿に伝える。


「分かった。その案を飲もう」

「お主の身は我らが守る。犯人もすぐに捕まえて見せよう!!」


 四人の中で次にとる行動が決まった丁度その時、ココラが喫茶店で見たものと同じような自動車が現れ停止した。

 車から降りてきたのはまたしても鈴鹿のマネージャーとスタッフ達。だが前回とは違い、今回は鈴田自身にとってもベストタイミングだ。


「こんな所にまで抜け出すだなんて……さあ、仕事に」

「仕事に戻ります!!」

「そう、戻って……はい!!?」


 マネージャーは思わず流れに乗ってから変顔をしてしまう。会社から何度も逃げ出した鈴鹿が自分から仕事をしたいと言い出したことがそれだけ衝撃的だったのだろう。


 その鈴鹿はマネージャーが自分の返事に驚いて動じているのを見てからこの隙に畳みかけようと自分側の話を続けた。


「ただし私の言うことも聞いて欲しいです! 私や貴方達だけじゃない、皆のために!!」


 鈴鹿はマネージャーにココラ達と決めた事を説明する。するとマネージャーは落ち着いて来たのか変顔を元に戻したが、その状態で口にした返事は正直鈴鹿にとって意外なものだった。


「ああ、分かったよ。鈴鹿の言う通り、仕事場での人数は極力減らそう」

「え!? 意外とあっさり!!」


 鈴鹿が自分の思っていた台詞を口からこぼしてしまうと、マネージャーは彼女に会社での時より少々優しい声で話しかけた。


「私が会社に完全にへこへこしているとでも思っていたのか? 私だって貴方とはそれなりに付き合いが長い。仲間が危険な目に遭って、自分なりに出来ることがないか頑張っていたんです。

 最も、仕事そのものを中止に出来なかったもので、出せた影響なんて微々たるものでしたが」

「マネージャー……」


 鈴鹿は自分のマネージャーに対しての認識が間違っていた事を思い知った。普段から鈴鹿は雷太の事を優先して頭に浮かべていたがために、他の人にあまり目を向けれていなかったのだろう。

 考えようによっては利益の事しか考えていないGINGAGAME(ギンガゲーム)と大して変わらなかった。


 鈴鹿は気付いた途端に申し訳ない気持ちになり、マネージャーに頭を下げて謝罪した。


「ごめんなさい! 私、貴方の事勝手に会社の事ばかり考えているって決めつけて……配慮が足りなかったのは、私の方だった!!」

「はは、いいんですよ。私のような裏方の仕事は、貴方のような人を目立たせるために影に徹する。そういうお仕事なんですから」

「マネージャーさん……」


 そばで会話を聞いていたココラもまたマネージャーに対しての印象が変わった。マネージャーはココラにも謝罪をしてきた。


「貴方にも、すみませんでした……」

「い、いえ……自分こそ鈴鹿さんにはご迷惑をかけた身ですので」

「それでも、本来関係のない貴方を今回の事件に巻き込んでしまった。それは大変な問題です」


 頭を下げてくるマネージャーにココラは慌てて頭を下げ返した。


「ああ! そんな風にしていただかなくても!!」


 ココラとマネージャーが交互に頭を下げる様子を見て鈴鹿は初めて気づいたことがあった。


「ここまで謝り倒させてたなんて……私、本当にマネージャーに苦労を掛けていたのね」


 鈴鹿の言い分にフジヤマとオーカーは微妙な顔を浮かべて


「いや、謝罪させてしまった事を謝罪してないかあれ?」

「ココラ殿もマネージャー殿も、少々謙虚すぎるのではないか?」

「お前が言えた事じゃないだろ。アキから聞いた話じゃお前……」

「ああぁ!! そのことについては触れないでください!!」


 オーカーはフジヤマからの言葉を思わず素のキャラになりながら叫んでかき消した。このオーカーのリアクションに近くにいた鈴鹿の方が反応する。。


「え、何? もしかして恋愛話?」

「違う!! 違うですから!!」

「キャラがぶれているわよ貴方。もしかしてそっちが素?」


 オーカーは鈴鹿に指摘されて自分の口調が戻っていることを自覚すると、恥ずかしさからか顔を赤くして戸惑ってしまう。


「あ! いや、それは!!」

「うっわめっちゃ戸惑ってる。なんかマズかった?」

「こいつのキャラについては少々事情があってな……あまり触れないでやってくれ」


 フジヤマの台詞によって鈴鹿もオーカーの今の状況に何かしら理由があるものだと察したようで、これ以上に茶化すことはやめた。


 そしてここでの事でとりあえずマネージャーとの悶着には片が付き、話がまとまった一行は迎えにやって来た自動車に乗り雷太の自宅を後にする。


 マネージャーの交渉の努力もあり、実際に案内された仕事場は出来るだけスタッフ数が少なくなるように工夫されていた。

 鈴鹿も自分のわがままの分しっかり働こうといつもよりも気合を入れて素早く準備した。ココラは鈴鹿のそばに、フジヤマとオーカーもスタッフ内に変装して紛れる形で配置に付く。


 何が起こるか分からない鈴鹿の仕事が始まる。

ランの過去話、『FURAIBO《風来坊》STORY0』を番外編として投稿していきますので、是非ともそちらも一読していただけるととても感謝です!!


『FURAIBO《風来坊》STORY0』リンク book1.adouzi.eu.org/n6426it/


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