事前準備
翌朝。
ノエルとの朝食を終えて、自分の部屋に戻って出発準備をしながら、僕は考えていた。
「これからどうしよう」
マザーヴァファローのあの素早さは非常に厄介だ。
対策を練っておかないと、また危険な目に遭う可能性があった。
「物理攻撃・与ダメージ2倍は、なかなかキツいよね」
今の状態だと《あばれ倒し》を2度受けたら、瀕死の状態まで追い込まれてしまうことが分かっている。
となると、攻撃を軽減させるスキルを覚えた方がいいのかもしれない。
水晶ディスプレイを立ち上げると、【補助系スキル】の中から物理攻撃を軽減させるスキルを表示してみることに。
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◆アルファウォール/消費LP30
内容:1バトルの物理ダメージを軽減させる
消費MP5
◆ベータウォール/消費LP90
内容:1バトルの物理ダメージを半減させる
消費MP15
◆オメガウォール/消費LP150
内容:1バトルの物理ダメージを激減させる
消費MP30
◆ソリッドシェルター/消費LP200
内容:1バトルの全ダメージを一定時間無効化する
消費MP5
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「うわぁ、どれも消費LPが高いっ……！」
《ソリッドシェルター》の全ダメージを一定時間無効化するっていうのは魅力的だけど、さすがに消費LP200は高すぎる。
というか現在のLPは81だから、この中だと《アルファウォール》しか習得できない。
結局、いろいろ悩んだ末、それを覚えてしまうことに。
『《アルファウォール》を習得しました』
アナウンス画面を確認してから、一度水晶ディスプレイの操作を完了させる。
「マザーヴァファローの対策はひとまずこれでいいとして……。あとはどんな魔獣がいるのかな」
この前から借りっぱなしになっているダンジョンの詳細が書かれた本を取り出すと、C級ダンジョンの項目の中から【プロケッラ風穴】のページを探し出す。
「……お、あった。えっと、出現魔獣はギルム、マザーヴァファロー、あとはビーストクルーザー？」
この魔獣も初めて名前を知る。
これまでC級ダンジョンで遭遇したことのない魔獣だった。
書物のイラストを見る限り、どうやらライオンの形を模した魔獣みたいだ。
全身は緑色の鱗で覆われていて、8本足で移動する。
渦巻くようにトゲが連なった尻尾は凶悪で、これを叩きつけて攻撃を仕掛けてくるらしい。
続けてステータスに目を落とす。
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[ビーストクルーザー]
LP21
HP750/750
MP30/30
攻40
防70
魔攻100
魔防65
素早さ70
幸運60
属性魔法:《サイレントカッター》
状態:
風魔法・2回発動
風魔法・与ダメージ2倍
風魔法・被ダメージ半減
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「……は？ 風魔法を2度撃ちしてくるの！？」
なかなかエグい能力だ。
しかも、マザーヴァファロー同様に、与ダメージ2倍・被ダメージ半減まで付いている。
待って……【プロケッラ風穴】の攻略難易度は高くないって話じゃなかったっけ？
不安になって、そのままボス魔獣のステータスも確認してしまう。
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[メガリスグリフォン]
LP200
HP3,100/3,100
MP100/100
攻150
防160
魔攻130
魔防180
素早さ140
幸運300
攻撃系スキル:<体術>-《秘技・天翔蹴り》
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「……はぁ、なんだ。このくらいの強さならなんとかなりそう」
メガリスグリフォンはHPが高いだけで、あとは自分のステータスとそこまで大きくかけ離れていない。
特殊能力も持っていないみたいだし、ということは、問題はこのボス魔獣に辿り着けるかってことかな。
「与ダメージ2倍の風魔法を毎回2度撃ちは、なかなかしんどそうだなぁ」
こうなると、風魔法のダメージを軽減する必要も出てくる。
たしか【補助系スキル】の中に、魔法ダメージを軽減するスキルがあった気がする。
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◆火のカーテン/消費LP20
内容:1バトルの火魔法ダメージを軽減させる
消費MP3
◆雷のカーテン/消費LP20
内容:1バトルの雷魔法ダメージを軽減させる
消費MP3
◆風のカーテン/消費LP20
内容:1バトルの風魔法ダメージを軽減させる
消費MP3
◆水のカーテン/消費LP20
内容:1バトルの水魔法ダメージを軽減させる
消費MP3
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水晶ディスプレイをスクロールして、目的のスキル一覧を表示してみる。
「これかな？ 《風のカーテン》。1バトルの風魔法ダメージを軽減させる、か。消費LPも20だし、これも覚えちゃおうか」
続けて《風のカーテン》も習得してしまうと、残りのLPを4ずつ攻撃力、防御力、魔法攻撃力、魔法防御力、素早さに振り分けていく。
そして、<バフトリガー>を一度OFFにすると、武器と防具を外して自分のステータスを丸裸にしてみることに。
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[ナード]
LP11
HP50/50
MP30/30
攻10
防10
魔攻10
魔防10
素早さ10
幸運10
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「これで、ようやくみんなと同じくらいのステータスになったんだ」
成人の儀式で喉から手が出るほど欲しかったものを、ついに手にすることができた。
スタートラインに立てたっていう実感が徐々に湧いてくる。
(この前は、僕の逆転劇はそこから始まるんだなんて思ったけど……)
本当にその通りかもしれない。
今はまだ、E級ダンジョンをクリアしたっていう実績しかないけど、必ずC級ダンジョンもクリアしてみせるぞ！
そんな風に気持ちを新たにして、【プロケッラ風穴】へ向けて出発した。
